一週間で本を一冊読む
王子に言われて僕は学校の図書室へ向かった。
中はやっぱり静かだ。
どうしようかなぁ・・何を読もうかな・・・
トコトコと歩いていたら,ふと「ある本」が目にとまった。
よし,この本にしよう。
一週間もあれば充分読める気がするしね。
こうして僕の(多分)生まれて初めての1冊読破生活がはじまった。
・・・・・・・【5日後】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『王子,本よみ終わりました』
「お?5日で読んじゃったの?へぇ~だいぶスピードが意識できてきたじゃんか」
『ええ,すごく面白くて一気に読めましたよ』
「そんで何を読んだの?感想を聞かせておくれ」
僕は本を王子の前に出して答えた。
『コレです,豊臣秀吉』
「ほぉ~伝記かぁ。しかも,秀吉くんのじゃないか!」
「秀吉くんはおもろいよ~」
「でで?読んだ感想は?」
『今まで秀吉についてはあんまり知らなかったけど,読んで色々わかりました』
『特に信長のために,わらじを懐で温めていたエピソードなんかすごいなぁって思いました』
『やっぱり天下を取る人はそういう所に気がつくんですね』
「そう,特に秀ちゃんはすごかったよ」
「あの子は気づきの天才だったねぇ」
『そうなんですか?』
「そうだぜ。信長が本能寺でやられたときも一目散に光秀を討っただろ?」
「あれだって『今,自分は何をやらなきゃいけないか』に気づいてやったんだ」
「当時,普通にやっていたら秀吉くんは信長の後継者にはなれなかったのよ」
「だってあの子は泣きたくなるぐらい身分が低かったからね」
「そこであの光秀討ちだ。あれで一気に100段ぐらい階級を飛び越したわけだ」
「人の心や状況に注意をはらって気がつかなきゃ無理だったのさ,あの大出世はね」
『なるほど。人の気持ちに気づくのも大切な能力なんですね』
「そう。現代人なんかもっといろんな人の気持ちを読み取る力が必要だね」
「・・・ん!そうだ。次の課題はコレにしよう」
「次のお前の課題は・・・・」
もうすでに儀式化された王子のタメ。
僕も随分慣れてきた。
「相手が喜ぶことを言う だ!」
『喜ぶことをですか?』
「そうだ。人を喜ばすのって案外骨が折れるよ」
「だってその人が言われて嬉しいことって何か知るためには,よ~く観察しなきゃダメだろ?」
「その観察することがいわゆる『気づき』につながる訳だ」
「この能力は勉強,特にテストで威力を発揮するんだぜ」
「出題者は何を伝えたいのか?」
「この問題にはどんなヒントが隠されているのか?」
「そういうのを見抜くのが気づきなのさ」
『そんなもんですかね?』
「そうだよ」
「よし,じゃあとりあえずオレが喜ぶこと言ってみ」
「オレが何と言われたら嬉しいか,ほれ,ほれ,オレのいいとこ」
『・・・』
僕はぎらぎら光る王子の目線から必死に逃れるように窓の外を眺めた。
まぶしいくらいの青空がそこにはあった。
喜ぶひとこと・・か
【本日の宿題】
相手が喜ぶことを言う
かしこ