夢を見た。


ひょっこり夫が帰って来た。

何事もなかったように玄関のドアを開けて入って来た。

病気とは無縁だった頃の元気な夫だ。


リビングの仏壇に気付く。

自分の遺影と俗名の位牌を見て

呆れた様子で、不機嫌に言う。


なんで俺が死んだ事になっちょんのか!

おまえはバカか!


九つ下の私を、いつも子供扱いした夫らしい口ぶり。



夫は生きていた。

あの絶望しかなかった時間は

嘘だつたのか。


ああ 良かった


とは思わなかった。


何を今更

死んでいてくれて良かったのに。


私はそう思いながら、怒っている夫に不貞腐れていた。


目が覚めて

薄情な自分に戸惑ってしまった。


死別8年目

ようやく手に入れた

心の安寧を乱されるのはごめんだ。


それが本音。


私の中に確かに残っている

闘病も含めた10年の思いを

なかったものにできる訳がない。


朝起きて

仏壇の夫に詫びる。


ごめんね。

どうやら私、遺された身の上が板についてきたようだよ。も少しそっちで、おとなしく待っててよ。


冷たい女でごめんね。