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プロローグ
第1話
第2話 前編
第2話 後編
第3話 前編
第3話 後編-----------------------
ぶぅとぱおは、しばらく海岸沿いを歩いて行きました。海藻を食べたり、近くにあった草を少し食べてみたりしながら、二人は道を探して歩き続けました。
海に沈むおひさまを何度も眺めながらずぅっと歩いて行くと、小さな道を見つけました。
「道があるよ!行ってみよう!」
ぶぅが元気よく言いました。
二人が歩いて行くと、木がたくさん生えた場所へやってきました。
「わあ、森だ!果物がたくさんなってるよ!ぱおが大好きなりんごがいっぱいある!」
「本当だ!りんごがいっぱいだあ!!とってもおいしそう!」
ぶぅとぱおはよろこんで森に駆け寄りました。
「とまれ!」
突然、後ろから声がしてぶぅとぱおはびっくりして振り向きました。そこに立っていたのは、険しい顔をしたくまのおじいさんでした。
「わしの果樹園に勝手に入ろうとするとは、どういうことだ!」
「ごめんなさい、おじいさんの果樹園だって知らなかったの。てっきり、森だと思ってたから…」
ぶぅが一歩前に進み出て言いました。おじいさんはぶぅを睨みつけながら言いました。
「どういう事情があったって、わしの果樹園に勝手に入るなんてことは許さん。わしは、わしが許可した者以外は一歩たりともここから先へいれんようにしとるのだ。」
「あの、でも、ぼくたち、どうしてもこの先に進みたいんです。ずっとこの道を歩いてきたから…」
ぱおが少し控えめに言いました。
「いま言ったではないか。この先へ進んではならん。ここはわしの土地だ。わしが守ってきた場所なんだ。めちゃくちゃにされてたまるか!」
ぶぅとぱおは顔を見合わせました。二人とも、こんなに険しい顔をした動物にあったことがなかったので、どうしたらいいのかわからなくなりました。
「ぼくたち、なにもしないよ。ただ通りたいだけなんだ。」
「うそをつけ。いま、わしのりんごを食べようとしたではないか!」
「たしかに、はじめは森だと思ったから、このおいしそうなりんご、食べたいなって思ったよ。でも、もうあなたの果樹園だっていうことがわかったから、もう何も取ろうとしないよ。本当にただ、通らせてほしいだけなの。」
ぶぅとぱおは必死で頼みました。おじいさんは険しい顔をしたまま、二人をじっと見つめていました。
突然おじいさんの目が二人の首に止まりました。
「それは…もしかして…」
二人の首には、チャッピーにもらった貝殻のお守りがかかっていました。おじいさんがお守りのことを見ているとわかったぱおが言いました。
「これはお守りだよ。チャッピーっていうぼくたちの友達からもらった、宝物なんだ。」
「そうか、やはりあいつのだったか…」
「チャッピーを知っているの?」
ぶぅが聞きました。
「あいつはわしの知り合いさ。いや、知り合いなんてもんじゃない。あいつはたったひとりの友達さ。あいつは、わしの果樹園が大嵐にあったときにわしのこともこの果樹園のことも助けてくれたのさ。
わしはずっとひとりで暮らしてきた。ここいらの連中はわしに近づこうともせんかった。もちろんお前たちのような年の頃は、たくさんの仲間もいたが、わしは、ほかのくまといろいろあってな、うまくいかんようになってしもうた。もう誰も信じられなくなったんじゃな。だが、チャッピーだけは違った。
お前たちがまだ生まれる前だと思うがな、大嵐が来たんじゃ。ものすごい雨と、ものすごい風と、ものすごい雷。わしは、ただ洞穴に隠れて身を守るしかなかった。
すべてが去ったあと、ここへ戻ってきたら、わしがいままで大切に育ててきた木も、生まれてからずっと住んできた家も、すべてなくなっておった。わしは変わり果てた自分の土地をただ眺めておった。
呆然と立ち尽くしているわしの隣から突然、
『とんでもないことになっちまったなあ、じいさん。』
という声が聞こえた。
わしは、いつもここいらの連中に対して言っているように、
『お前のような若造に何が分かる、早く立ち去れ!』
と言おうとした。
だが、言葉にならなんだ。
あとからあとから涙が止まらんでなあ。
そしたらあいつが言いよった。
『誰にでも、心のふるさとがある。おいらのふるさとは、向こうの海辺さ。あそこもむちゃくちゃだよ。ひどいもんだぜ。いや、じいさんのふるさとも、おんなじだな。
だけど、こんなところで諦めてちゃいられねえぜ。おいらたちはふるさとをちゃあんと取り戻さなきゃ。なにがあったって、どこにいったって、おいらたちにとって、ここ以上に素晴らしい場所はねえんだからよ。』
とな。
わしはあいつの言葉を聞いてはっとした。いままで自分を守ってくれたふるさとを、今度は自分の手で守らなければ…とな。
その日からわしらは二人でこの果樹園と、むこうの海辺を前と同じように、いや、前よりももっともっと素晴らしい場所にしたいと思ったのだ。
わしはこれまで、誰にも頼らず、誰とも関わらず生きてきた。一人は寂しいもんだ。チャッピーと一緒に過ごして、わしはそのことに気づいた。あいつとの時間は宝物だ…。
そういえばあの頃、わしはこの場所を笑顔があふれる場所にできたら、と思っとったんだったなあ…
それなのにわしがこんな顔をしとったら、だめだな。」
そういうと、おじいさんは二人にほほえみました。
それは少しぎこちないものでしたが、二人はこんなに優しい笑顔はみたことがないと思いました。
「大切なことを思い出させてもらえたよ。ありがとう。いや、しかしチャッピーのことを知っておったとは。それにその貝殻をもらったとは。あいつは、滅多なことでは貝殻をやらんことにしとった。いやあ、無礼なことをして申し訳なかった。わしの作ったりんごをぜひ食べて行っておくれ。そうじゃ!ちょうど収穫しようと思うておったところじゃ。手伝ってくれんか?」
「もちろんだよ!ぼくたち、なんでも手伝うよ!」
そういってぶぅは木を見上げました。どの木もぶぅやぱおよりも大きくて、どんなに背伸びをしても取れそうにありませんでした。そんな二人を見ておじいさんは笑いました。
「すまんすまん、わしの木はよう育っとってなあ、背がふつうのりんごの木よりも高いんじゃよ。」
おじいさんはそう言いながら、はしごを持ってきました。
「わしは毎年これに登って収穫しとったんじゃが、ここ数年それもしんどくなってなあ。りんごはたくさんなるんじゃが、収穫できる量に限りが出てきてしもうた。じゃが、お前さんたちならきっとこのはしごも軽々登れるじゃろう?木にのぼってとってくれ。そしてこのかごへ入れておくれ。」
「まかせてよ!ぼく、のぼるよ!」
ぶぅがはりきって、はしごをすいすい登っていきました。
「ぼくは、力仕事が得意なんだ。ぼくがかごを持つね!」
ぱおがかごを背中に乗せました。
そして、りんごの収穫が始まりました。
後編へつづく...