日没後の湿り気を帯びた風を受けながら歩く休日の街
道行く人は家路を目指しているのだろうが足取りは緩やか
そんな時間に似合わない「通勤」という二文字を抱えて私は歩く
アスファルトを高らかに打つ細いヒールにシフォンのワンピース
薄手のカーディガンの上には寒さよけのストールを羽織る
気怠い午後の出勤どころか気怠い夜の出勤
一般的な生活時間からはかけ離れたこの時間が好きな訳ではない
さりとて嫌っている訳でも無い
肌に絡む風は爽やかとは言えないが鬱陶しいほどでも無い
陽射しの無い街は眩しくなくていい
電車の中の人も少なくていい
とどのつまり
明るくて人の多い場所が自分は得手ではないのだろうと思う
休日の夜が始まる直前のひととき
そぐわないヒールの音を聞きながら
まるで自分の存在を自分で確かめているような気分になった
空に昇る月は次第に光に満たされていく
闇が迫るごとに己の明るさを増して
それ故に周りの星たちのきらめきを飲み込んでいた
街の中を歩く私
空の上を滑る月
ひとり と ひとつ
何故かそんな気がした