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神田広美さんと言えば…

デビュー曲「人見知り」のぷちヒット
作詞家として荻野目洋子さんに「未来航海」などを提供
吉田拓郎氏が作曲した「ドンファン」での大胆イメチェン

などなど…この辺りが記憶として蘇ってくるお事柄?といったところだろうか。実はこの度、ポニーキャニオンより彼女のオリジナルアルバム『待ち呆け』+シングル曲を網羅したCDの復刻が決定。元々の所属レコード会社、ポリドールからはこういった類のものの発売はあまり期待できなかったため、今回のポニキャニさん経由による発売は賞賛に値する…といったトコロでアリマシテ。それこそ長年"待ち呆け"を喰らっていた彼女のファン様方にとっては、朗報以外の何ものでもないはず。

さて、今回はそんなアルバム復刻を記念して、神田広美さんの隠れた傑作をちょこっと軽めに…サクっとレビュってみたいと思うのでありまする。

表題の『哀しみ予報』は彼女のシングル第2弾として、1977年5月に発売された楽曲。当時はテレビの歌番組等などではそこそこお披露目されていたものの、一般的にはあまり知られていない曲であると思われ。

本作で作詞を手がけたのは、太陽の女王作品でおなじみの松本隆氏。作曲と編曲の両方を担当したのは、キャンディーズの一連ヒットで知られる穂口雄右氏。当時、すでに20歳になられていた広美さんにとってはお誂え向きの?オトナの芳香があふれる歌詞、そして、どこかオシャレな洋楽風味を漂わせるメロディー。しかし、そんな中にも恋に破れた際の、女の子らしいセンチメンタリズムも垣間見れるという。おそらくは、彼女が発売した全シングル曲の中では、もっともアイドルポップス寄りの作品なのではないかと感じさせる楽曲になっている。かといって、バリバリ&キャピキャピの…という風情ではないのであしからず。

この曲のテーマは…

愛の終わり

ズバリ言わせて頂くと…

愛を失ったオンナのか・な・し・み

を描いているのである。

それでは、いつものように歌詞を追ってみることにする。

♪哀しい事があった日は 髪を洗うといいんです
 貴方と燃えたひとときも 洗い流して泣けるから

うん…たしかに"水に流して"という言葉もあるくらいだし…うんとこさっと背負ってしまったツライ出来事や哀しみはキレイさっぱりと"さよなら"できそうな行為かと。

♪紫陽花の午後 薄曇り
 貴方はさよなら口にした

おそらくは、走り梅雨あたりの頃合い?梅雨が本格的になる前の…曇り空が延々と続くような候。梅雨前線が日本列島の横っちょにやや離れて停滞中…といった様相の頃を描いたものか。しかし、遂にキてしまいましたか!彼の口から出てきたのモノというのは、異物(!?)でも何でもなく…

さよなら

の一言だったようでゴザイマス。

♪涙で綴る 私小説の様に
 貴方と二人 生きてきたけど
 最後のページめくるように

貴方と燃えた…という、そのひとときの物語を私小説に例え、涙でソレを綴らせてしまうという…これまた70年代的な美しい仕上がりっぷり。それこそ、歌謡曲黄金時代を偲ばせる、ポエム的な出来栄えがウリと言える。昨今のお歌には、このような"品の良さ"や"文学的な香り"ってのが欠けておりませんこと?何度聴いたところで、そのような匂いは全く感じられないのだけんど。などと、こんなトコでホザいてみても後の祭りのような様相を呈しておりますけどね。笑)

さてさて、気になるのは主人公様の愛のゆくえとやらはいかに?

♪あっけなく あっけなく愛は終わったわ

It's over…アッサリコンコンとして終焉を迎えてしまったようで。

"あっけなく"を連発しているくらいだから、ソレはよっぽどの"あっさり塩味"で終わりを迎えてしまったものだったのかと思われ。それこそ、主人公様が拍子抜けするくらいにネ。こんなんでは、哀しみにうちひしがれて号泣するヒマもないったらありゃしない…といったトコロ?(←泣いたみたいよ、一応。歌詞でそういう設定になっとるし)

ということで、この曲のチャート動向を確認。おっとっと...実はこの曲、100位以内へのランクインは逃しておりまする。デビュー曲『人見知り』はセールス的にはすこぶる好調(オリコン最高43位、5.0万枚)だったからして、この曲もあわよくば…との下馬評はあったはず。しかし、そう簡単には問屋が卸さなかったようで残念しこたまである。広美さんはこの後にも『ジャスミン・アフタヌーン』や『薔薇詩集』などのキレイ系ポップスを連発して気を吐くも、セールス的にはデビュー曲を超えるモノを出せずといったキビシィ結果に。ちなみに、どれもが極上の歌謡曲だったこと。これは声高に叫ばせていただくことにする。

このようなジリ貧の状況下で飛び出してきたのが、例の『ドンファン』という曲。吉田拓郎氏を作曲家として迎えた意欲作。この作品では、それまでの清楚な広美像はどこへやら。ステージ上で帽子を目深に被り、腕組みして仁王立ちの彼女を目の当たりにした時にゃビックリコンコン。まさにアレは、清純派(←カンペキに死語でしょうか、コレ)からの

あっけない

ドロップアウト劇だったのかしらん、ナゾ。広美さん自身は、アイドルとも清純派とも呼ばれることには抵抗アリアリだったようでございますけれども。ちなみに、その『ドンファン』が、神田広美名義でのラストシングルと相成ってしまったのでありましたとさ、泣っ。

☆作品データ
作詞:松本隆 作・編曲:穂口雄右(1977年度作品 ポリドール・レコード)