映画を観てきた。
今、かなり宣伝されている、タイトルだけだとギャグかと思っちゃうような、アレ。
お話の中枢に、人の生死について目を背けられない、考えさせられる設定があるから、登場人物は極めて淡々と命というものに向き合わなければならない。
勿論、見ている私たちも。
それがあまりに淡々と繰り広げられて行って、じんわりと心を揺さぶられたりもする。
だけど込み上げるものも無く、とつとつとしているけれど平坦に物語は紡がれていった。
それが、クライマックスも近付いたであろう辺りで。
過去の出来事をふと思い出させられ、老人が堰を切ったように泣き出す場面がある。
何気ない日常のヒトコマであった思い出。
普段、私たちが意識しないような些細なこと。
取り返せない過去から今までの時間に積み重ねてしまったあれは、後悔と愛が溢れた涙だったのかと思う。
それまでは淡々と受け止めていた物語。
特に感情移入することもなかったのに、そのシーンで胸がきゅっと締め付けられた。
感情移入できていなかったので、その老人の気持ちや周囲の人間の気持ちがどうだったか、推測して述べることは私にはできない。
ただただ、そこで一気に見る者を強い感情に飲み込む、演技の凄まじさを感じた。
だから大物は大物なんだと、当たり前のことなのに、それを強く感じた。
あれを全身で表現する俳優という仕事は、もの凄いパワーの塊だ。
…映画を観に行ったのに、何より印象に残ったのはそんなこと。
そして私は、それだけで今日は良いものを観たと感じられた。