オレは今久しぶりに同期の連中と飲んでいる。

2,3日前に誘われたのだ。


今日のメンバーはオレを含めて4人。

場所は勉強の神様の神殿近くにある居酒屋『ビブン・セキブン・いい気分』である。


『いや~しかし久しぶりだなぁお前達とこうして酒を酌み交わすのも』

こう話すのはいつも強引に俺たちを振り回す『黒シャツ』だ。


『黒シャツ』はいつも黒のタンクトップを着ているのでそう呼ばれている。

体も相当鍛えているようでムキムキだ。

冬でも黒シャツで来るのでいつも驚いていたが,最近は慣れた。


『あのなぁ,お前はいつも突然なんだよ。こっちにも予定ってのがあるんだ』

『少なくても2,3週間前には連絡をよこせ』

ごもっともな事を論じているのは『赤メガネ』だ。


『赤メガネ』は頭の切れるやつで,奴にかかればどんな難問も数秒で解かれてしまう。

いわゆる天才肌ってやつで何事にも冷静沈着だ。時間にも約束にもとにかく細かい。

俺達の中でも随一の伊達男でもあり,おしゃれめがねの赤がひどく似合う。


『うるせぇ,どうせいつも暇なんだろ!』

『なあモヤシ!』

黒シャツが青白い顔をしたモヤシと肩を組みながら言った。


『いや・・・はい・・・僕は・・・いつでも暇なわけで・・・』

『誘ってもらって・・・嬉しかったわけで・・・』


このモヤシっ子みたいのが『白モヤシ』

いつもみんなにペースを合わせるスーパーおひとよし君だ。

ただ,こいつの知識は半端ではない。

電子辞書を使うよりもモヤシに聞いた方が早いぐらいだ。

しかもジャンルの幅がとにかく広い。

政治,経済,スポーツ,世界情勢,釣り,山登り,ゲーム,歴史,自動車・・・

何でもござれのマニアックなやつだ。


この前ウッカリ『日本の名城』について聞いてしまったもんで,


『いや~,よく聞いてくれましたね。姫路城や大阪城なんてでかいだけで魅力がない。』

『やはり小さくても機能的な城のほうが断然素晴らしいですよ』

『例えば幻の城,安土城!かの織田信長公が築城させたお城で超守備型の造りなんだ』

『それとやはり規模で言えば,江戸城さ!現存する資料から推測するに・・・』


この調子で12時間以上日本のお城について語られた。

ルアーとフライではどっちがいいか?なんて話題は間違ってもふれない。


『ところで青クーラーのとこの子はどうなんだ?』


赤メガネがオレに話を振ってきた。


オレは今でこそエンピツ王子という名を使っているが,

仲間連中からは『青クーラー』と呼ばれている。


オレはとにかく青が好きで,何を買うにしても青いやつを買ってしまうのだ。

ポロシャツでも,スニーカーでも,ダウンでも。

そこにきてオレの話はどう言う訳か寒いらしい。

青いのが好きで話が寒いから青クーラー・・・

こいつらのセンスもどうかと思うが,モヤシと呼ばれるよりは・・まあ いいだろう。


「ああ,中3の受験生だ。今は中間テスト対策中で大忙しだよ。」


『へぇ~中3かぁ。じゃあ黒シャツのとこと同じだな』

赤メガネがグラスを傾け黒シャツの方へあごを向けた。


『ほう,クーラーのところも中3か!かっかっか愉快,愉快』

『お前みたいな寒い奴に教わっていたらいつも風邪を引いてるんじゃないか!』

『おれんとこのはもうすごいよ。毎日腹筋,背筋,胸筋の3色筋肉を鍛えまくりだ!』


「体育系の高校を目指しているのか?」


『いや,全然。目指しているのは超進学校だぜ,がっはっは』


あ~あ。。。なんて可哀相な子だ・・・勉強よりも体を鍛えさせられてるんだな・・・

まあ,でも不思議な事にこの黒シャツの志望校合格率は抜群に高いのだ。

この強引さが逆にいいのかもしれない。


お互い色々なやり方があり,こいつらと話しているときが一番面白い。


いつも新たな刺激を受けている。


こうして気の置けない仲間と飲むのは本当に楽しい。


あいつも今頃頑張っているのだろうから,明日あたり顔を出すか。


『おいおいおい!何ぼけ~としてんだ!』


黒シャツが肩を組んできた。


秋が深まろうとしている。


41.僕は進む。


かしこ