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プロローグ
第1話
第2話 前編
第2話 後編-----------------------
ぶぅとぱおは海岸沿いを進んでいきました。海はおひさまの光を浴びて輝いています。
「海って本当に綺麗だね。」
「そうだね!チャッピーが言っていたみたいに、ここからいろんな場所につながっているんだよね。」
ぱおはそういうと、海の向こうに何か見えないか目を凝らしてみました。しかし、そこはキラキラ光る波がただ行ったり来たりしているだけです。
「もしかして、金色のお花畑にもつながっているかもしれない!」
ぶぅが突然大きな声で言いました。ぱおは驚いてぶぅを見つめました。
「この海の向こうに?」
「そうだよ!だって海は世界をつないでるってチャッピーが言っていたもの!」
「ねえ、ぶぅ。まさかこの海の向こうへ行くっていうの?」
ぱおがたずねると、ぶぅは笑顔でうなずきました。
「世界で一番綺麗な場所なんでしょ?だったら、この海の向こうにあるにちがいないよ!」
ぱおも、自信たっぷりなぶぅの様子を見ているうちに、だんだんそんな気がしてきました。
「よし、じゃあ行ってみる?あの海の向こう側へ!」
「うん!あの海の向こう側へ!」
二人は勢い込んで言いましたが、どうやってあの海の向こうへ行くのか見当もつきません。
「どうやって行けばいいんだろう?ぼく、こんな深いところ泳げないよ…」
ぱおは不安げに言いました。ぶぅも、小さくうなずきました。ぶぅは、水に濡れるのが得意ではないのです。そのとき、海の中から黒い大きな何かが浮かび上がってくるのが見えました。
「ねえ、あれはなんだろう?」
ぶぅがぱおに尋ねました。ぱおも首をかしげて、その黒いものをじっと見つめています。すると突然、大きな噴水のようにその黒いものから水があふれ出しました。
「うわああ!水が噴き出してる!」
ぶぅとぱおはびっくりして叫びました。すると、のんびりした穏やかな声が聞こえてきました。
「やあ、どうしたんだい?」
二人はあたりを見回しましたが、この黒いもの以外周りに何も見当たりません。
「ねえ、いましゃべったのは…きみ?」
ぶぅが、その黒いものに話しかけました。
「あぁ、ぼくだよ。こんにちは。今日はいい天気だね。」
黒いものはとても気持ちよさそうに言いました。
「こんにちは、ぼくはぶぅ。」
「ぼくはぱお。きみはだあれ?」
「やあ、ぼくはコウ。よろしくね。こんなところで何をしているんだい?」
「金色のお花畑を探して旅をしているの!」
ぶぅがチャッピーにもらった貝殻をにぎりしめながら言いました。ぶぅはチャッピーが使っていた旅という言葉がとても気に入ったのです。
「そうか、きみたちは旅人なのか。」
コウがキラキラした小さな黒い瞳で興味深げに二人を眺めました。
「ねえ、きみは何なの?」
ぶぅが真剣にそう尋ねると、コウは大きな声で笑いました。コウが笑うたびに、周りの波が立って二人に水しぶきがかかります。
「ぼくが何かって?ぼくはくじらさ!この海をすいすい泳いでる。のんきに暮らしているのさ。」
コウの水しぶきでびしょ濡れになりながらも、ぶぅはこの言葉を聞きのがしませんでした。
「すいすい泳いでる、だって?ぱお、コウに乗せて行ってもらおうよ!そうしたらすぐに着くよ!」
ぱおは、少し不安げに言いました。
「でも、ぼくたち二人が乗ったりしたら、コウは重くて沈んでしまうんじゃないかなあ?」
「大丈夫さ!ぼくは、とっても力持ちだからね!前に迷子になったイカを三十匹くらい、家まで運んでやったこともあるんだよ!」
コウは笑顔で請け合いました。ぶぅとぱおにはイカがどんなものか全くわかりませんでしたが、きっととても重いものなんだろうと思い、少し安心しました。
「本当?じゃあぼくたちを、海の向こうに連れて行ってほしいんだ!」
ぶぅが勢いよく言うと、コウは少し困った顔をしました。
「海の…向こう?」
「うん!向こう!」
ぶぅは笑顔で大きくうなずきました。
「きみたち、向こうだっていろいろあるじゃないか。ほら、西の方とか、南の方とか…」
二人には、コウの言っていることが全くわかりませんでした。
「にし…?」
「みな…み?」
そんな二人の様子をみて、コウが言いました。
「いいかい?きみたち。旅をするなら方角がわかっていなくちゃいけない。ほら、これをご覧。」
コウが見せてくれたのは、不思議な丸い箱でした。ふたは透明で中には赤と白の針が入っています。そして、コウが動かす度に、その中の針がくるくる回るのでした。
「これは…なに?」
「これは、コンパスさ。」
「こん…ぱす??」
「きみたちコンパスを知らない旅人っていうんじゃないだろうなあ!この針が、どこへ行ったらいいかを示してくれるのさ!」
「そうなの!?じゃあ、ぼくらが探しているお花畑がどこにあるか、わかるってこと?」
「あぁ。コンパスさえあればな!」
ぶぅは嬉しくなりました。
「じゃあ、コンパスさんに教えてもらわなくっちゃ!お花畑はどこ?」
コンパスの針は、くるくると回り、三人が今いる場所からちょうど、斜め前をさしました。
「わあ、やっぱり海の向こうにあるんだ!向こうへ行けば、お花畑に着くんだね!」
コウもコンパスをのぞきこんで言いました。
「よし、北だな!じゃあ、乗せて行ってやるよ。ほら。」
そういうとコウは後ろを向き、二人が乗りやすいように、砂浜にひれを出しました。二人はそのひれを伝ってコウの背中に登りました。コウの背中はつるつるしていてすべりやすかったのですが、平らになっていたので、二人は背中のてっぺんへ落ち着きました。
「いくぞ!それっ!」
コウは掛け声をかけて海の中を進んでいきました。二人がいた砂浜はだんだん遠ざかっていきます。海はおひさまの光を受けてキラキラ輝き、風は心地よく二人の間を抜けていきます。
「ねえ、コウはずぅっとここにいるの?」
ぱおが尋ねました。
「いいや。ぼくは、この広い海を、ずぅっと泳ぎ続けているのさ。そりゃあ一休みしたり、誰かと話をするために止まったりはするけどね。」
「じゃあ、この世界がどんなに広いか君はよく知っているんだろうなあ。」
ぶぅは少し羨ましそうに言いました。コウは少し考えてから言いました。
「そうだなあ…世界の広さはよく知っているかもしれないね。こうやってずぅっと泳ぎ続けているから、寒い海もあれば、暖かい海もあって、魚がたくさんいる海もあれば、あまり多くはいない海もあるということはよく知ってる。でも、たまに羨ましくなるときがあるんだよ。」
「何が羨ましいの?そんなにいろんなものが見られるっていうのに。」
ぶぅは首をかしげました。
「それはね、群れで楽しそうに泳いでいる魚たちを見た時や、自分の家があるタコのような生き物さ。彼らは自分の居場所があって、仲間がいて、いつもおしゃべりしている。ぼくはいつも一人だからね。気楽な時もあれば寂しい時もあるもんなんだよ。」
ぶぅとぱおは、一人でこの海の中を漂うことを想像してみると、不安な気持ちになりました。
「そっかあ。きみはとても勇敢なんだね!この海を一人で旅しているんだもの。」
ぱおは、コウの寂しさを考えると、いてもたってもいられなくなり、そっとぶぅに言いました。
「コウの寂しさを和らげてあげられるなにかいい方法はないかなあ?」
「ぼくもそれを考えていたんだ。ぼくたちがここにずっといるわけにはいかないし…。」
そうしてぶぅは少しの間考え込みました。しばらくしてぶぅは笑顔で言いました。
「海の中に、コウの仲間ができれば、寂しくないんじゃないかなあ?」
「それは素敵だね!でも、仲間ってどうやったらできるんだろう?」
二人は考え込んでしまいました。その時、二人の目の端にチラチラと何かが見えました......
後編へつづく...