たまに、子供のように笑うことがある。

馬鹿笑いする、というわけではないのだけれど、

それでもその笑顔には少なくとも、いつものどこか影ある雰囲気は窺えなかった。

いつもそうしていればいい、と最初に言い出したのは望美だ。

それで神子姫様の興味があいつに向けられるならたまったものではないのだけれど、

別段自分にそこまで自信がないわけでもない。

結局の所、自分もあいつはそうであったほうがいいと思っているのだと、

自覚するなりなんだか力の抜けた笑いがこみ上げた。

 

「ヒノエ、そんなところにいたのか。」

 

庭の木の上、丁度いい場所に腰を下ろして遠くを見ていたヒノエに、

邸から出てきた敦盛はあまり感情のこもらない声でそういった。

 

「ああ、敦盛か。何だよ、なんか用かい?」

「いや、ただ先程から姿が見えないと思っていたから・・・。」

 

敦盛の言葉に一瞬ちらりと視線をやってから、また何事もなかったかのように顔を背けるヒノエに、

敦盛は俯き気味にそう返す。

それを視界の端でとらえてヒノエは小さく、自分にだけ聞こえる程度の大きさでため息をついた。

 

こいつはまた。

 

「では、邪魔をした。」

「あ、おい敦盛。」

 

きびすをかえす敦盛を呼びとめ、ヒノエは身軽に小高い木の上から飛び降りる。

近寄ってくるなりまじまじと顔を覗き見るヒノエに、敦盛は怪訝そうな表情で目を見返した。

 

「なんだ、ヒノエ。私の顔がどうかしたのか?」

「い~や?眉間のしわはないんだなっと思ってさ。」

「?」

 

困ったように疑問符を飛ばす敦盛の片頬をつねると、ヒノエは面白くなさそうにその頬をぐいぐいと引いた。

「ヒ、ヒノエ、何をっ」

「おまえさぁ・・・笑ってろよ少し。」

「はぁ?」

 

敦盛らしくもない気の抜けた素っ頓狂な声に、 まぁそんな顔でもましか とつぶやく。

わけが分からずにも頬をつねられたままで敦盛は抗議の声を上げた。

 

「ヒノエ!いい加減離してくれないか・・・。」

「へいへい。」

 

ヒノエもたいがいらしくない。

多少痛む頬を押さえながら、敦盛はぶすっとしてこちらを見るヒノエを軽く睨んだ。

 

「あー悪かったって。そう怒るなよ。」

「別に・・・怒ってなどいない。解せないだけだ。」

 

視線を逸らして少しばかり拗ねたような口調の敦盛に、ヒノエは まぁそうだろうな とそっけなく返した。

 

「お前さ、昔から結構仏頂面だったけど最近前にもまして暗いじゃん。」

「・・・それは、あの頃とは歳も・・・。」

「てか暗過ぎ。笑うときはすっげーガキくさいのにさ。いつもは俯いてばっかで・・・

見ててじれったいんだよなー。」

「・・・すまない。」

 

憮然としながらも眉を顰めて素直に謝罪する敦盛を呆れたように見返して、

ヒノエはがしがしと自分の頭を掻いた。

 

「だーかーらー。お前笑えって少し。」

「そんな・・・何もないのに笑えない。」

「弁慶とか笑ってるだろ!!さすがにアレ見習えとは言わねーけど憎憎しいっ。」

 

どこか話題が逸れてぐちぐち文句を言い出すヒノエをあっけにとられて見る。

ふと我に返ったヒノエが、めんどくさそうにつぶやいた。

 

「とにかく望美もそう言ってたしさ。お前は少し笑ってたほうがいいよ。

まぁぶすっとしててくれたらあいつの目がお前に向かなくていいかもだけど?」

 

望美がそんなことで人への興味を変えたりするような女ではないこと位ヒノエも重々承知なのだが、

こういえば多少は変わるかと意地悪くそう告げる。

しかし敦盛はそんなヒノエの意にそって伏せがちな瞳をすっかりとじきり そんなことはない と言った。

 

「私が笑おうが笑うまいが、私は神子にとって人の数にもならない身だ。この世に、とっても。」

 

あーもう。どうでもよくなってくるねこうも頑なだと。

 

顔を思い切り不機嫌に歪ませてから大げさにため息をつく。

いつからこんな風になってしまったのか、離れていた時間も長いヒノエには到底分かりようもなかったが、

それでも再会してから笑顔なんてほとんど見ていないなと記憶を辿った。

 

「けどさ、どうせ人の数にもならないんなら笑顔で神子姫様を楽しませてやろうとか思わないのかい?」

「そんなもの・・・」

「そんなものを、望美は望んでるんだ。」

「っ。」

 

驚きと動揺に言葉を失くす敦盛に苦笑して、ヒノエはそのまま邸の中へと足を向けた。

 

「俺も笑ってたほうがいいと思うね。たまに位は。暗い顔されるよりはずっといい。

男の仏頂面なんか戦場で嫌になるほど見慣れてるんだ。」

「ヒノエ・・・。」

 

振り返らずにそのまま邸の奥へと消えていくヒノエを見つめながら、

敦盛はそっと ありがとう とつぶやいた。

しかし敦盛はどこか苦しげに目を伏せて、自分の手にそっと視線を向けた。

その両手は動くたびにじゃらりと冷たく重々しい音をたてた。

 

「でもヒノエ・・・私はもう・・・。」

 

その声は心無い風の音にかき消され、後には独り立ちすくむ敦盛の姿だけが残った。

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途中から方向性が変わってしまいました。なんか用かい。と打ったら、なんか妖怪と変換された。笑える。

BLじゃないですよ。(あ、前にもこんなのが・・・デジャブ)

言うことないです。とっさに書きました。もちろん下書きもなし。

流れがおかしかろうが笑って許してくださいアッ○さん。(涙)

そろそろ真剣に文章構成について勉強する必要性が出てきたようです。お粗末さまでした。