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開催前から色々と物議を醸していたソチ冬季オリンピック。開会式を華々しく開催したのも束の間…あっという間にその幕を降ろす時がやって来てしまいましたネ。冬季オリンピックにはさまざまな人気競技があるものの、その中でも大会の華と呼ばれている種目が、女子フィギュアスケーティングでゴザイマスよね。

今回は大会前から浅田真央選手とキムヨナ選手の一騎打ち!とマスコミが焚きつけまくっておりましたが、フタを空けてみたら意外な展開に。我がニッポン代表におけるフィギュア女王、真央選手はメダルにはあいにく手が届かずという結果に。でもいいの…本大会でのアナタは、がけっぷちに追い込まれながらも勇姿を見せた美しきチャレンジャー。嗚呼!まさしくフィギュアスケート界の天使だと確信した瞬間でゴザイマシタ!世界の人々を感動の渦に巻き込み、どの色のメダルにも負けない輝きを放つ、アナタのためだけに用意された特別なソレを神から授けられたのだから。と、美しく記述ってはみたものの…ショートプログラムでの真央選手は悪夢以外のナニモノでもなかったワ。元オリンピック選手の橋本聖子氏発言「オリンピックには魔物がいるんです」が脳内でこだましつづけ、それこそ一体なんのミステリー劇場を見せられているのかと…体が震えまくった一夜でゴザイマシタからん^^;。

それはそうと、ミステリー劇場と言って思い起こしてみれば…70-80年代アイドルポップスの中にだって、そのテの曲?と思われるものがゴザイマシタよね。ってなワケで今回はここにコジつけさせていただき、あの方が放ったこの奇怪な曲をレビュってみたいと思うのでありまする。

表題の「ミステリアス チャイルド」は荒木由美子さんのシングル第7弾として、1979年3月21日に発売された楽曲。

荒木由美子嬢と言えば、ホリプロダクションが自社で開催したオーディション「ホリプロタレントスカウトキャラバン」第1回大会において、審査員特別賞を受賞して芸能界デビューと相成った方。この時の優勝者は榊原郁恵さんだったことは今さら言及するまでもないほど知られていることだが、当時の裏話として優勝の座は荒木由美子さんにほぼ決定していた!なんてのあったりで。ホリプロとしても、社のドル箱スターだった山口百恵さんの後を継いでくれるような逸材が欲しい!と思うのは自然の成り行きであるからして…ソレと似て翳りのあるオトナっぽい雰囲気を醸し出す由美子嬢に白羽の矢を立てるのは頷けるトコロでもありまして。まぁ、結果的にはソレをくつがえす力により、当初の予定とは異なる形での結果と相成ったようでゴザイマスがね。

さて、優勝候補と目されていた由美子嬢をホリプロがあっさりと手放すはずもなく…彼女が歌手デビューと相成ったのが1977年6月、郁恵さんの船出から数えて5ヵ月後のことである。大方の予想どおり?デビュー曲は阿木燿子&宇崎竜童というあのコンビが手がけた曲(「渚でクロス」)となり、オリコン最高56位、4.4万枚を売り上げる幸先の良いスタートを切ったもの。その後もチュチュハッハ歌謡ブルースを純白ウェディングドレスで歌唱してみたり、無理やり抱かれた夢を見たというのにまんざらでもないご様子のお歌を唄ってみたり…モモエさん路線を匂わせつつも、ソレとはどこか違うゾ的な趣を湛える桃色歌謡風の作品が続いた由美子嬢。しかしながら、それらなまめかしすぎる路線がかえって聴き手側に敬遠されて?アイドル歌手としてはジリ貧気味もいいトコロ。テレビドラマ「燃えろ!アタック」の小鹿ジュン役としてのご活躍はありましたけれども。そんな彼女の作品においてしばらくぶりのチャートインを果たすことができたのが、表題曲の「ミステリアス チャイルド」だったのである。なんとコレはデビュー曲でのチャートイン以来、1年9ヶ月ぶりの珍事(←失礼)だったのである。

その迷走期間においては、由美子陣営もかなりの試行錯誤?作家をとっかえひっかえしてみたものの、やはり成果があらわれない状態が延々と続いた。このため“初心忘れるべがらず”を実行してみたのか?はたまた困ったときの神頼みだったのかよく分からないのだが、作家を阿木&宇崎コンビに戻して再挑戦!ってか「またですか~」的かなりしつこいってな感じも無きにしも非ずだったりで…色々と手をだしてはみたものの、やはりこの二人に頼るしか!という、最後の砦的?藁にもすがる思いの?結論に至ったのカモ?なんて邪推してみたり。その辺りのいきさつに関しては、当時の関係者にお会いし、ぜひともインタブー決行と相成らせていただけたらシアワセこの上ないのだけんど。(笑)

そういう断末魔の中で生まれた楽曲?なんだもの…内容だって狂気の沙汰なのヨ。(笑)

♪子供が見てたの 子供が見てたの

オドロオドロしいイントロはまさに「ミステリー劇場」を彷彿とさせるもの。そして間髪入れずにカマされるこの歌詞は一体…早くも「ふぎゃ~っ!」。目をひんむきながら悲鳴を上げるべき?なにやら気味の悪い展開になりそうな悪寒がジンワリと。

物語の舞台は夜の公園。月明かりが照らす薄暗いその場所にいるのはとあるオトコとオンナ。あら?カップルがスリルを求めてあの行為をしにノコノコやってきたというワケ?いえいえ、違いますのヨ。そのオトコを欲しくてたまらないオンナ…そのお方が一世一代の大バクチをしにきているの。

♪これが最後の賭けのつもりで
 夜の公園にあなたを誘うの
 ナイフのような月が怖いと
 泣きじゃくりながら抱いてと迫るの

色じかけにおナミダ作戦…おそらくはこの主人公さまが持ち合わせる技量で実行可能とおぼしき、ありとあらゆる方法を繰り出し中といったトコロか。

♪アー 唇がすぐそこに
 アー そっと目を閉じかける

A guy is a guy…オトコというものは所詮この程度のモノなのか?我ながら情けないったらありゃしない。でもなんだか「好きよ」…ゾクゾクするこういう展開。やはり本能にはどうやっても逆らえないというものなのかしらね、ナゾ。 (笑)

♪誰もいないはずなのに 誰かが見ている
 誰もいないはずなのに 私を見ている
 ミステリアス チャイルド チャイルド
 ミステリアス チャイルド チャイルド チャイルド

♪子供が見てたの 子供が見てたの
 揺れてるブランコで

この女性の愚行?○態?なんだかよく分からないけれど、とにかく不可思議な子供がその一部始終を凝視している…という図のようである。山川静夫アナではないけれど「キモチの悪い歌ですね~」と感想をもらしたくなるというものか。

チャイルドという言葉は本来、無邪気で可愛いらしいものなどを想像させるソレのはずなのだが、これほどまでに薄気味悪く響き渡るというのは、やはりこのようなストーリー展開のせいなのか。作詞をされた阿木センセイ…モモエさんで試せなかったことを由美子嬢でやってのけてしまった…という、なにか清々しいくらいの満足感が歌詞からビンビン伝わってくる!と感じるのはワタクシメだけ?山口百恵という縛りがなかった分、阿木センセイもやりたい放題し放題ができたのかもしれないが。まぁ、ちょいとやりすぎてしもうた感が漂うのは否めないところでもあるけんど。(笑)

日本のアイドルポップス史上において、その薄気味悪さではナンバーワン?それこそオカルト歌謡とでも名付けるのが相応しいであろうこの楽曲において、主人公の女性になりきり大奮闘しまくる由美子嬢もこれまた賞賛に値するというものか。1979年当時のワタクシメはまだまだウブウブな少年だったこともあり、由美子嬢がなぜにこうもなまめかしい風情を湛えた楽曲ばかりを宛がわれていたのかサッパリコンコンだったもの。が、しかしオトナになった今こうしてふりかえってみれば...ふむ合点。なぜならこの方…えもいわれぬ色香をプンプン、しかも昼ではなく夜がお似合いの風貌なのね、絶対的に。あくまでも当時の見た目だけの印象になるけれど。

当時、由美子嬢を囲んでいた陣営、おそらくはオトナの男性がほとんどだったはず…そうした事情から察しても、このような路線の楽曲を由美子嬢に歌わせたい!とついつい考えてしまうであろう男性心理がビンビン働いていたのではないかと考えてみたりもする。見た目だけでそのように判断されていた由美子嬢は迷惑この上ない?といったトコロだったのかもしれないが。実際の由美子嬢は人間味あふれて涙もろい…とても温かみのある女性のようでゴザイマスものネ。アイドル時代の彼女はと言えば…○○ペットアイドルNo.1などという称号も授かっていたらしく?だけどそんなものはオトコ側の勝手な妄想が作り出したモノにすぎなかったはず。○○ペットだなんて…当時はその言葉自体がナニを意味しているのか、全くもって分からんちんなワタクシメでゴザイマシタけれどもネ。(笑)

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コドモがミテタノ~コドモがミテタノハチノジマユが特徴の由美子嬢シルバー衣装もイカしてるぅ

それにしても主人公の女性…一体ナニをそんなに怯えておられるの?オトコを落とそうとあのテこのテで迫りまくる姿を他人に見られたくない一心で…えっ?そんな程度のことなぞ気に留めもしない肝っ玉にも思えるけれど?いえいえ、違いますのヨ。この方がここまでビクつかなければならない理由があるの。それはね…

♪あなた愛しちゃいけない 友達の彼

あ~キてしもうたワ…やっぱりこういう展開だったのか。あの頃のニッポン歌謡曲の世界では、このテの奪い合いをモチーフにした楽曲がたっくさん存在した、それこそお家芸のようにネ。アナタに彼女を会わせたことを後悔しまくるアレや、気のないそぶりで仲間に加わり虎視眈々になるアレ、友達の彼と知っていて誘われたシネマに頷いたというアレ、三人模様の絶体絶命も…なにもかもがバラ色に見えるわ~奪った直後はネ、多分。だけどやっぱりドドメ色のドロドロ顛末がテマネキしてる感じがして…ワタクシメ的にはシックリこない行為なのヨ。(笑)だけれどもヒトそれぞれ色々なワケで…時にソレは倫理を超えた関係を作り上げてしまうものでゴザイマスよね。

なにはともあれ…この曲は個人的趣向でモノを言わせていただくと、まさに怪作?快作?いえ、感動という類のものではない、なにかまた別モノのような気もするのだけど。このようなオカルト歌謡が生まれたこと自体に感動を覚えるというかなんというか…ちあきなおみさんの「夜へ急ぐ人」もそうだけど、やはりニッポン歌謡曲はあなどれない。いささかトウが立ち始めたアイドル歌手用の曲だったとはいえ、略奪愛と罪悪感を唄わせてしまうという阿木センセイの奇天烈なセンス!宇崎氏によるスリルとサスペンスに満ちたメロ!萩田光雄氏によるオドロオドロな編曲も心臓を揺さぶる!ソレに応えた由美子嬢の歌声も気合が入りまくる!それこそ怪しげにひっそりと咲く一輪の毒花みたい。一度その毒性に侵されるとそれナシではいられなくなる…こういう患者が多少はいたのか、はたまたB面目当て(注:B面は「燃えろ!アタック」関連曲)だったのか、なにはともあれ久しぶりのチャートイン(オリコン最高90位、0.7万枚)になったのである。

この結果に気を良くした陣営は次作(「グッド・バイ・ジゴロ」)で更に調子に乗ることになるのだが。ヒモ男、黒猫、酒、髪が伸びる人形…いつかアイツをヤッてやる!ナイフの切れ味ためしながらニッコリ笑う女性が登場するんだからコワイったらありゃしない。それこそ表題曲と一緒に連作として聴いてみることをお奨めしたいトコロ、人生の教科書として。あそこまでして奪ったオトコはロクでなしのヒモだった…やはりヒトのものを奪うとバチがあたるのネ。(笑)

♪子供が見てたの 子供が見てたの 私がうばうのを

ところで夜の公園に子供なんて本当にいたの?ヒトが悪行を働こうとする時、誰かに見られているのではないかと怯えてしまう心理…事の大小はともかく、誰にでも一度くらいは身に覚えがあるはず。あれこそがまさに良心の証と言われるモノらしい。生まれついてのワルでない限り、誰もが持っているという良心。その汚れなき良心が作り出すまぼろし…それこそが“ミステリアス チャイルド”。アナタをじっと見ている目…ソレに他ならないのではないかと思うのでありまする。

☆作品データ
作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 (1979年度作品・キャニオンレコード)