サヤにメールを送り続けたが、


何も返信がないまま、1ヶ月が過ぎていった。


そんなある日の夕刻、大学から車で帰途に着く途中、


俺はある光景を目の当たりにした。


二人乗りをした自転車で、こちらの方に向かってくる高校生。


ペダルを漕いでいるのは、男子だ。


後ろに跨っているのは女子。


俺は何の気なしに、そのカップルに視線を向けていた。


二人の着ている制服に見覚えがあったからだ。


それは、サヤの学校の物だった。


後ろに跨っている女子の顔は


男子の影になってまだ見えないが


嫌な予感がした。


女子の背格好が、あまりにも今


俺が追い求めている人に似ていたからだ。


すれ違いざま、女子の顔が一瞬見て取れる。


・・・やはり、サヤだった・・・


俺は落ち着くために深呼吸をした。


そして、俺に残された数少ない選択肢の一つ


を実行することにした。


それは、サヤにメールをして確認することだ。


俺『他の男と付き合い始めたの?』


少々の静かな時間が流れた。


俺の意識の中では同じ画像がループしていた。


すれ違いざまに一瞬捉えたあの光景。


自転車の後ろに跨っているサヤが


見知らぬ男子の背中にしっかりと抱きついている姿を・・・


その時・・・


サヤからのメールが受信した。


久しぶりのメールだった。


しかし・・・本文は一言、4文字だけであった。


サヤ『そうです』


俺とサヤの関係はこうして終わりを告げた。


それ以降、俺が彼女にメールをすることはなくなった。


俺は彼女をあきらめなければならなかった。


しかし、それは予想通り、つらい作業だった。


急に彼女を忘れられるはずもなく・・・


時間のある時は、必ずと言っていいほど、


頭に浮かぶのは彼女の笑顔だった・・・


その度に涙が溢れてくる・・・


夜寝る前・・・


そして、朝起きた時・・・


車に乗っている時・・・


食事の量は劇的に減った。


ただでさえ、痩せ気味であった俺の体重は、


1ヶ月ほどでさらに5kg絞られた。


このままではダメになってしまう。


そう考えた俺は、彼女のことを考えないで済むように


できるだけヒマな時間を作らないようにした。


大学4年から始める予定だった研究を繰り上げ、


大学3年の11月からスタートさせた。


研究室でゆきちゃんが、


教員採用試験の勉強をしているのを見て、


俺もつられてその勉強をやり始めた。


熱中できるものであれば何でも良かった。


家庭教師もリスタートさせた。


元いた塾とは別の会社で家庭教師の登録を済ませると、


それまでの経験を買われ、すぐに生徒の紹介がやってきた。


あっという間にサヤと出会う前と同じように


平日の夜は家庭教師で埋まっていった。


これは、思いのほか効果があった。


研究や指導に集中すればするほど、


彼女のことは意識の外に追いやることができたのだ。


その間、俺のケータイの受信箱には、ある変化が訪れていた。


サヤからもらったメールの保存数がどんどん少なくなっていき、


代わりにアヤからのメールが多くを占めるようになっていたのだ。


結局、老人ホームへのお礼は2回行くことになった。


1回目はアヤと俺で。


2回目はゆきちゃんと俺で。


その方が余計な揉め事を起こさないで済むから・・・


しかし、1回目のお礼に行った時、


職員さんからある意味深なことを言われたことを覚えている。


職員さん「あれ?まさか、アヤと付き合ってんの!?」


俺「えっ!?いえいえ!!付き合ってません!!」


職員さん「そう・・・ならいいけど、気をつけるんだよ!?」


俺「えっ!?・・・あ・・・はぁ・・・」


俺はその意味がよくわからなかったが、


ある出会いがその疑問を解決することになるのだった・・・





アヤの正体とは!?
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