前立腺がんは、多発性と言われています。

他のがんの多くは、孤発性で、多発することはありません。

なぜ、前立腺がんが多発性であるのか考えてみました。

 

Therapies Targeted to Androgen Receptor Signaling Axis in Prostate Cancer: Progress, Challenges, and Hope.

Cancers 2020, 12(1), 51; https://doi.org/10.3390/cancers12010051

 

前立腺の病変に、Prostatic Intraepithelial Neoplasia (前立腺上皮内腫瘍、PIN)があります。

前立腺上皮内腫瘍には、低悪性度(Low-Grade)と高悪性度(High-Grade)があり、前立腺がんの周囲には、しばしばHigh-Grade PINが見られます。

High-Grade PINは、前立腺がんの前がん状態と見なされ、腫瘍化に関係する遺伝子であるBCL2, GSTP1, MYCの過剰発現や、腫瘍抑制遺伝子であるPTEN, NKX3.1, TMPRSS2-ERG fusionの欠失、SPOPの変異が報告されています。

 

Cancers 2020, 12(1), 51

 

初期の前立腺がんでは、PTENやRB1などの腫瘍抑制遺伝子の欠失や、FOXA1などの腫瘍化遺伝子が過剰発現します。

前立腺がんが転移まで進行すると、多数の遺伝子に、過剰発現、変異、欠失が起こります。

 

上図で、HGPINは、High-Grade PINのことです。

正常前立腺には遺伝子異常はなく、その後、HGPINに進行すると、初めて遺伝子異常が起こり、前立腺がんになるとさらに遺伝子異常が起こり、転移するまで進行すると多数の遺伝子異常が起きることが示されています。

遺伝子異常によって前立腺がんが発症し、遺伝子異常が増えることによって、前立腺がんは進行して行きます。

 

自身の前立腺の生検の報告書に、基底膜は保たれていますが、異形細胞(PIN)の存在(Low-Grade PIN?)が記載されていました。

 

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放射線照射後、局所に前立腺がんが再発することがあります。

再発した方のPSAの経過図を見ると、照射後数年経ってから、PSAはゆっくり漸増し、PSA再発に至ります。

これは、何を意味しているのでしょうか。

 

放射線照射による感受性は、前立腺がん>High-Grade PIN>正常前立腺ではないかと考えます。

放射線照射によって、前立腺がん細胞は死滅するか分裂不能となっても、High-Grade PINは生き残るのではないでしょうか。

生き残ったHigh-Grade PINは、放射線照射によって、さらに遺伝子異常が増え、初期の前立腺がんとなる……..それが、再発を起こす(場合もある)と考えます。

ですから、放射線照射後、High-Grade PINから初期の前立腺がんへの進行を防ぐことが必要ではないかと考えます。

ブログで何度も取り上げてきた再発予防策です。

 

上皮内腫瘍(Intraepithelial Neoplasia、前がん状態)は、子宮頚部、大腸、乳房にも見られるとのことです。

これらのがんでは、局所再発や別の部位にがんが生じることがあるのではと考えます。