放射線治療後、前立腺がん細胞が全て死滅すれば、前立腺からの再発は起こりません。

どのくらいの頻度で、放射線治療後、前立腺がん細胞が残存するのでしょうか。

ブログを始めた時、最初にこの問題を取り上げました。

 

 

改めて、この論文内容を紹介します。

対象者は多く、観察期間は長く(生検から9年)、信頼できる論文です。

1990年から2005年15年間、限局性前立腺癌(PC)に外照射(EBRT)を行い、その後前立腺生検を行った382人の生検結果と予後について解析しました。

T1c 29.6%、T2 53.1%、T3 17.3%。

グリソンスコア7以上 60.5%。

EBRTの線量は、70.2から86.4Gy。ホルモン療法ありが48.4%。

前立腺生検は、照射終了後5年以内に行われ、中央値は38ヶ月。

71.7%はPSA再発無しの状態で生検を受けたが、28.3%は生検までにPSA再発した。

生存者の観察期間の中央値は、生検から9年。

 

外部放射線照射(EBRT)後、前立腺生検を行い、前立腺がん細胞の有無を調べました。

赤のグラフは、生検で前立腺がん細胞あり

緑のグラフは、生検で前立腺がん細胞を認めるが、高度の変性を来している

青のグラフは、生検で前立腺がん細胞なし(太いグラフ)

縦軸は頻度、横軸は生検後からの年数です

A、前立腺がんでの死亡率、B、遠隔転移を来した率、C、PSA再発率

 

生検で前立腺がん細胞を認めるが、高度の変性を来している(緑)と生検で前立腺がん細胞なし(青)の、遠隔転移率(B)とPSA再発率(C)は同等で、生検で前立腺がん細胞あり(赤)より、有意に低値であった。

全てのリスクで、EBRT単独の方が、男性ホルモン除去療法(ADT)を併用したEBRTより、前立腺がん陽性の割合が高かった。

 

 

赤のグラフは、生検で前立腺がん細胞あり

青のグラフは、生検で前立腺がん細胞を認めるが、高度の変性を来している + 生検で前立腺がん細胞なし(太いグラフ)

A、前立腺がんでの死亡率、B、遠隔転移を来した率、C、PSA再発率

A、B、Cの図の差が明瞭です。

Cで、赤のグラフ(生検で前立腺がん細胞あり)でのPSA再発率は、80%ほどで一定になります。つまり、前立腺がん細胞があっても、PSA再発しない人が20%いることを示しています。これは、前立腺がん細胞が死滅せず残っても、PSAの増加がゆっくり、または増加しないことを意味しており、大変興味深いです。

 

治療後、前立腺がんが残存しても、PSAが顕著に増加しないケースを、ブログで知ることができます。

 

 

ブログ主のグラフに追記しました。勝手に引用してすみません🙇

 

 

治療はHIFUです。

2010年6月、前立腺の再生検を受け、前立腺がんの残存(6箇所中1箇所で陽性)を認めました。しかし、その後もPSAは低下しており、2014年5月までのデータが示されていますが、PSAは上下しています。

 

前立腺がん細胞が残存しても、PSAが増加しない、つまり前立腺がん細胞が増殖せず大人しくしている場合があると思われます。機序は推測になりますが、元々の前立腺がん細胞の性質による、腫瘍免疫が働いている、食事や服薬の効果等が考えられます。