認知症への抗精神病薬の投与は有害であるとの大規模コホート研究が発表されました。

 

 

英・University of ManchesterのPearl L.H. Mok氏らは、英国の大規模診療データを用いて認知症患者における抗精神病薬使用とさまざまな有害転帰との関連を検討する人口ベースのマッチドコホート研究を実施。心筋梗塞、静脈血栓塞栓症、脳卒中、骨折、肺炎、急性腎障害といったリスクの上昇との関連が示されたとBMJ(2024; 385: e076268)に報告した。

 

対象は、英国の診療データベースから抽出した1998年1月~2018年5月に認知症と診断された50歳以上の成人患者17万3,910例(認知症診断時の平均年齢82.1±7.9歳)。

コホート内症例対照方式を用い、認知症診断以降に抗精神病薬を開始した患者1例に対して、認知症診断日が一致する非使用者(対照群)を最大15例選出。

傾向スコアを用いてさまざまな背景因子を調整した。

 

試験期間中に3万5,339例が抗精神病薬を処方された。主な薬剤は、リスペリドン(29.8%)、クエチアピン(28.7%)、ハロペリドール(10.5%)、オランザピン(8.8%)だった。

 

抗精神病薬使用中(処方から90日間と定義)におけるハザード比(HR)は、肺炎2.19、急性腎障害 1.72、静脈血栓塞栓症 1.62、脳卒中1.61、骨折1.43、心筋梗塞1.28、心不全1.27だった。肺炎のリスクが、最も高かった。

 

認知症の行動的および心理的症状に対する抗精神病薬処方の妥当性を、考え直す必要があると結論した。

 

本邦でも、認知症に付随する精神症状に、抗精神病薬が投与されることはあると思います。

抗精神病薬投与が難しくなると、臨床の現場では困った事態に陥ります。

適量・少量、短期間使用にとどめることによって、抗精神病薬の有害作用を回避できるのかもしれません。