うちには犬がいます。


ずっと屋内で飼っているせいなのか,

どうやら自分のことをすっかり人間だと

思い込んでいるらしい,そんなおちゃめなやつです。


毎晩仕事が終わり帰宅すると

『わおおおん』とあくびと一緒にあいさつをするという

横着者を字でゆく感じはおいといて,

早く行こうぜとわたしを急かします。

(夜の散歩はわたしが担当)


散歩をする。


夜空の下を散歩する。


散歩するのは大体深夜ですので,

はたから見れば結構怪しいでしょう。


なにせ,田舎なもんであたりは真っ暗。


月と星の輝きのおかげでかろうじて視界はあるものの

突然そんな光景(深夜に散歩をしている光景)に出くわしたら,

おれでも驚くわい!


そんな暗闇を一人と一匹がノコノコと散歩する。


ブツブツと独り言を言ったつもりが,

なんだ?という感じで振り返る犬。


家に帰ると,これまた日課のように彼は床にひっくり返る。


ゴロンって。


お腹をさすってくれと言っているようなので,

いつもよしよしとさすってあげる。


実に気持ちよさそうに鼻歌まじりでひくひくする。


ある時,あまりにもその行動が不思議に思い,

『犬の習性』みたいな本で調べたところ,

どうやらその行動は絶対的な服従を表しているらしい。


服従?


おまえが?


いや,やっぱりそれはないな。


だって,早起き野球でそそくさと出て行くわたしに

気がついているはずなのに,やつは一向に起きてこない。


頑なに寝たふりをしている。


だって,その時のわたしは彼にとっては

何のメリットもない人間だから。


えさも無ければ,散歩もない。


確信犯的に彼は寝たふりをしている。


どう考えても服従しているはずがない。


そりゃそうだ。


わたしが読んだのはあくまで『犬の習性』であって

『自分を人間と思い込んでいる犬の習性』ではないのだから。


そんな事を考えながら

わたしは朝のグラウンドへ車を走らせる。


にっこり笑う。


なぜ?


太陽がまぶしかったからさ。


かしこ