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70年代から80年代にかけてのアイドルポップスや歌謡曲(NMも含む)には人名をタイトルに宛がった曲がたくさん存在した。例えば…

夏色のナンシー 早見優
アキラが可哀相 和久井映見
リサの妖精伝説 立花理佐
RISAの片想い 伊藤美紀
I Love あのコ・夏のMaki 江戸真樹
SACHIKO ばんばひろふみ
サチコ ニック・ニューサー
いとしのエリー サザンオールスターズ
ジョニーへの伝言 ペドロ&カプリシャス
ジョーのダイヤモンド 朱里エイコ
ジュリーがライバル 石野真子
ジュリアに傷心 チェッカーズ
ジュリアン プリンセスプリンセス
KUMIKO 浦上幹子
ミスター・タロー 川口裕子
ごめんねジロー 奥村チヨ
今さらジロー 小柳ルミ子
KOIKO 長山洋子
ボビーに片想い 手塚さとみ
ト・シ・ヒ・コ ベッシー
NANA チェッカーズ
キャサリン 松任谷由実
Hiromi-危険な予感- 仙道敦子
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ ダウンタウン・ブギウギバンド
ダニエル・モナムール 辺見マリ
エイミーの卒業 須藤薫
泣かないでフランシス 杉真理
亜紀子 小林繁
ウラトビサスケ‘78 山川ユキ(←これは微妙か…)  

☆その他、ご訪問者の方からの追加分

モニカ 吉川晃司
順子 長渕剛
ジェームス・ディーンのように Johnny
アル・パシーノ+アランドロン<あなた 榊原郁恵
マリリン 吉川晃司
雨音はショパンの調べ 小林麻美
五番街のマリーへ ペドロ&カプリシャス
フランシーヌの場合 新谷のり子
(以上、KOSUKEさんより)
ナツオの恋人ナツコ 岡本舞子
(以上、こうそくひれん3号さんより)
そんなヒロシに騙されて 高田みづえ
(以上、モーリーさんより)
ジェニーはご機嫌ななめ ジューシー・フルーツ
ゆうこ 村下孝蔵
アキナ 村下孝蔵
Sueはおちゃめなパン屋さん 安田成美
さよなら夏のリセ 南野陽子
CHIEMI SQUALL 堀ちえみ
私は里歌ちゃん ニャンギラス
(以上、nakaさんより)

☆自分自身の追加分

ジェームス・ディーンみたいな女の子 大沢逸美
マイ・マリン・マリリン 山本達彦
1986年のマリリン 本田美奈子
OK!マリアンヌ ビートたけし
セシル クリスタルキング
セシル、君に 東寿明
セシルの週末 松任谷由実/真璃子
ダスティホフマンになれなかったよ 大塚博堂
セシル 浅香唯
セシリア・Bの片想い 山瀬まみ
JESSY 河合その子

などなど…もうキリがないからやめときますワ…と筆者にサジを投げさせるほど、その数が多かったのである。(笑)まして米50年~60年代初頭の音楽シーン(←日本のアイドルポップスのルーツになったと言われている)に目を向けてみてもその数は計り知れないほどに昇る。代表的なところだとシュガシュガなアイドル歌手、マーシー・ブレインが1962年に歌って大ヒット(ビルボード最高3位)した「ボビーに首ったけ」などもそれの金字塔的作品ということになるだろう。

さて、今回紹介するのは、やはりこれのお仲間サンということになる作品であり、しかも日本人には馴染み深く親近感がアリアリのお名前…を宛がったモノということになる。

表題の「H-i-r-o-s-h-i」は1984年3月21日、渡辺桂子さんのデビュー曲として発売された楽曲だ。桂子さんは前回のミッチョン同様に、テイチクレコードの所属歌手。その社の期待を大きく背負ってのデビューと相成った方でもあり、1984年デビューということからミッチョンの先輩という位置づけになる。デビューに際してのキャッチフレーズは…

お友達にしてくれませんか

どうやら‘親近感’をウリにしていたようである。しかもこのキャッチフレーズはデビュー曲のレコジャケにも刷りこまれるなど…かなりの大プッシュ体勢の元、デビューをかました桂子さんだったのである。

この曲は当時ノリまくっていた売野雅勇氏が作詞を、作曲は筒美京平氏が担当という、かなり恵まれた作家陣によるデビュー曲。‘アイドル桂子のデビュー曲よン’といった風情が全体的に漂いまくる、いかにも~な歌詞とメロ。アイドルのデビュー曲にはお誂え向きの仕上がりなのだ。何か新しいことが起こりそう~という春の‘あの’ウキウキ感もわんさかで…それはあたかも、シュ~ッという轟音を響かせ、今にもそのフタを吹かんばかりの鍋みたいな…そんな有様なのだ。(笑)

この曲のテーマは春が連れて来た初恋…恋して恋して恋しちゃってるのに、なぜかケンカばかりしてしまうおふたりさん。あらら。なんだかこれは70年代あたりの少女マンガにおいて、飽きるほどに取り上げられていたテーマではないだろうか。山本優子センセイの「美季とアップルパイ」やら坂東江利子センセイの「ラミと気まぐれ学園」あたりはこのテのモチーフがてんこもり、それらの典型的作品と言えようか。(←over30の女性じゃないとチンプンカンプンな話だろうな、おそらく)

そんな少女マンガのラブコメチックなエッセンスをたっぷり詰め込んだこのお歌は…

♪何かにつけてシャクにさわる人を~
 さみしがりやの春がつれてきたの~

という歌いだしで始まる。

♪口づけしてと胸で~囁いてるのになぜか~
 気づけば頬をなぐっていたのよ~

キライキライスキ…スキスキキライ…思春期の揺れる乙女心~ってヤツなんだろうか。それにしても♪なぐっていたのよ~だなんて…。なんともまぁ、乱暴なお嬢さんだこと。(笑)平手打ち~くらいならまだご愛嬌…といったところだが‘殴る’となるとかなりの凶暴加減が目に浮かんだりもする。コブシを固く握りしめ、上目使いのファイティングポーズなどをキメこみながら、渾身の力をこめたパンチ攻撃くらいカマしたんだろうか。(笑)

♪だけど H-i-r-o-s-h-i 
 Um H-i-r-o-s-h-i すきよ~
 H-i-r-o-s-h-i Um H-i-r-o-s-h-i きらい~

あらら。ここに至る前に分析したことがそのまんまご登場と相成っちゃっいましたとサ。どうやらこれでこの楽曲が少女マンガにおけるラブコメの伝統を脈々と受け継いだ作品であることは間違いなさそうだ。おたふくソースの代わり…と言っちゃなんだけど‘ラブコメソース’とやらをたんまりとかけまくった、コッテコテのお好み焼き~みたいなシロモノに値するのだろうか。(笑)なんだかんだ言っても、アイドルのデビュー曲としては極上の仕上がり加減には間違いない。

この曲はオリコン最高25位、6万枚を記録してスマッシュヒットを放った。この結果により「84年の最優秀新人賞はアタシが頂くわよン」といったノロシを高らかに掲げたかに思えた。彼女はこのデビュー前にも「第7回ホリプロタレントスカウトキャラバン」(勝手に略して→)‘スカキャラ’にも出場、大沢‘ジェームスディーン’逸美姐さんと最後の最後まで優勝のイスを争ったという、なかなかのツワモノ。ご承知のとおり、その大会では涙を呑んだものの、そんなダイヤの原石を業界が野放しにしておくハズもなく、ゴールデンミュージック(当時、柏原芳恵サンを大黒柱に稼ぎまくっていたトコロ)とテイチクレコードが彼女に名乗り上げ。桂子さんは満を持しての歌手デビューと相成ったのである。82年の北原佐和子さん、83年の逸美姐さん…と‘イマひとつブレイクしきれない症候群’を製造し続けてしまったテイチク。社にとったら…

渡辺桂子さんに3000点!

じゃないけれど、3度目の正直ともなる‘お祈り状態’だったに違いない。そんな状況下、デビュー曲がヒットしてウホホ状態だったのも束の間。他社から輩出された同期アイドル達だってバコンバコンのご活躍…吉川晃司さん、倉沢淳美さん、荻野目洋子さん、長山洋子さん…そして80年代アイドルの女王‘聖子さん’率いるサンミュージックはユッコこと、岡田有希子さんなる超強力爆弾をケしかけきたのである。

このように春先~初夏にかけては新人賞を狙いウチできる絶好調な位置をキープ、一時はユッコのライバルとして君臨…なんて時もあった桂子さんだったのだが…。シングル第2弾として発売した「赤道直下型の誘惑」が思わぬ不振(オリコン最高32位、3.2万枚)を招き徐々に後退。この曲もデビュー曲と同作家陣による作品であり、真夏の妖しさ…が表現できた曲(←個人的にはお気に入りなのだが…)でもあるのだが、いかんせん‘明菜’を意識しすぎてしまったのが敗因か。本来的にはこの第2弾でグイーンと伸びて新人賞をほぼ手中に収めたいところだったのだろうが。秋以降は新人賞レースの勝負曲「㐧Ⅱ少女期」を引っ提げ‘そこそこ’までのご活躍には至ったものの…最終的にはその頂点に立つことなく散っていったのである。2年目以降の彼女は、例のあのドラマ(TBS系列「乳姉妹」)でのご活躍で記憶に留めている方も多いことだろう。

スカキャラへの出場でデビュー前から人気も高かった桂子さん。ぽってりとしたハート型のくちびる、そしてアイドル然とした愛嬌のあるキュートなお顔立ち…僅か2年足らずの幕切れ…にしてしまうには、なんとも勿体無い逸材だったように思える。82年から3年続き…またしても例の‘症候群’を製造してしまったテイチクだったのである。今となってはデビュー曲の記念特典だった‘まっ赤なレコード盤’がやけにもの悲しくも見えるか…。(涙)

☆作品データ
作詞:売野雅勇 作曲:筒美京平(1984年度作品・テイチクレコード)