ProtecT試験は、1999~2009年に英国で前立腺特異的抗原(PSA)検査を受けた50~69歳の8万2,429例のうち、限局性前立腺がんと診断された1,643例を、積極的監視療法群(545例)、前立腺摘除術群(553例)、放射線療法群(545例)の3群にランダムに割り付け、予後を追跡した試験です。 とても重要な臨床試験の結果です。
15年経過した結果が、報告されています。
以前、ブログに書きましたが、結果を表にまとめ、分かりやすくしました。
前立腺がんで死亡する率と、全ての死亡率は、3群で差がありませんでした。
つまり、死亡率の観点からは、3つの治療法は同等と判断されます。
前立腺摘除術でのハザード比が0.66と低く出ていますが、95%CI(信頼区間)は0.31〜1.39と1を挟んで両側にあるので、有意差はありません。
一方、転移、長期ホルモン療法、病勢進行の観点からは、前立腺摘除術と放射線療法の方が、積極的監視療法より良好でした。
また、前立腺摘除術と放射線療法の間には、転移、長期ホルモン療法、病勢進行に差は無いと思われます(論文を読んでいないので、私のデータを見た推測です)。
3群のどの治療を選ぶかは、年齢、費用対効果、治療期間、ホルモン療法の有無、治療後の合併症の観点から、自身の考えで選ぶことになります。
前立腺摘除術では、ロボット手術が導入され、より精緻な手術ができるようになりました。
一方、放射線治療の進歩も素晴らしく、定位放射線、粒子線、画像誘導放射線、トリモダリティなどが導入されています。
限局性前立腺がんの治療効果は、基本的に両治療で差がないと思っています。
重要なのは、その治療への経験が深く、その治療を得意としている病院で受けることです。