大学3年の後半は勉強と研究に明け暮れた。


俺はいつしか彼女のことを考える時間が減り、


当初あった非常なまでの虚無感に苛まれることは少なくなっていた。


そのまま時は過ぎ去り、大学4年になる少し前の3月下旬。


突然ある電話がかかってきた。


それはあの人物からのものだった。


?「もしもし?」


この声は・・・


聞き覚えがあるような・・・ないような・・・


俺「はい?どなたでしょうか?」


?「あっ、先生!こんにちは!


塾の者ですが今、お時間大丈夫でしょうか?」


塾の者・・・?


何だよ、塾の者って?


しっかりとお前の名を名乗れよ・・・


大体、俺は塾の講師辞めて随分時が経つんだけど。


俺「はい?あの・・・


自分、もう1年以上前に塾を辞めてるんですけど。」


塾の者「それがですね・・・実は、生徒のご紹介を


させて頂きたいと思いまして。どうしても生徒の方から


リクエストされてしまっていて。もし、先生がよろしければ、


塾の講師に戻ってきてもらえませんでしょうか?」


俺「えっ?その生徒って誰なんですか?」


塾の者「それは塾に来て頂いて、契約をする時に


お話させていただきます。どうでしょうか?」


俺「・・・そうですね・・・」


俺は思案していた。


今更、俺を指名する生徒って一体・・・


しかし、考えても答えは出なかった。


それに、担当していた家庭教師先の生徒は


全員、受験が終わり、契約が終了していた。


悲しいかな、俺には新たに生徒を受け持つだけの


十分な時間があったのだ。


俺「とりあえず、お話だけでもお聞きしに伺います。」


塾の者「本当ですか?それでは、早速今日の夜にでも・・・」


俺「はい、わかりました・・・」


そう言って塾の者は電話を切った。


その夜・・・


俺は久しぶりに塾の前に立っていた。


その日は月曜日。


サヤの指導日は当時と変わっていなければ、


金曜日であるはずだ。


その点では遭遇する心配はない。


それに例え、変更されていようとも、


さらに、自習で毎日塾に来ていたとしても、


その時間帯、サヤに遭遇する心配はなかった。


なぜなら時刻は11時半・・・


生徒が塾で学習できるリミット時間、


11時を十分に経過しているのだから。


その証拠に教室の電気は消されている。


俺は、安堵して塾の扉を開いた。


俺「こんばんは。」


塾の者「こんばんは!お待ちしておりました!」


電話での声の主と同じ声を持つ男性。


そして、その顔には見覚えがあった。


留学から帰ってきた後、


塾を訪ねた時に対応をしたあの見知らぬスタッフだ。(第45話参照)


俺はそこで、ようやく思い出すことができた。


俺「それで、紹介したい生徒というのは・・・」


スタッフ「はい・・・彼女です。」


そう言って、一枚の紙を机の上に取り出した。


その紙には生徒の氏名や学校名、学年、指導教科などが


ずらずらと書かれている。


一際大きな字で書かれているその氏名を見て、俺は絶句した。


サヤだった。




予告とコクヨって似てますよね・・・
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