肩透かし
1.相撲の決まり手のひとつ。
2.意気込んで向かってくる相手の勢いをうまくそらすこと。

塾講師を長年していると,生徒の考えている事や,
次に何をしでかすのかが予測できるようになる。

「おごるべからず」と自分に言い聞かせるも,
どうしてもその特殊能力を駆使してしまう場面が出てきてしまう。

例えば宿題。

休み時間に「はい,宿題確認するぞ~」と発したならば,
明らかに肩の筋肉がびくーーーっと反応し,
漫画を読んでいたはずの目がこれ見よがしに泳ぎまくる。

はは~ん,さてはやっていないな。

定期的に放映される「激動列島24時!凄腕万引きGメン登場」
の万引きGメンさんの如く目を光らせる。

しっかりと,しかし迅速に囲い込みに入る。

「はい,じゃあ~提出してね」

わらわらとプリントを持ってくる生徒諸君。
よしよし,君たちはこのまま提出していきたまえ。
わたしが目を付けているのは彼なんだ。

先ほどびくーーーっと背を丸めた彼は,
どさくさにまぎれて,まだ列にも並ばない。

どんどん列は短くなる。

へいへいへ~い

「ほら~早く持って来いよ~」
誰,とは言わない。

漠然と,漫然と,ただ辺り一帯にアナウンスしているだけですよ~
という体ではあるが,確実に彼の鼓膜に振動を送る。

残り数人なったところで,ガタッ,椅子が引かれる。

きたこれ!

こうなるとパターンは2つ。
『せんせ~宿題家に置いてきちゃいました~』
もしくは
『ここまでしか終わっていません』

さあ,どっちだ?

『は~い。』ポト。

プリントが机に置かれる。

あれ?

プリントに目を落とす。


しっかりやってある。

・・・・あれ?

彼はまた席に戻り,漫画を読み始める。

「は,は~い。他に出していにゃい人はいにゃいかい~(汗)」
明らかに動揺するプロGメン。

弘法も筆の誤り。

そりゃそうです。

受験生ですもの。

完全にわたしの勇み足ですた(恥)

わたしは取り組みで肩透かしを決められた力士よろしく,
膝についた砂を払いながら,彼にごめんなと謝った。

彼は『何がです?』という顔をしてた。
しかし,一瞬口元が緩んだ気がしたのは気のせいか。
はたまた負けず嫌いの悪い癖なのか。

かしこ