あれは確か、だいぶ大学生としての生活に慣れてきた頃だったと思う。
サークル、講義、アルバイト探し…活動範囲もかなり広がり、友達や顔見知りも増えてきた。
そんな頃だった。
時々講義で見かける女の子が、僕に話し掛けてきたのだ。
僕と同じ、隣接する町の出身だという。久しぶりの地元の話に盛り上がっているうちに、彼女はためらいがちにこう言った。
「私ね、ハルと仲いいんですよ」
不意に出てきた名前が、自分の以前の恋人だと気付くまでにしばし間が開いてしまった。
そして、気付いた途端に僕は動揺して少し青ざめていたらしい。申し訳なさそうな彼女の声に、首を振るのがやっとだった。
無理もない。
幼かったなりに真剣に愛し、幼さ故に傷付け合ってしまった人。
今更連絡のしようはないけれど、今でも気掛かりな、人。
僕は青い顔のまま、薄く作り笑いをした。
心臓が痛いくらいに激しく打っているのがわかった。
苦しい。
しばらく経って、やっと跳ね回る心臓の動き以外のことも 認識できるようになってきた僕の目に。
ひどく切ない目をした彼女が映った。
心臓が、さっきと違うモーションで跳ねた。
やっとの思いで聞けば、この友人―のんこ、と呼ばれていたという―は、よくハルから僕のことを聞いていたのだそうだ。
一緒に何回か撮ったプリで、顔も知っていた、と。
ハルとの事が頭を駆け巡り続けているのに、僕の目はのんこのぷくんとして血色のいい唇と、やわらかいラインを持つ手を交互に見ている。
思考が分裂するにも程があるだろう。
第三の僕が、僕自身を醒め切った目で見下ろしている。
最低だ。
サークル、講義、アルバイト探し…活動範囲もかなり広がり、友達や顔見知りも増えてきた。
そんな頃だった。
時々講義で見かける女の子が、僕に話し掛けてきたのだ。
僕と同じ、隣接する町の出身だという。久しぶりの地元の話に盛り上がっているうちに、彼女はためらいがちにこう言った。
「私ね、ハルと仲いいんですよ」
不意に出てきた名前が、自分の以前の恋人だと気付くまでにしばし間が開いてしまった。
そして、気付いた途端に僕は動揺して少し青ざめていたらしい。申し訳なさそうな彼女の声に、首を振るのがやっとだった。
無理もない。
幼かったなりに真剣に愛し、幼さ故に傷付け合ってしまった人。
今更連絡のしようはないけれど、今でも気掛かりな、人。
僕は青い顔のまま、薄く作り笑いをした。
心臓が痛いくらいに激しく打っているのがわかった。
苦しい。
しばらく経って、やっと跳ね回る心臓の動き以外のことも 認識できるようになってきた僕の目に。
ひどく切ない目をした彼女が映った。
心臓が、さっきと違うモーションで跳ねた。
やっとの思いで聞けば、この友人―のんこ、と呼ばれていたという―は、よくハルから僕のことを聞いていたのだそうだ。
一緒に何回か撮ったプリで、顔も知っていた、と。
ハルとの事が頭を駆け巡り続けているのに、僕の目はのんこのぷくんとして血色のいい唇と、やわらかいラインを持つ手を交互に見ている。
思考が分裂するにも程があるだろう。
第三の僕が、僕自身を醒め切った目で見下ろしている。
最低だ。