昨日の帰り道の話。
地下鉄の駅を出て、歩き始めるとすぐに、いつもより眩しい空からの光に気が付いた。
吸い寄せられるように、ごく自然に顔を上げると、そこには明るい星に囲まれた細い三日月。
ひと足先に空の上に昇っていたのが宵の明星、金星。
その後に続く、やわらかな光を纏う三日月。
そして後を追うように、少しだけ控え目に、だけどいつもよりキラリと輝く木星。
「わぁ…」
思わず小さな声が漏れて立ち止まる。
誰かに伝えたくて、誰かに見せたくて。
だけど一人の家路では、すぐに誰かには伝えられなくて。
写真に残そうかと思ってみたけれど、目に映るありのままの輝きには敵わない。
暫く空を見上げて、両の目にしっかりと焼き付ける。
藍色に深まる空と、目を見張るほどの輝きを前後に従えた、たおやかで美しい三日月。
ちょっぴり特別な気持ちになって、再び歩きはじめる。
家まで、あとわずか。
通りの向こうでは、やっぱりカメラを空に向けている人の背を見つけて、楽しい気持ちにもなりながら。
大切な人に、素敵な写真が送れそうですか?
しあわせな気持ちになりますよね。
心の中で声を掛けながら、通り過ぎる。
あるがままの、ありのままの空と大地に立つだけで、世界はしあわせを感じられる物事に溢れている。
世界は素敵なことで溢れている。
それに気付けるタイミングと、気付くゆとりを、逃がしさえしなければ。