以前、自身のブログで地中海食を紹介しました(地中海食 2020-07-09)。今回、老舗のジャーナルであるCancerから、地中海食が限局型前立腺がんの進展を抑制するとの報告が出ましたので紹介します。また、自身が行っている食事療法と採血結果についても記載します。

 

Adherence to the Mediterranean diet and grade group progression in localized prostate cancer: An active surveillance cohort. Cancer.2021 Jan 7. doi: 10.1002/cncr.33182.  Online ahead of print.

全文は読めないので、抄録のみの紹介です、少し意訳しています。

 

背景:監視療法(active surveillance)中の限局型前立腺がん患者に対して、地中海食は、抗炎症作用、抗脂質作用、化学発癌予防作用から、利益をもたらす可能性がある。そこで、地中海食がグリソンスコアの増加に関係するか、糖尿病、スタチン系薬剤(高脂血症の薬剤)の使用、他の因子との関連を踏まえ、前向きに調査した。

 

方法:初発の限局型前立腺がんで、監視療法中の患者を対象とし、日常摂取する食物の頻度に関する質問表で回答を得た。地中海食スコアは、カロリーを調整した9種類の食物グループから計算された。地中海食スコアと無増悪生存(progression-free survival)との関係は、コックスの比例ハザードモデルを用いて評価された。増悪の定義は、2年に渡る監視療法中に起こるグリソン グレイド グループ(Gleason grade group)の増加として定義された。

 

結果:15%の患者は糖尿病を有し、そのうちの44%はスタチン系薬剤を使用していた。観察期間の中央値36ヶ月で、76人が増悪した。臨床因子を調整した後、全ての患者で、地中海食を良く摂取する患者では、グリソン グレイド グループの悪化のリスクが低い傾向にあり(P=0.07)、糖尿病が無い患者では、有意に低かった(P=0.03)。スタチン系薬剤を使用していない患者でも、地中海食を良く摂取する患者では、グリソン グレイド グループの悪化のリスクが低かった。

 

結論:地中海食は、監視療法中の限局型前立腺がん患者の進行を抑制する。

 

感想:慢性炎症は、動脈硬化を起こし、それによって心疾患や脳血管障害が発生すると言われています。また、慢性炎症は、がんを誘発し、がんの進行を早めると言われています。地中海食は、この慢性炎症を抑える働きがあります。一方、地中海食と疾患との関係を調べた研究の多くは、欧米からのもので、食生活が異なる本邦には、当てはめ難いです。以前、このブログで紹介したJPHC研究(発酵大豆食品と前立腺がん 2020-12-08)によれば、健康型食事(野菜、果物、いも、大豆食品、キノコ、海草、脂の多い魚など)は前立腺がんの発生を低下させます。従って、地中海食を念頭に置きながら、健康型食事を摂ることが、慢性炎症を起こさず、がんを含めた疾病の予防と進行予防に有効ではないかと推測します。

 

自身について言えば、2019年2月、前立腺がんと診断されました。当時、食事は適当で、朝食は菓子パンとヨーグルト、昼食は仕出し弁当、夕食は職場の職員食堂またはコンビニ弁当で済ませていました。自宅で食事を摂るのは、土日の夕食のみでした。

これでは、いけないので、食事と食生活を改めました。朝食は、ナッツ、バナナ、パン(全粒など)、味噌汁、納豆。昼食は、弁当持参(夕食の残りなど)とコヒー、夕食は、自宅で家内の手料理を摂る様にしました。なるべく避けている食品は、乳製品、合成肉、牛豚の肉、動物性油脂です。アルコールは、金土に、主にワインを飲んでいます、ストレス発散も必要なので。

その結果、採血ではLDL/HDLの比が、以前は2.0を超えていたのが、1.6程度まで下がりました(表)。LDL、HDLの値自体は、以前から正常範囲内ですし、脂質に対する薬剤は服用していません。LDLが低下し、HDLが増加しました。食事の効果ではないかと推測します。最近、この比が増加傾向なのは、体重が増えてきたせいかも知れません(59kg台から61kg台)。昨年4月からの往復4時間通勤し、必然的に毎日歩く様になりましたが、この比の低下には寄与していない様に見えます。