そう思ったのも束の間、


サヤは無言でこちらに歩み寄ってきた。


俺は、ゆきちゃんとサヤを交互に見ながら、


すでに大量の嫌な汗を掻き始めていた。


サヤが俺たちの前に立つ。


ゆきちゃんがサヤに気付き、不思議そうな顔をして


彼女を見つめた。


すでに俺もゆきちゃんもパスタを食べる手が止まっている。


サヤは不動明王のような険しい表情を俺に見せている。


その顔から彼女が何を考え、何を言いたいのかは一目瞭然だ。


サヤにつられて、他の友達も後ろからついてきた。


その中にはナナもいた。


ナナは俺とゆきちゃんに気付き、


瞬時に今の状況を理解した様で、


絶句している。


俺たちの周囲には、あっという間に


冷たい張り詰めた空気がその姿を現していた。


サヤは依然として、何も言葉を発さない・・・


そして、俺もこの状況にどう対処すればよいかわからず、


混乱していた。


瞬間、


サヤは俺の頬目がけて、思いっきり手の平を振り払った。


周囲にけたたましい衝撃音が響き渡る・・・


驚愕の表情に変わるサヤの友達・・・


そして、ゆきちゃん・・・


この時、俺は確信した。


サヤがとんでもない勘違いをしているということを・・・


そして、早く真実を正確に伝えなければならないということを。


ゆきちゃんには、もう高校生と付き合っていることがバレてもいい・・・


それよりも守るべき大事なものがあるということを。


俺は、頬の痛みを意にも介せず、口を開く。


俺「サヤ!違うって!何勘違いしてんの!?」


しかし、彼女は俺の言葉に耳を貸すことなく、


そのまま後ろを振り返り、


黙って、ファミレスから走り去っていった。


慌てて友達がサヤの後を追いかける。


それを見た俺もすぐさま立ち上がった。


俺「ゆきちゃん、ごめん。ちょっと待ってて!」


ゆきちゃんは黙って頷く。


俺はそのまま、彼女たちの後を追いかけた。


ファミレスを出、すぐに彼女たちを発見した。


入り口のすぐ外で、円状になって中央にある


何かを見つめている女子高生たち。


その中央にはうずくまっているサヤがいた。


横から肩を抱いているナナ・・・


俺「ちょっとごめん!」


俺はその群れの中に掻きいって、サヤに呼びかけた。


俺「勘違いだって!さっきのがゆきちゃんだよ?


前に話しただろ?研究室が同じ同級生だって!」


どうやら彼女は泣いているようで、俺の言葉が耳に入っている


のかどうかすらわからない。


そこで、サヤに代わって、ナナが俺の追及をし始めた。


ナナ「それなら、どうして、二人っきりで


ファミレスなんかにいたんですか!?」


俺「だから、どうしても打ち合わせしとかないと


いけないことがあって!」


ナナ「はぁ!?それならファミレスじゃなくてもいいじゃないですか!?」


俺「それはたまたま昼飯時だったからだよ!!」


ナナ「そんなのごまかしてるだけじゃないんですか!?」


俺「だから、違うって!」


その時、一際大きな声で、俺とナナの会話に割って入ったのは・・・


彼女。


サヤ「もういいから!!


ゆきちゃんとどうぞお好きなように!!


もう私の前には現れないでね!!」


そう言って俺の方を睨みつける。


サヤ「行こう!!」


その言葉を合図に彼女の友達全員が反応を示した。


彼女を先頭にして、自転車に乗り、去っていこうとしている。


俺「ちょっと待てって!!」


しつこく食い下がる俺。しかし・・・


友達A「もう話しかけないでくれます!?」


友達B「そうそう!!さぁ~いてぇ~!!」


友達C「二度とサヤに近づかないで下さいね!!」


そう言って、俺をサヤに近づけないようにする彼女の友達たち。


そして、そのまま、俺の前から自転車は去っていくのだった・・・


そ・・・そんな・・・


しばらく、呆然と立ち尽くした後、


俺はファミレスに戻って、ゆきちゃんに事の説明をした・・・


ゆきちゃんはさすがに俺が高校生と付き合っていたことに


びっくりしていたが、「それなら私が行って、説明しましょうか?」


とすぐさま俺たちを気遣うようなことを言ってくれた。


しかし、「もう彼女たちは去ってしまったんだよ。」と言うと、


「また今度、説明した方がいい時が来たら、何でも協力しますから!」


と言って俺を必死で安心させようとしてくれたんだ・・・


高校生と付き合っている俺を軽蔑する素振りなど微塵も見せず、


最後まで気遣ってくれた・・・


ゆきちゃんは俺が思っていた以上に思いやりのある子だったんだ。


ゆきちゃんと別れ、俺はすぐさまサヤに電話した。


しかし、何度電話しても、彼女が電話を取ることはなかった。


俺はメールで全ての真相を話した。


アヤという介護体験で知り合った実習生に言い寄られて


困っていることをゆきちゃんに相談していたこと。


アヤとゆきちゃんが仲が悪いため、お世話になった老人ホームに


一緒にお礼に行くのをどうするか、話し合っていたということ。


しかし、彼女からメールが返ってくることもとうとうなかったんだ。


そのまま、時はいたずらに過ぎていった。





さ、寒い・・・。゜(゜´Д`゜)゜。
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