ベルリン② | さくら日和~旅とヘナと着物の日々~

ベルリン②


今回(といっても大分前のことになってしまったけど)の旅で最も考えさせられた問題はドイツのナチス政権の事だったかもしれない。そう遠くない、この残酷な過去に関して非常に興味を持った。


ベルリン郊外のザクセンハウゼン強制収容所。本当はポーランドのアウシュビッツに行きたかったけれど、今回は行けそうもなかったので、こちらに行っておいた。

残された痕跡はごくわずかだったけれど、私には充分だった。


入口。今はミュージアムとされている。ここまでたどり着くまで、駅から結構歩いた。地図もなく、看板を手掛かりに人気のない町をひとり収容所に向かって歩くのは、なんとも悲しくも不安でもあった。




この門の向こう側に入ったら、もう二度と出られない。ここは地獄への入り口。

それにしては、あまりにも安っぽく、おもちゃのようだった。命の重みなんてどこにも感じさせない。




門から、広い広い敷地が見渡せる。

門には「労働は自由をもたらす」と書かれているらしい。私たちは生活や幸せや贅沢の為に働くけれど、ここでは皆、命の為に働く。生き残るためには、働くしかない。でも決して自由なんて無かった。



これからの事や仕事の事、将来の目標についてあれこれ悩んでいる私達なんていい身分なもんだ。なんだか申し訳ない。生きているだけで、存在を消されないだけで、充分ありがたい事なんだ。



正面に記念碑が建てられていた。ここで10万人が死んだ。



わずかに残されたユダヤ人の収容された宿舎。近寄り難い。遠目に見ていても、なんとなく当時を想像してしまって恐ろしい気持ちになる。自分がユダヤ人というだけでここへ連れてこられ、過酷な労働を強いられ、仲間がどんどん死んでいく様子を怯えながらみていることしかできなかったんだ。




ドイツ兵の軍服。この制服見ただけで鳥肌が立つ。




ユダヤ人の囚人服。みんな体に合ったものがもらえるというわけではなく、靴も左右バラバラだったって何かで読んだ。ここでは個性も人権も無く、名前も取り上げられる。与えられるのは、番号のみ。

これからはストライプのシャツなんて気軽に着られない、と思った。




みんなやせっぽちで、髪も剃られる。この家族を見たとき、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出した。ユダヤ人の悲劇を描いた映画なのにそれでも人生は美しいと思える前向きで素晴らしい映画。どんな状況にいても、常に明るく上を向いて人々に愛を与えられる人間になりたい。




個人部屋。本当に独房という感じで、薄暗く気味が悪い・・・・・ドクロ

ここへ入るのは、犯罪者でも極悪人でもない。有名だったり、お金持ちなユダヤ人。もちろん彼らは何も悪くない。ただユダヤ人というだけの理由でこんな場所に閉じ込められた。




トイレ。みんな一緒。羞恥心なんて捨て去らなければならない。




シャワールーム。この丸の中に8人くらいが一気に入ってシャワーを浴びる、というような説明だったと思う。




木製のベッドがたくさん並んでいる。ベッドだってもちろん一人にひとつなんてない。

彼らにとっては眠っている間ですらきっと安らぐことはできなかったんだろうな・・・・・考えられない。



この問題について考えると、胸が苦しくなった。ベルリンにいる間はずっと胸が苦しかった。

ドイツがヨーロッパにいるユダヤ人を皆殺しにしようとしたっていうのは、今平和に生きている日本人の私には到底理解できない事だけど、他人事だと目をそらすのではなく、せめて事実を受け止めてこれからの世界の平和を願うことだけはしなければと思った。

外国にいてアジア人であるという偏見や劣等感を感じることがよくあるけれど、当時のユダヤ人の気持ちを考えると比じゃない。今まで自由に暮らしている町で、ある日突然存在を否定されるという恐ろしさ。

今の自分に置き換えるとしたら、京都で暮している愛知県民は皆殺し。という感じになるのだろうか、規模が違いすぎるけれど、きっとそれくらい理不尽な事なんだろう。



帰りに見たミスマッチ。桜と銃ショップ。綺麗なバラにはトゲがある。という具合に桜には銃が・・・・・





最後に行ったカイザー・ヴィルヘルム記念教会

ここは日本でいう原爆ドームのようなところ。1943年の空襲で破壊され、変わり続ける街の中心に現在もそのままの姿で残され、戦争の恐ろしさを訴え続けている。両側には新しく作られた礼拝堂がある。





正面。スパっと切れている。



空襲を受ける前はこんな姿だった。あまりにも違う・・・・・




教会内の天井。ひびだらけでキリストの顔も割れてしまっていて見えない。神をも破壊する戦争。




隣に作られた礼拝堂(新教会)。あまりにもモダン。さすがベルリン。





ベルリン。現代アートや音楽の街だというのに、過去への訪問という感じの滞在になってしまった。ドイツを顧みる旅。どれほど惨いことをしてきても、それを否定するでも隠すでもなく、認めてこうして後世にも伝えていくというドイツの潔さは見習うべきだと思った。でも過去は決して許されるわけではないけれど・・・・・

与えられた命を大切にし、一日一日を精一杯楽しく生きるっていうのが今の私のモットーです。これがベルリンでの答え。