「もう、別に怒ってないって言ってるじゃないですかっ!!!」
「なっ、怒っているじゃないか!今日はなんだか変だぞお前。」
「っ・・・なら、ならさっきの美人なお姉さんについていけばっ?!九朗さんの馬鹿!!」
街に溢れる人ごみのなか、そんな望美の声は後半涙声になって高々と響いた。
やきもち
「一体あいつは急になんだっていうんだ。」
ぶつぶつと文句を言いながらもあからさまに落ち込んでみせる九朗に、譲は大きくため息をついた、
九朗の身長と容姿は人がどんなにいてもそれなりに目立つものである、知り合いならばなおのこと。
それで、買い物中だった譲がその姿に気付き声をかければこの始末。
原因もろくに分からぬまま望美と喧嘩別れをし、元々負けん気の強い男ではある、
非も分からぬというのに追いかけて謝るということが出来ずに立ち往生していたのだ。
・・・というか、とりあえず涙目の望美を追いかけはしたものの、
この人ごみであっという間に見失ってしまったらしい。
この世界に来てまだ間もない九朗は、帰るにしても道が微妙に心元なく困っていたことも原因だった。
「それは多分只のやきもちですよ、九朗さん。」
「・・・やきもち?しかし俺は何もしていないぞ?!」
「だから、女の人に話しかけられたんでしょう?それで?」
先ほどから一向に進まない話にそろそろうんざりしてきた譲が、話に発展性を持たせようと助け舟をだした。
本来こんなのろけともとれる話など聞きたくはないのだ。
さすがに奪い取ってやりたいとまでは思っていないが、望美を何年思ってきたことか、
あきらめるうんぬんの問題ではなく、彼にとって望美への思いは未だ過去の事にしきれてはいなかった。
それだというのにこんな話をされても、はっきり言って嫌気がさすと言うかなんと言うか。
それでも捨て置けない所はこの人の人徳なのだろうと譲は自嘲気味な笑いをもらした。
「・・・だから、望美の姿が見えないからそばにいたその人に尋ねたら一緒に探すと申し出てくれて。」
「ありがとうと笑顔でお礼を言った?」
「・・・ああ。」
「・・・。」
「・・・、お、俺は悪くないだろう?!」
沈黙と譲の視線に耐え切れず声を荒げる九朗に、譲はただ ええ とどうでもいいように返した。
本当になんてことはないやきもちではないか。
「でも先輩も悪くありません。まあ九朗さんはこの容姿ですから、色々我慢してたみたいですし。
そう考えると天然とはいえ無神経ということも言えますから・・・やっぱり九朗さんが悪いかな。」
「なっ・・・。と、いうか、望美はなにか我慢していたのか?」
恐る恐る尋ねる九朗に譲はあいまいに返事をする。
それにいよいよ不安になったのか、表情を曇らせる九朗に小さく笑う。
まるで子供のようだ。
そこで、恋愛に対してはもしかしたらそうなのかもしれないと思いなおす。
源氏の御曹司で一時は将も預かる身分といえばそれなりの知識経験はあったであろうが、
こんな風に普通の恋愛ごとというのにはてんで鈍そうなイメージはあった。
弁慶やヒノエとの会話を聞いていてもそれは節々に感じられる。
それならば・・・、と譲は立ち上がって九朗に笑いかけた。
「じゃあ、とりあえずは帰りましょうか。俺も丁度帰るところでしたし。」
「帰るって・・・あいつの所にか?だが俺は・・・。」
「原因が分からないのならば直接きいてみればいいでしょう。」
「む・・・う・・・。」
譲の言葉に少しの時間うなってから、九朗は大人しく立ち上がり、譲の横を歩き始めた。
* *
「はい、じゃあ俺は一度学校に戻りますから、仲直り頑張ってくださいね。」
返事も聞かず、そう笑顔で残すときびすを返して去っていく。
そんな譲の後姿をしばしほうけて見つめたあと、九朗は意を決して望美の家のチャイムに手を伸ばした。
ピーンポーン
状況に不似合いな軽く可愛らしい音が辺りに響く。
落ち着かなく足を動かしながらも中からの返事を待っていると、
答えはチャイムではなく直に、開けられた扉の奥から聞こえてきた。
「か、帰ってくださいっ!今は、会いたくないからっ。」
「んなっ。」
ガチャリ
「望美っ!!お前っ・・・なにかいいたいことがあるなら直接言え!!」
ずかずかと敷地内に入りドアを素手でたたき出す九朗に、望美は恥ずかしさから扉を再び開ける。
そろりと顔がこちらを覗き込む前にすばやく隙間に手を入れると、
九朗はそのまま強引に家の中に押し入った。
「なっ、何するんですか!こういうの不法侵入っていうんですよ?!」
「知るか!!お前がそういう態度だからだろう!!」
お互いにどうしようもないと思っている部分と、申し訳ないと思っている部分があるため、
顔を赤くして怒鳴りあう。
少し落ち着いた望美がふいと九朗に背を向けると、帰ってくださいと繰り返した。
「お前・・・いいかげんに。」
「だって!!だって・・・今の私、とっても醜いの!!」
「・・・は?」
予想外の言葉に思わず素っ頓狂な声をもらす。
望美は自分の両手で両頬を覆ったまま、まくし立てるように言葉を続けた。
「だっていつもいつも九朗さんのこと女の人が見てて、その人達は私なんかよりすごく綺麗だし、
九朗さんこっちの世界の人知らないからもしかして私より好きな人できちゃうかもって、
不安で不安ですごく嫌な事考えたりして、だから、こんな、こんな私。」
「望美。」
「嫉妬ばっかしてて醜くてっ」
「望美。」
「きっと九朗さん呆れちゃう・・・。」
「望美!!」
「っ!」
泣きそうな顔をこれ以上ないというほどに赤く染め上げている望美を優しく自分のほうに向かせながら、
九朗は初めあやす様に、しかし最後ははっきりと、その名を呼んだ。
その声にハッと言葉をとめて黙り込む望美の額にそっと口付けると、
九朗は緊張でつめていた息をゆるゆると吐き出しながらお互いの額をこつんとつけた。
「ったく・・・驚かすな。」
「え?」
「嫌われたかと、思った。さっきも、このままじゃお前と金輪際会えなくなってしまううじゃないかと、
不安、で。あんな乱暴な行動をとった、すまない。」
優しく、でも少し照れを含んだ口調で話しだす九朗をじっと見つめ返す。
「譲に、お前の怒った原因は嫉妬だといわれて・・・。正直信じられなかった。
だって、俺にとっては周りなんか気にする余裕もなくお前を見ていて、
それこそ俺のほうが毎日はらはらしていたんだ。
こっちの世界で生まれ、こっちの世界をよく知る、年も近い男のほうがいいのではないかと。」
「そんなっ!」
「そうだな、いらぬ心配だったか。お互いに。」
微笑む九朗の顔が額をつけているせいでとても近く、どうしようもなく顔を赤く染める望美に、
九朗も一瞬言葉に詰まって顔を赤らめてから困ったように小さく笑った。
「お前を・・・お前がいたからこの世界に来たんだ、俺は。
お前と、ずっと共に生きていきたいと・・・そう、思ったから。」
「九朗さん。」
「・・・言わすな。」
ぶっきらぼうにそう言うと、眉を顰めて顔を離す九朗に、望美は思い切り抱きついた。
あからさまに慌てる九朗を気にも留めず抱きしめる腕をきつくする望美を大人しく見下ろすと、
望美は泣き出しそうな、でもとても嬉しそうな表情で視線を返した。
「ごめんなさい。」
「・・・いい。俺も、悪かった。今度からは気をつけて話すようにする、それでいいか?」
「うん。十分です。それに分かったし。」
「?何がだ?」
「九朗さんが誰と話しても、心変わりしたって、私の思いは変わりませんから。
どこまでも追いかけますから、覚悟してくださいね?九朗さん」
「・・・そんなことあるわけないが・・・望む所だ。」
そうしてお互いに笑い合った。
貴方が好きだと、心から思う。
やっぱりやきもちは焼いちゃうけれど、でもこの思いだけは見失わないよ。
私を思ってくれる貴方に応えたいこの思い。
貴方が、好き。大好き。
ずっとずっといつまでも、一緒にいて下さい。ね?九朗さん。
「望美、すまない。」
「え?なんですか?」
「今日これから俺のとこに来てくれないか。」
「デート滅茶苦茶にしちゃったし、いいですけど・・・。」
「あと、な。今日は、帰せそうにないぞ?」
「っ。んなっ///」
今日も明日も貴方の隣で愛してる。
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相変わらずちもが時々いなくなります。
どうしたの、ちも。調子が悪いみたいですね。
・・・この創作についてはもうなんのコメントもございません。
無駄に、ホント無駄に長くてごめんなさい。
私自身に愛が足りないので甘くしたかったのです・・・が、ね。
そして譲が偽物だね、どうしようもないですねぇもう。精進します。
お題はやきもちでした。何気にあと一個です。うけけ。