難治性前立腺がんに対するα線療法の治験についての医学記事が出ていました。

詳細は、大阪大学プレスリリースをご覧になってください。

 

 

 

下記の学術誌に掲載されています。

Targeted α-therapy using astatine (211At)-labeled PSMA1, 5, and 6: a preclinical evaluation as a novel compound.

Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2022 Nov 8.  doi: 10.1007/s00259-022-06016-z. Online ahead of print.

 

大阪大学大学の研究チームは、前立腺がんに発現する前立腺特異的膜抗原(PSMA : Prostate Specific Membrane Antigen)を標的とした新たなアルファ線治療に用いるアスタチン標識PSMAリガンド([At-211]PSMA5) の開発に成功しました。

日本医療研究開発機構(AMED)橋渡し研究(シーズF)に採択され、放射線科学基盤機構の研究チームと共に治験開始までに必要な非臨床試験を進めています。

今後、研究分担者と共に医師主導治験の準備を進め、2024年度の治験開始を目指しています。

 

今回、開発したα線治療用リガンドを前立腺がんのモデルマウスに静脈内投与したところ、腫瘍に高い集積を示し、単回投与で腫瘍の退縮効果が長期間持続することが確認されました。ホルモン療法抵抗性で多発転移を伴う前立線がんの場合は、有効な治療法が限られます。

一方、PSMAの発現はホルモン療法抵抗性前立腺がんでも保たれていることが多く、全身に多発転移を認める場合でも治療効果が期待できます。

 

大阪大学では、これまで独デュッセルドルフ大学との共同研究によって、PSMAを標的としたPET画像診断の臨床研究を実施してきました。

また国外ではβ線核種のルテチウム(Lu-177)を用いたPSMA治療が注目されていますが、Lu-177は国内製造ができないことや、Lu-177治療抵抗性の患者がいることが分かっています

アスタチンは従来の放射線よりもエネルギーの高いα線を放出する核種であり、β線治療抵抗性であっても治療効果が期待できるだけでなく、加速器を用いた国内製造が可能です。

理化学研究所では、重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」の加速器を用いて、本研究に必要とされるアスタチン原料を大量製造する技術開発を行い、大阪大学への安定供給を実現しました。

 

多発転移を伴うホルモン療法抵抗性の患者さんには化学療法などが実施されますが、副作用が少なくありません。

一方、核医学治療では重篤な副作用を認めることは稀であり、かつ飛程の短いアルファ線を用いた治療では専用の病室への入院が不要です。

アスタチンは加速器を用いた国内製造が可能であり、製造拠点を整備することで、多くの患者さんに外来治療として実施できることが見込まれます。

将来的には日本発の治療として、世界中で治療を必要としている前立腺がんの患者さんに用いられることが期待されます。

 

感想:

治験の内容や参加基準などの詳細については、先方に問い合わせてください。