私には海しか見えてなかった。
抜けるように碧いその海はあの日と変わらずどこまでも深く、深く・・・
そして水面の波はどこまでも、どこまでも・・・永遠に続いていっているように見えた。
あの日もみんなでココに立ち
「この波はどこまで続いてるんだろう」
「波は最後はどんなふうに消えていくのだろう」
と、たわいもない話で盛り上がった。
いつまでもいつまでも話が尽きることはなかった。
そう・・・
いつまでもあの穏やかで満ち足りた時間が
水面を駆ける波のように、いつまでもいつまでも続くと思っていた。
-「なにか面白いものでも見えるんですか?」
突然話しかけられ、一瞬それが私に対して向けられた言葉だとは思わなかった。
「えっ?」
「いや、随分長い間海を見つめているから、珍しいクジラかイルカでもいるのかと思って」
あきれるほどの明るい笑顔
思わず警戒を解きたくなるような人懐っこい雰囲気
・・・なんて幸せな人なんだろう
それが元(はじめ)の第一印象だった。
私は答えるべき言葉が自分の中に何一つないことに気が付いていた。
なんと答えればいいのか
取り繕うことすらできず黙りこむ私がいた。
「ねぇ、海の波ってどこまで続いていくか知ってますか?」
