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ナンノと言えば、このブログでも人気の高いアイドルのひとりでもあり、80年代後半を代表する、いわゆる、アイドル四天王の一角を担った方でもある。そしてナンノと言って忘れてならいのは、はいからさん…?(←これはもう前回のレビューで出したじゃん…)じゃなくて…。(笑)今、日本が真っ只中にある‘秋’ではないだろうか。なぜならアイドル時代の彼女は長い黒髪に、いいとこのお嬢様チックな風貌。それはなんだか‘リセエンヌ’なんて言葉がちょっと似合っちゃうような、そんな雰囲気だったりもした。歌っていた楽曲に関しても100%キャピキャピのアイドルソング…というよりも、ちょいとしっとりめの曲調が良く似合う…そんな印象を持ち合わせていた人だったように思う。今回はそんなナンノが繰り出したしっと~りアキウタから、この曲にスポットをあててみることにした。

表題の「秋のIndication」は1987年9月23日、ナンノのシングル第9弾として発売。それと同時にグリコ「セシルチョコレート」のCMソングとしてオンエアされていた楽曲でもある。この曲は作詞を許瑛子さん、作曲を萩田光雄氏が担当。作詞を手がけられた許さんは元々、「an an」などの雑誌等で記者をされていた方。そこから大転進して中森明菜さんの「SAND BEIGE-砂漠へ」で作詞家としてデビュー、いきなりの大ヒットをかっ飛ばして数々のアイドルやアーチストに詞を提供した。シングルヒットとして有名なのは明菜さんのそれとナンノのこの曲、あとは小高恵美さん、小沢なつきさん、石田ひかりさんによるユニット、あすか組の「悲しげだね」などだろうか。

作曲を担当した萩田氏は、どちらかと言えば編曲家として名を馳せた方。山口百恵さんの「イミテーションゴールド」、あみん「待つわ」、H2Oの「想い出がいっぱい」、岡田有希子さんの「ファーストデイト」、久保田早紀さん「異邦人」、中森明菜さんの「少女A」「禁区」、三田寛子さん「駈けてきた処女(おとめ)」、岩崎宏美さん「二重奏」「悲恋白書」、ナンノの「吐息でネット」「楽園のDOOR」などなど数多くの編曲を手がけられていたのだが、作曲家としてもなかなかいい作品を残されている。有名どころはナンノのこの作品と「あなたを愛したい」、そして桜田淳子さんの「サンタモニカの風」あたりか。あとは大場久美子さんの「フルーツ詩集」や「エトセトラ」などのアイドルポップス史上にキラ星の如く燦然と輝く作品も残されていたりする。要はこの曲、作詞における新進気鋭ライターと編曲家の作曲による、レアな組み合わせの‘ミルフィーユ’状態により誕生した楽曲だったのだ!

♪木の葉が~

と…なんだかやけに淋しげに始まるこの曲。北風ぴゅうぴゅう~秋の雰囲気も冒頭からあふれんばかりなのである。イントロだって三重奏だか四重奏だかのストリングスがクラシカルな雰囲気を醸し出し、切なさ度をグンと引き上げているのだ。なんだか三輪明宏さんあたりが、ソロリソロリと舞台の袖から登場して♪枯葉よ~~と大口開いて熱唱しまくる…そんなヨーロピアンな風情が溢れていたりもする。(笑)

♪夕陽のインクで書いた~

秋と夕陽は切っても切り離せない関係にあることは、このブログで堀ちえみさんの「夕暮れ気分」をレビューした時にも書いたが、やはりこの曲においてもそれらは必須のコンビとしてご登場と相成っている。実際のところは夕陽のインクで書く…なんてことは不可能極まりないのだが、そこは80年代アイドルポップス…物事を美しく描写することに全神経が注がれていた時代の歌だ。夕陽で書こうが、涙で綴ろうが…要はなんでもありなのである。(笑)あと、ここで注目なのがこの部分のメロだろう。歌冒頭の♪木の葉が~の短調(マイナー調)をそのまんま長調(メジャー調)に置き換えて、主人公の‘前向きな明るさ’を表現しているかのような、荻田氏によるニクイ演出付きなのだ。そして…

♪心配はしないでねぇ~

と…。ナンノ独特の鼻にかかった平ぺった~いお声で♪ねぇ~とネチっこく歌うところが、この曲の最大の聴きどころ…だろうか。(笑)それにナンノったらお得意の首かしげポーズを♪ねぇ~のところで抜かりなく導入!さすがA級アイドルは自分が何をすればウケるのか、きちんと心得てらっしゃるようで…。(笑)そしてサビ部分の…

♪ルルル ホロ苦い~
  
と繋がっていくワケなのだが、実はこの曲、サビが最後の最後まで出てこない。通常は曲の冒頭部分の後にサビが来て、それを2番でもう1度繰り返し、最後にサビを歌っておしまい…といったパターンが主流なのだが、この曲に関してはサビなしの1番と2番の後にようやくサビが来る…といった風変わりな作りになっている。但し、TVでの歌唱時には、2番を省略することが多かったため、それに気付かなかった人も多かったかもしれない。そして、この曲はこのレビュー冒頭でも記述したとおり、「セシルチョコレート」のCMソングとして使われたくらいだから‘ホロ苦い’というワードは最初の作成段階で必須だったのかもしれないな。おそらくクライアント側からそれだけは絶対に歌詞に組み込んで下され…との依頼があったのかもしれない。(笑)またここはナンノの♪ルルル~♡ってハミングが聴けて、これまた可愛かったりもする。♪ルルル…と歌ったのなら、某カゼ薬のCMにも使える…という手もあったかもしれないな。(笑)

詞だけではなくてメロにも目を向けてみよう…。

この曲は‘秋’をイメージしたマイナー調…?と思わせておきながら、実はふいをついて曲半ば~サビ間でメジャーへの転調を図り…そして歌の最後部分で帳尻を合わせるかの如く、またまたマイナー調へと鞍替えさせてジ・エンドに持ち込むという、かなり手の込んだ技アリッ!のメロが特長でもある。なんだかコロコロと気分を変えては居直る、小悪魔な少女にでも翻弄されているかのような…そんな感覚に陥るとでも表現したらいいのだろうか。全体を通して聴いてみると、マイナーな曲なのかメジャーな曲なのか、なんだか分からなくなり、脳みそをグルグルとかく乱させられる気分になったりもする。(笑)でもそれが意外と気持ちよかったりして…。(笑)このテの手法は70&80年代アイドルポップスにおいて割りと頻繁に用いられていたモノ、要はマイナーとメジャー調が1つの曲の中に混合…というアレだ。これの他にどんなのがあったか、今すぐに思いつくものだけでも挙げてみようか…。

「ヤング・ボーイ」 河合奈保子
「17才」 河合奈保子
「ラブレター」 河合奈保子
「愛してます」 河合奈保子
「ガラスの夏」 柏原よしえ
「花梨」 柏原芳恵
「土曜日のシンデレラ」 北原佐和子
「恋と涙の17才」 つちやかおり
「悲しみよこんにちは」 麻丘めぐみ
「青い水平線」 和泉友子
「はらはらサマータイム」 矢野良子
「メロウ・シーズン」 橋本美加子
「ヤッパシ…H!」 浅香唯
「ドール」 太田裕美
「誘われて南南西」 渡辺めぐみ
「GEMINI」 川島なお美
「Love Fair」 岡田有希子
「赤道直下型の誘惑」 渡辺桂子
「ウォンテッド」 ピンク・レディー
「カメレオン・アーミー」 ピンク・レディー

(以下はご訪問者の方からのご協力モノです)

「スリリング」 田中久美
「もしかしてドリーム」 桑田靖子
(以上、KOSUKEさんより)

「愛をください」 河合奈保子
(以上、ゆうきより)

※後から自分で思いついたもの
「夏の雫」 三田寛子←転調の金字塔のような作品でした!
「私が選んだあなたです」 五十嵐夕紀←これもメジャーなのかマイナーなのか?な楽曲

あたりだろうか…。その度合いや構成はマチマチだが、どれも混合曲である。河合奈保子さんの初期作品にはこのテの手法がよく見られ、「17才」「ラブレター」などもこれらに該当するだろう。つちやかおりさんの「恋と涙の17才」は転調の金字塔といった趣の作品だが、元々のオリジナルは60s米ガール・シンガーだったレスリー・ゴーアのものだったから、純国産ではない。和泉友子さんの「青い水平線」、そして矢野良子さんの「はらはらサマータイム」はどちらも1981年デビューの女性アイドルモノで、サビでいきなり大胆にメジャー展開する曲なのだが、いかんせん歌唱したご本人自体がマイナー過ぎて、これらの存在があまり知られていないのが残念だ。橋本美加子さんの「メロウ・シーズン」は前半がメジャーで後半がマイナーという作り。上記に挙げたピンク・レディーの曲も全体的にマイナー調が来て、サビ部分でやわらげのためにメジャーへ転調…というパターンが多かったが、その度合いは軽めのものが多かったのだ。この他にもアイドルにおける混合曲を思いついた方がいましたら、いつものようにコメント欄でお知らせ下さいませ♪

さて、それた話をナンノに引き戻そう!

この曲はオリコン最高1位、18.9万枚を記録した。ナンノの他曲、たとえば「吐息でネット」「話しかけたかった」「はいからさんが通る」に比べたら、作品的にもレコード売上的にもちょいと地味な部類の作品に入るだろう。

ただ時代が時代だったせいもあるのだろうか。この曲が発売された80年代後半はアイドルもアナログレコードも下火となり始めていた頃だ。だから1位を奪取していてもこのくらいの売り上げの曲というのがザラにあったのだ。個人的には20万枚超えしてしかるべき楽曲だったのではないかな…と思ったりもする。なぜならこの曲は‘秋’の風情がてんこもり、そしてマイナー調とメジャー調のほどよいミックスで不思議な音色を醸し出すことに成功している…アイドルが放ったアキウタの中における‘ぷち’傑作と言える楽曲だからだ。

☆作品データ
作詞:許瑛子 作曲:荻田光雄(1987年度作品・CBSソニー)