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タカラより1967年に発売されて以来、女の子用玩具として親しまれ続けている「リカちゃん」。今でも多くのコレクターでひしめき、オークション等では過去に発売されたグッズ類が、かなりの高値でお取引。美品だと20万円以上の値が付けられるものも存在する模様。いやはや、リカちゃん人気は不動のようでゴザイマスね。時代によって、その姿形は変え続けてきたリカちゃんではあるけれど、マニアさんの間で絶大なる人気を誇るモデル…というものもチラホラ存在するらしい。

発売当時の商品名は「ピチピチリカちゃん」。まず、おクビ部分にひと工夫があり、最初から少しかしげたように作られている。そして、海や山がモチーフであることから、通常リカちゃんよりもアウトドアの行動派として、より健康的な面がまえ。中でも、海シリーズのソレは通常リカちゃんとの比較で、その肌の色が更に褐色。本体と共に発売された周辺小道具も、それらアウトドアを意識した優れものばかりという。しかも、ハワイにゃ「リーナちゃん」なる、これまた更に浅黒いお肌のお友だちも存在し、こちらも商品として販売されていた模様。ふむ…当時の日本人における海外やリゾートなどへの憧れを考えれば、これら商品は少女の憧れを煽りまくったに違いない。通称なのか定かではないのだけれど、○ロンボリカちゃんとも呼ばれている様子。このネーミング…今の時代に堂々表記してよいものなのか定かではないため、伏字にしておくことにする。なにせ、ワタクシメ世代がコドモ時代に親しんだ物語「チビ○ロサンボ」ですらも、今では問題ありとか?なにやら「びんかん…してます」になっている様子なもので。

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小麦色の肌がマブシイ!コチラは更にお黒いワイハのム・ス・メ

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瞬間を大切にする行動派?ソレに伴う小道具もズラリのラインナップ。

さて、褐色の肌と言えば…そそっ!"夏っ娘ミッキー"と呼ばれたアイドルさんもおりましたネ。ってことで今回はココにコジつけ、いつものようにアイドル歌謡をレビュってみたいと思うのでありまする。

表題の「人魚の夏」は、小林美樹嬢のデビュー曲として、1974年7月25日にキャニオンレコードから発売された楽曲。こちらは"ミキちゃん”であり"リカちゃん"ではゴザイマセン、念のため。そう言えば、2代目リカちゃんには、ミキ&マキという双子の妹(赤ン坊)がいたような気もするけんど。笑)

さて、小林美樹嬢が芸能界入りの切符を掴んだのは、NTV系列で放映され人気を博していたオーディションョ番組「スター誕生」。ココの第9回決戦大会がキモとなり、トントン拍子にデビューと相成った。クロと言えば、同じ番組のご出身で、インディアンルックをウリにした黒木真由美嬢を思い起こすかもしれない。が、本レビュー主役の小林美樹嬢はソレよりも早く…褐色の肌を武器に「夏っ娘」として売り出されたアイドルだったのである。まぁ、近頃では猫も杓子も美白美白と、その白さを競う時代になっとるようでゴザイマスが。当時のトレンドは日焼けしたお肌...このムーブメントにのっかり歌手デビューということで、その狙い自体は定かなモノだったハズ。

それでは、まず本曲の作家陣営をカクニンしときまショ。

作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一 編曲:小谷充

阿久氏は、当該番組オーディションにて出会った小林美樹嬢をたいそうお気に召されていたらしい。彼の著書によれば、小林美樹嬢が「スタ誕」オーディションにご登場と相成る直前、自身企画による「日本一周ろまんの旅」というクルーズ旅行を決行。その最たる目的はと言えば、将来の女性シンガーにおける金の卵の育成であり、関係者以外の乗客はすべて女性だったといふ。さぞかしハーレム、いえいえ、新たな才能のご発掘にご尽力されたに違いありませぬ。

そして、そのクルーズによる浮かれモードのままご帰港されるや否やの遭遇となったのが、オーディションに颯爽と登場した小林美樹嬢だったというワケ。海、海、海というムードが抜けきらぬ中、ソレを体現したような褐色の少女が現れたの。コレが阿久氏の感情を掻き立てないはずもなく...。後日談として、なんとなくそんなムードに酔いながら推してしまった...とのお省みも少々。そんなんだから「オレに書かせろよ!」と相成ったのかどうかは定かではないのだが、おそらくはそういう流れで作詞をご担当することに?ならばとタッグを組んだのが、阿久氏がある意味、異質な部分で羨望の眼差しを向けていたという都倉俊一氏。同コンビは、すでに山本リンダ嬢における一連ヒットにて大きな実績を残していたこともあり、いわば、手の内を知った二人。このような流れになるのは、ごくごく自然なモノだったはず。一方で、編曲を担当した小谷充氏は、ジャズピアニストとしても知られた方であり、歌謡曲やコドモ向け作品の編曲でもその腕をおふるいに。例えばTVまんが版「怪物くん」(初代)、「キューティーハーニー」のOPとED、「まんが日本昔ばなし」などなどであるが、いの一番に思い起こすのは「タンゴ!むりすんな」…かと。そそっ「あばれはっちゃく」(初代)のOPネ、例のタンゴ調。あれ…「好きよ」でゴザイマシタよ。(笑)

さて、このお三方により紡がれた小林美樹嬢のデビュー曲は、そのタイトルからも容易に想像がつくような世界観が、横長ワイドにビローンと広がる。

自転車、灯台、ぎらぎらの砂浜、裸足、麦わら帽子…歌詞で見受けられる小道具のどれをとって見ても「夏」を連想させるものがズラリ。以前にレビュー済で、この曲とはツイン扱いになるであろう、仁藤優子嬢の「おこりんぼの人魚」。コチラに関しては、海外のキラキラビーチを思わせるような描写が特徴でゴザイマシタよね。一方で「人魚の夏」はと言えば、日本の由々しき海岸?ハデさではヒケをとるものの…のどかで素朴、そして懐かしさにキュンとさせられるような佇まい。

独特の風景を織りなす海岸線、漁村、テトラポット、潮の香り、黒砂のビーチ、干物のにほいなどなど...これらは日本で幼少期を過ごした者であれば、夏休みのひとコマとして脳裏に鮮烈なものばかりかと。それら情景を「絵日記」に綴ったワ~なる率は、かなりお高いのではないかとも思われる。

♪自転車を走らせて 灯台をまわり
 ぎらぎらの砂浜を 私は駆けて行く
 麦わら帽子を投げ捨てて
 真白なドレス脱ぎ捨てて
 私は人魚に変わって行く 真夏の人魚に変わって行く

よく陽に灼けた、元気いっぱいの少女が、自転車こぎこぎ砂浜までやってくる図…イントロからもソレが伝わってくるデショショ。息切らし駆けてくるよな情景があざやかに広がるアレンジが乙でアリマシテ。しかし、女声コーラスのラララン…コレは個人的にはあまり「好きよ」ではない。なれど、ソレがいやがおうにもルンルン気分を引き立てていることには一切合切の間違いはないけれど。基本的には"さわやか男声ワーウーコーラス”が「好きよ」派であることだけは言及しておくことにいたしますワ。笑)

♪誰かに見られたら 突然 見られたら
 
やはり70年代の曲はシンプル・イズ・ベスト…まさにコレ。一度耳にしたら、すぐさま口ずさめるほどの短さ。しかし、ひとつ言えることは、楽曲の良し悪しはその長短で決まるものではないということ。大作=名曲とは決してならず、短く小ぶりな作品であっても、聴き手の心を揺さぶる力は持つのでゴザイマス。誰ですか...「おっ、じゃあ俺のでも安心だな」とか胸を撫でおろしてらっしゃるお方は。ソチラ方面の"長い短い"における揺さぶり力に関しましては

🎵どうしたらいいのでしょう どうしよう どうしよう

ワタクシメでは分かりかねますのであしからず。笑)

とにもかくにも、この短さで"夏八景"を描き出す「人魚の夏」を傑作のひとつとして推したいのネ。都倉氏による小気味よいブンチャメロディー、ソレを疾走感あふれるアレンジで味付けした小谷氏。アイドル歌手のデビュー曲としては親しみやすく、合格点以上に達しているのではないかと。しかし、流し聴きしてしまうとナニを言いたいのかよく掴めず、その小気味よさに乗せられ、瞬く間に演奏終了という。いわば、ヘタすると薄味になりやすい危険性もはらんでいるような感じもする。現にワタクシメがこの曲をはじめて聴いた時は、まさにその罠にハマってしまったもの。だから、この曲を「好きよ」になるまでは、しばらくの時間を必要としたのでありました。

でもって、本曲で言わんとすることはナニかしら?

人魚=艶めきはじめる少女

コレなのではないかと。少女からオンナへ...ときめいて、なまめいて。恥じらいや、とまどいを感じながらも「大胆素敵」に変わってゆく。オンナとして熟れはじめた少女の夏を、人魚という艶めかしい小道具を用い比喩してみせた。こんなんでどうかしらん?♪これで決まりさ~これが最高!と、ジコマンで締めくくりの「ゴメンね 勝手に決めちゃって」。笑)

この曲はオリコン最高69位、1.4万枚を売り上げ...う~ん、まずまずか。70年代は新人アイドルが100位に入るのは難しい時代だったことを考えれば、滑り出しとしては合格だったはず。この調子で、続く第二弾以降も大いに期待されたのだが...なにかこう彼女の良さを活かしきれない作品ばかりが続いてしまう。作家陣が彼女に対し「夏」のイメージをあまりに求めすぎたのか、はたまた歌い手側にハジけるためのなにかが足らなかったのか。憶測はさまざまになるけれど、このような状況下にいた小林美樹嬢は早々の引退をキメこんでしまう。

■小林美樹|シングルコレクション
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2nd 「悲しい妖精」3rd 「乙女の館」4th 「太陽の誘惑」

このそそくさ引退に「寝耳に水」となったのが「スタ誕」陣営。なんでも、同期デビューの伊藤咲子、石江理世と"新三人娘"構想を練っていた最中だったらしく。このお三方...たしかに並びは良いものの、ご本家スリーと比較してしまうと、インパクトが不足していたような気も...。

しかし、小林美樹嬢はコレにうしろ髪ひかれることなく?の退きを決めた。その後は勉学に励まれ、地方局のアナウンサーとして入社。そこで数年勤労後にはフリーへ転向という努力家さんでもある。一時はNHKのお堅い経済番組でアシスタントを務めた経歴もあり、「あざやかな場面」を見せつけたりで。これはまさに

🎵どうしたらいいのでしょう どうしよう どうしよう

人魚はどしたらいいの?雫になったのかしら、あぶくになったのかしら?いえいえ...鳴かず飛ばずだったアイドルとしての活動に見切りをつけ、ご努力と邁進を続けた結果がもたらした"人魚の春"。コレに違いないと感じる、2016初夏なのでありまする。

☆作品データ
作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一 編曲:小谷充(1974年度作品・キャニオンレコード)