児童書・絵本の出版社の福音館書店の創業者・松居直氏の講演会録。

「福音」という名の通り、福音館書店はクリスチャン企業で、松居氏はクリスチャンである。

牧師から薦められた2冊のうち1冊。借りた日のうちに読むのは私にとっては珍しい。

 

 長崎で中学生や小学生による殺人事件が相次いだ頃、キリスト教雑誌の創刊記念講演会での内容。

加害者となった少年少女たちは、「心」で言葉を「聴く」という体験が少なかったのではないだろうかという問題提起から始まる。

 

 敗戦後、「生きるとは何か」を模索しながら本を読み、本の作り手となったエピソードから始まり、生育と絵本、言葉の関係について語られていく。

 国語は「読み書き」以前に「聴く」ことである(特に母親から)。本離れ、活字離れとは即ち言葉離れである。お母様から教わった雨降りの表現が今も忘れられないこと。言葉を知っているだけでは作文は書けないこと。絵本は「大人が読んでやる」もの。日本語の調べを大切にすること。イエス様の教えはもともと口伝え。だから日曜礼拝の聖書の朗読は「聴く」ようにしている。

などのことが印象に残り、興味深かった。息子にも絵本や児童書はぜひ読んで聞かせたいと思ったし、遊びや会話で、たくさんの言葉を吸収して欲しい。そのためにも、やっぱり親の言動は気を付けないといけないなど、色々と考えた。

 

 ただ、蛇足かもしれないが、赤ちゃんが産まれてすぐ五感をはたらかせているのに、哺乳瓶やベビーカーがそれを阻害しているという書き方などなど、やっぱり著者は昔の人だなぁと思ってしまう箇所がいくつかあった(終戦時18歳なら私の祖父と同い年くらいか……)。

母親だけが育児をするのでない。母親でない人がミルクを飲ませようと思えば哺乳瓶は必須だし、母親も、体質で母乳が出ないのはどうしようもない。赤ちゃんが五感をはたらかせるために、刺激になるように、外出させて、それにベビーカーを使うのだ。子どもが五感をはたらかせるために、もっと外で遊ぶべきと書いているのに矛盾している……汗

細かいと言われるかもしれないが、この本が読まれて欲しいであろう若い親たちとの間に距離を感じるような表現は、どうも気に掛かってしまった。