その日、望美が朔と買出しから帰ってくると、食卓の上におはぎの山ができていた。

30はあるだろうか、普段あまり見ることのない量のおはぎが大皿の上に乗っかっている。

 

「あら?・・・譲が作ってくれたのかしら・・・ずいぶんと量が多いわね;」

 

朔にしてみてもこんなに沢山のおはぎを目にするのは珍しい、というか初めてのことだったのだろう

どこか呆然としたようにそう言った。

 

「え、でも譲君なら朝から景時さんと一緒に星の一族さんのお家に行ってるから・・・。」

 

状況が飲み込めないまま荷物をその場に下ろすと、とりあえず二人共食卓に近寄った。

 

「・・・上手だね。」

「本当ね。」

 

遠くから見ると只の黒い塊だが、近くで見ると一つ一つの形の美しさがわかる。

全てが均等で、いびつさの全く無い楕円形だ。

 

「本当に、誰がこんなに作ったのかしら。」

「すみません、厨をお借りしました。」

 

大量のおはぎを前に一人ごちた朔の言葉に続いたのは、ちょうど奥から出てきた弁慶の一言だった。

 

「え、弁慶殿?・・・ということは?」

「これ作ったのって・・・弁慶さんなんですか?!」

 

望美が朔の言いたいことも代弁した驚きの声を上げると、

弁慶はいつものように柔和な笑みを浮かべうなずいた。

 

「ええ、比叡にいた時から作ることが多かったので味は保障しますよ。」

「でもすごい量ですね。」

「ふふっ、一人で沢山食べる人物がいますからね。」

 

首をかしげる二人に 後でわかりますよ と言い残し、弁慶は皆を呼びに部屋から出て行った。

その後姿を見送ってから、望美はちらりとおはぎを横目に見た。

言われてみれば大きさにバラつきの無いのをみると手馴れているのは一目瞭然ではあったし、

弁慶らしい丁寧な出来上がりだった。

しかしなんというかその・・・

 

「意外、だわね。なんだかこういうものを作るって。」

「あ、朔もそう思う?」

「一人で暮らしていれば嫌でも食事位は作れるでしょうけど・・・。」

 

言いかけて口ごもる。

言いづらい、否それは少し違う。上手に言えないのだ。

台所に立って弁慶が黒い塊を量産し続けることの奇妙さと可笑しさはなんとも言えない。

 

「(でも似合うっちゃ似合うのよね。何でも出来そうな人だし。)」

 

比叡にいた時からと言っていたから、やはり彼岸の時なんかに作ったのだろうか、

と幼い弁慶を想像してみる。

 

「(あ、可愛いかも)」

 

自然とほころぶ顔を真顔に戻している所に、ちょうど帰ってきたのだろう

譲と景時をはじめ、八葉の皆と白龍が入ってきた。

 

「うゎすげー量だなオイ。」

「ホントだ。おいしそうだね~。」

「・・・てかさ、気持ち悪く音ね?この黒い塊。」

「おや、いいんですよヒノエは、嫌なら食べなくても。」

「・・・・・・・・・ムカつく奴だな、わかっていってるだろ。」

 

そうして、ガヤガヤとおのおの話しだす皆に、いつの間にか譲がお茶を配り食卓についた。

それからおいしそうにおはぎを頬張りだす。

 

望美は予想以上のおいしさに三個をぺろりと完食する。

隣の将臣にからかわれ、九朗には呆れられたが、そうは言ってもおいしかったのだから仕方ない。

甘いものをあまり口にしない敦盛でさえ、最初皿に取り分けられた二個を難なく食べた。

出来たてでやわらかく餡は甘すぎない。その絶妙さについつい手が進んでしまうのだ。

本人が言うだけの事はある。

しかし一番驚くべきなのはヒノエの食べっぷりだった。

おはぎ一つ一つがみたらし団子のようにパクパクとすごい勢いで平らげていく。

隣の敦盛はさして動じていないようだったが、反対隣の九朗は青い顔でその様子を見ている。

その表情は「見ているこっちが気持ち悪くなってきた。」と言わんばかりだ。

 

「さっき弁慶さんが言ってたのってヒノエ君のことだったんですね。」

 

自分は一個をちみちみと食べたきりでお茶をすすっていた弁慶にそう投げかけると、

変わってませんね と言って笑った。

 

「熊野にいた頃に作ってあげたら気に入ったようで・・・その時もすごく食べていましたからね。

・・・そんなに食べたら後で知りませんよ、ヒノエ」

 

後半は聞き耳を立てていたヒノエへの忠告だった。

その言葉にいったん手を止めると、引きつった顔でぽそりと言い返した。

 

「・・・盛ってねーよな。」

「まさか、望美さんも口にするものにそんなことしませんよ。

そうゆう所は変わりましたね。昔は疑うなんてことなかったのに。」

「痛い目見たからね。」

 

二人のそんなやりとりに、キョトンとしている望美と、

口の周りに餡をつけながらもおいしそうにおはぎを口に入れる白龍以外の食べる手が止まる。

 

「(・・・望美が食わなかったらなんか盛ってたのか?)」

「(む、昔何があったのかしら)」

 

大まかにこの二つの考えが個々の頭をよぎった。

 

その後、皆何だかんだ胸に疑問と不安を抱きつつも、全てのおはぎを平らげた。

が、しかし。

食べ終えてしばらく後、ヒノエが腹痛で倒れたのを見て皆の不安はより強力なものへと成長した。

 

「嫌ですね。十何個も食べたんです、もち米の類は後でふくれるものですから

お腹を壊すのは当然でしょう。注意もしましたしね。」

 

問い詰めるとそう言って笑った弁慶に、望美と白龍以外の皆が

 少量の毒をヒノエが沢山食べることを見越して盛ったのでは・・・

と疑い、以後弁慶の作ったものには薬さえも疑う者が続出したとかしないとか。

 

でもそれはまた、べつの話。

 

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結局UPしてしまいました。長い長い;

ノンCP創作です。弁慶中心。

少し弁慶やヒノエの昔をほのめかす内容を含ませたのは私の趣味です。

あえて ぼた餅 にしなかったのは基本的に視点が望美だからです。

あと敦盛がヒノエの食べっぷりに動じなかったのは熊野時代で慣れているからです。

 

お粗末様でした。