時々目覚めると
薬のせいで
せん妄が起きてる
 
 
 
呂律の回らない口調で
新興宗教に拉致された
と訴える
お前もこいつらの味方なのか…
起こしてくれ
家に帰してくれ
おーい…誰か
助けてくれよ
 
 
大声で叫ぶ…
 
 
安静にしてないと
帰れないんだよ…
 
 
そう言うと
お前もやっぱり仲間か…
一瞬鋭い目で
アタシの目を見つめた…
 
 
 
 
 
 
夜間に
きっと拘束ベルトを
外そうともがいたのだろう
 
昨日よりも
手首のベルトの辺りが
擦れて傷がひどくなり
ベッド柵に当たり
打撲痕が増えている…
 
 
アタシが顔を出すと
余計に
帰宅願望が顕著に
現れるから…
夕方は看護師に
容態を確認し
ガラス越しに姿を見て
帰宅した…
 
 
 
月曜の病院は混んでいて
駐車場までの道のりが
遠かった…
寒さと寂しさと
悔しさで
涙がこぼれた…
 
 
 
今日でちょうど一週間
 
 
 
Dr.曰く
一番脳梗塞を起こし易い時
 
 
 
安静にしていなければ
ならない
 
 
 
頭で理解していても
 
 
 
心がついていかない
 
 
 
 
強くなると
決めたのに
溢れる涙は止まらなくて
しばらく
車の中で
泣き止むまで
過ごした
 
 
 
車の中で
吉田美和が
亡くなった旦那さんへの
気持ちを歌った歌が
ちょうど流れ出した
 
 
 
大丈夫
旦那さんは死なない
 
 
 
何度も
言葉に出して
言い聞かせた
 
 
 
 
 
泣いたのが
子供達にばれない様に
買い物をしてから
帰宅した
 
 
 
でも
けんちゃんには
ばれてたみたい…
すぐに顔を見て
目の回りを舐めてくれた
 
 
 
そういえば
旦那さん
譫言で
けん、来いって
呼んでたな…
 
 
 
木曜はけんちゃんも
抜糸
 
 
 
パパ大丈夫だった!?
 
 
 
父さんどう!?
 
 
 
帰宅した子供達に
聞かれ
大丈夫だよ
きっともうすぐ
退院出来るよ
 
 
 
自分にも
言い聞かせる様に
答えた…
 
 
 
 
大丈夫
きっと大丈夫
 
 
 
 
今日もけんちゃんと
はやちゃんと
姫をだっこして
眠ろう…
 
 
 
ベッドの下には
王子が布団を敷いて
寝てくれる
 
 
 
大丈夫
 
 
 
旦那さんも
アタシも大丈夫…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
八戸の義母が
帰った
 
 
田舎街の駅で
子供達と電車を
見送った
 
 
札幌で函館行きへ乗換
函館から八戸行きへ乗換
義母が自宅へ着くのは
夜、きっと9時位…
 
 
 
 
短い面会時間…
なかなか
離れたくない義母の姿を見て
 
 
病棟のロビーで
少し時間を潰し
遠方から来ている事を伝え
処置が終った後
もう一度面会させて
もらえる様に
看護師に頼んだ
 
 
 
短めに…と
 
 
 
再び面会する事が
出来た
 
 
 
十数年前…
父が
祖母を置いて
先立った時の事が蘇る
 
 
 
一人息子に
先立たれた祖母の
悲痛な姿
 
 
 
義母は何度も名前を呼び
また来るから
大丈夫だから
元気になるから
 
 
そう言って
拘束されている手を握り
涙を流していた
 
 
 
 
お母さん
そばにいたのに
ごめんね…
 
 
 
もっと
体に気をつけて
あげてたら…
 
 
 
 
言葉にならなかった…
 
 
 
義母は電車に乗る時
 
 
 
お姉ちゃんにばかり
辛い思いをさせて
ごめんね
ちゃんと食べて
それ以上痩せたらダメだよ
お姉ちゃんが
倒れたら大変だから…と
労いの言葉をかけて
くれた
 
 
 
旦那さんが
倒れた日
 
 
 
妹が出産した
 
 
生まれた赤ちゃんが
一時的な呼吸の障害で
一緒に退院する事が
出来なかった妹は
だいぶ落ち込んでいた
 
 
 
義母を送って
実家へ行き
妹に会った
 
 
 
この瞬間にも
世界中のどこかで
 
 
かけがえのない命が
誕生し
 
 
かけがえのない命が
消えていくのだろう
 
 
 
 
 
どんな命も
尊い
 
 
 
 
大嫌いだと感じる人にも
苦手だと思う人も
家族にとれば
大切な命だ…
 
 
 
そう思うと
 
 
 
苦手な人なんて
居なくなるし
苦手だと思うなんて
なんて身勝手で
自己中な考えなんだろうと
思った
 
 
 
世界中が
愛で溢れたら
 
 
 
 
みんなが幸せに
なれるのにね
 
 
 
命を大切にしたら
 
 
 
みんなが幸せに
なれるのにね
 
 
 
 
ひとりごと-STIL0050.JPG
 
 
 
 
痛み
 
 
動きたい
 
医療の世界には
その気持ちは
絶対安静には必要ない
 
 
 
鎮静剤で
さらに朦朧とし
手足
両肩をベッドに
縛りつけられた姿を
 
 
 
慌てて八戸から
かけつけた義母が
見た時
声にならない
泣き声で
名前を呼んでいる
 
 
 
その姿が
私の胸を締め付けた
 
 
 
褥そうがないか
今日見てこよう…
 
 
爪切りと
ひげそりもしてこよう
 
 
 
倒れた日の夜
くれたメール
無理して来なくていいよ
 
 
今の彼は
薬のせいで
時折、目が覚めても
はっきり話す事も
出来ない
 
 
 
でもね
わかるんだよ
ちゃんと
 
 
 
義母がよく言ってる事わかるねと言った
 
 
 
 
わかるんだよ
 
 
 
 
だから
今日も
会いに行く