イヤホンからの曲は、いつの間にか止まっていた。
彼女は、今日何度目かもわからないため息を吐いて、再生ボタンを押してから制服の短いスカートからすっと伸びた脚を組み直す。

そっと見渡せば、周りは皆机の上の参考書と格闘している。

…すごい集中力。っていうか、私が場違い?

そんなことを思ってから、またノートに視線を落とす。けど、文字の替わりに目に入ったのは枝毛の目立つココアブラウンの髪だった。
なんとなく指先に髪を巻き付けたりしながら、手持ち無沙汰な右手でシャープペンを持つ。

いくつめかの英文を訳していると、こん、と机が軽く鳴った。目だけでそちらを見ると、ノートの上にチョコが一枚、それからそれを押さえる細くて長い指。
見上げた先で彼が軽く笑ってから、出よう、と口を動かした。
珍しいなぁと思いながら、荷物をまとめ席を立つ。チョコは手に持って、イヤホンを外しながら彼の後を追った。