第30回日本消化器関連学会週間(JDDW 2022、10月27〜30日)で発表された腸内細菌叢とJapanese 4D(disease, drug, diet, daily life)との関係が、医学記事に掲載されていました。
Gastroenterology 2022; 163: 1038-1052に掲載された論文に関連した発表です。
患者・健常人4,198人(平均年齢66.4歳、男性59%)の臨床情報(病歴、服用薬剤、食事、身体活動、生活習慣)と、採取便検体のゲノム解析で得られた腸内微生物叢情報(腸内細菌叢、機能遺伝子、薬剤耐性遺伝子、ウイルス叢)との関係を明らかにしました。
この様な大規模研究は、世界的に珍しいとのこと。
4,198検体の解析からは、284属・1,773種の腸内細菌、1万689個の機能遺伝子と403個の薬剤耐性遺伝子が見いだされました。
Bifidobacterium(ビフィズス菌など)やBlautia(内臓脂肪が少ない人に多い)が多いことが、日本人の腸の特徴とのこと。
腸内微生物叢に影響を及ぼすのはどんな因子なのか、年齢・性・BMIなどの身体測定因子、食事、運動や生活習慣、疾患や薬剤の使用歴について検討がなされました。
その結果、薬剤が最も強い影響を及ぼしていることが判明しました。
薬剤使用による腸内微生物の構成異常は、食事や生活習慣などの3倍以上であることが分かりました。
腸内微生物叢に影響を及ぼす強さは、薬剤>疾患>身体測定因子≒食事≒生活習慣>運動の順でした。
消化器系薬や糖尿病薬といった薬剤効果の違いは、腸内細菌叢に異なった変化を与えます。
消化器系薬で腸内細菌叢を大きく動かすのは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、マグラックス、マグミットなど)、アミノ酸製剤(肝不全で使う分枝アミノ酸製剤?)、胆汁酸排泄促進薬(ウルソ、ウルソデオキシコール酸)でした。
糖尿病薬としては、αグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、アカルボースなど)が腸内細菌叢の変化に強く影響しました。
「疾患と腸内微生物叢の関連において、薬剤は重要な交絡因子である」、特に「炎症性腸疾患(IBD)、慢性肝炎、糖尿病、急性冠症候群、うつ病、不眠症、関節リウマチ、膠原病、アレルギー疾患、HIV感染症、血液がんの11疾患では、疾患と腸内細菌の関連を見る上で、使用薬剤を考慮しなければならない」とのこと。
感想:疾患と腸内細菌叢との関係が報告されています。
腸内細菌叢の変化に、最も影響を及ぼすのは内服薬であること、それが抗生剤ではないことは重要です。
また、内服薬によって起こる腸内細菌叢の変化が、疾患に対して良い作用するのか、悪い作用するのか、今回の発表では不明です。
長期間服用している薬剤が、腸内細菌叢に変化を及ぼし、持っている疾患の状態に変化を及ぼしたり、新たな疾患の発生に関係しているのかも知れません。
良く使われるマグラックスなどの下剤でも、腸内細菌叢が変化するのは驚きです。
個人的には、漢方薬と腸内細菌叢との関係を知りたいところです。
例えば、八味地黄丸のアンチエイジング作用の一部は、腸内細菌叢の変化によってもたらされる可能性があるかもです。
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Dr コトー診療所の映画を見てきました。
少し、自身の経験と重ね合わせ、感動しました。
昔々、2年間の初期研修が終わった後、九州の田舎にある小さい病院に派遣されたことがありました。上部消化管内視鏡検査(GF)は1度も行ったことはありませんでしたが、補助して頂き、数人の患者さんに行いました。その後、この検査を任され、ベテランの看護師さんと一緒に、GFを行いました。昔だから許されたことです😉