
冷えすぎた空調に
揺り起こされ
体を丸めたあと
背中を弓なりに
限界まで 一気に 伸びをする
家の外壁に蝉がとまっているのか
すぐ側で鳴いているのを感じる
子どもの頃
縁側で昼寝をし
汗だくの顔をタオルで拭われる感覚に
目を覚ました日を思い出す
優しくはなかったけれど
ある時まで 完ぺきだった母が
ふいによみがえる
憑き物が落ちたように
穏やかに老いた母は
私が帰ると
お茶をすすりながら
独り言なのかわからない音量で
同じ話ばかり繰り返す
人生は
かかわり合う人の
増減を繰り返しながら
進んでいく
選んでいるようで
選べない
停車駅の不確かな旅路のようだ
孤独から身を護るため
思い出を求めても それは
未来の私を
強くしてくれないのかもしれない
それでも
側にいたい人と
同じ時間を過ごすことで
私の平衡感覚が保たれていく
何が 最善かわからない…
未来の自分が
今の私をどう思おうとも
後悔ばかりだとしても
歩みを止められない

最善を選んだはずだ
でもきみと離れたわけが思い出せない
千原 こはぎ