【映画】『彼女は夢で踊る』雑感《ネタばれ含む》 | あるけみすとのつぶやき

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すとりっぷ♪劇場で感じたことを徒然なるままに…

 過日、新宿武蔵野館で映画『彼女は夢で踊る』を観てきました。いちストリップファンとして全国公開を心待ちにしていました。2019年の広島先行上映の評判や上映期間の延長、見た方のツイート等を見聞きするたびに、期待は膨らみました。そして4月の公開延期を経てようやく、10/31(土)21時の回と11/1(日)10時の回の2回、念願の鑑賞と相成りました。期待を遥かに上回る良作でした。映画としての素晴らしさはもちろん、スト客としてのこれまでの体験とシンクロする部分も多く、これまで通った劇場や、会うことが叶わなくなった踊り子さんのことを連想するシーンも多々有りました。
 そこで備忘録を兼ねて、“雑感”を思いつくままに記したいと思います。主に“スト客”目線での感想になるかと思いますが、読んでいただければ嬉しいです。なお、ネタばれを含むかと思うので、「先入観無しに映画を観たい」方は、映画鑑賞後に読んでいただければ幸いです。また、役者さんの敬称を一部省略していることをご了承下さい。

【信頼できる映画】
 本作品で描かれている「ストリップ」は、現実のストリップをかなり正確に描いていると思います(「全て」とは言いません)。実在のストリップ劇場を舞台にしているというだけでなく、よく取材した上で制作されたのだろうと思います。
 ストリップをモチーフとした作品は(悪意の有無に関わらず)ある種の“思い込み(偏見)”、または演出上の“改変”がされる場合が多いと感じます。またそれが現在のストリップへの“誤解”を広げることに、ファンとして忸怩たる思いをする事がありました(影響力のある作品のときは特に)。その意味で、本作品はストリップを知らない人にも(ストリップファンとして)安心して勧められる作品だと思いました。

【街の風景】
 まず冒頭の、劇場までの薬研堀の街の風景に惹き込まれました。その風景は、晩翠通りから国分町の路地を抜けて仙台ロックにたどり着くまでの風景によく似ていました。仙台ロック(2016年閉館)は自分が一番多く通った劇場です。閉館後はめっきり足を運ぶことがなくなりましたが、当時の記憶が鮮やかに蘇りました。
https://youtu.be/GujtrDi_3i0


【劇場入り口の風景】
 ロビーから場内への、映画館のようなぶ厚い臙脂色の防音扉を見て、船橋の若松劇場(2013年閉館)を思い出しました。映画館のような防音扉の劇場は他にもあるのですが、(比較的)広いロビーと扉前にソファーがあって、(写真の木下のように)腰掛けて開演を待った記憶が蘇りました。(なお、約10年前に一度訪れただけなのでうろ覚えですが、名古屋のライブシアター銀映(2010年閉館)もこんな感じのロビーだった記憶があります。)

【大鏡】
 “噂”に聞いた広島第一劇場の“大鏡”を、映画の中で確認できました。大きいとは聞いていたのですが、あれほどとは思いませんでした。それも上下二段になっているとは…(驚)。劇中でも、サラの踊るシーン、盆前で木下(犬飼)が前社長から「社長をやってみないか」と言われるシーン、そしてラストで木下(加藤)が盆上で踊るシーンのそれぞれで、演者さんが様々な角度で鏡に映る映像は素敵でした。特に、信太郎(犬飼)が初めてストリップを見るシーンで、椅子に腰掛けながら茫然とステージを見つめる信太郎と、ステージで踊るサラが一つの画面に映し出されたシーンはゾクッとしました。ぜひ広島第一劇場で“本物”を見てみたいと思いました。(因みにライブシアター栗橋や蕨ミニ劇場にも場内側面の鏡があり、そこに映る演者さんを鏡越しに見るのが個人的に大好きです)。

―以下ネタばれ含む―
※上記をご理解の上で、読んでみたい方は下にスクロールして下さい。






























【岡村いずみさん(サラ/メロディー)】
 加藤雅也さんや犬飼貴丈さん(感想ツイートには犬飼ファンの女性もかなり多いですね)など魅力的な出演者の多い本作品ですが、やはり一番惹かれたのは岡村いずみさんです。コケティッシュで奔放で、危なっかしくて放っておけないサラに惹かれました。クールなメロディーとの演じ分けにも感心しました。
 あと、スタイルの良さも魅力的でした(←スト客脳(笑))。バーでサラが信太郎に出会ったシーンの、服の上からも判る綺麗なバストライン、ストリップのステージや河川敷でのダンスシーンで魅せるウエスト(というか腹筋)の美しさにドキドキしました(照)。

【知ってる(?)出演者】
 矢沢ようこさんはもちろんですが、ゴトウイズミさんやコハルさん、ホノカさんをスクリーンで見つけたときはびっくりしました(笑)(ようこさん以外は事前情報がなかったので)。「もしや…」と思い、エンドロールで名前を見つけ、もう一度確認したかったのも“二回目”鑑賞の理由(の一つ)だったのはヒミツです(*´艸`)。

【胸に迫るシーン】
 サラの「誰とも上手くいかない」というセリフにはグッときました。ストリップ劇場には踊り子さんにも客にも(多かれ少なかれ)今の世の中に“生き難さ”を感じている人が多い気がします。そして、その“生き難さ”を劇場が癒やしてくれているような気がします。それが「ストリップ劇場に通う理由」の一つと思いました。 
 また、サラがステージを2日残して劇場を去るシーンも切なかったです。引退公演もなく、いつの間にかステージを去っていった踊り子さんを思い出してしまいました…。

【“エンゼル・ハート”】
 この映画の大きな“ミステリー“はメロディーの「正体」です。この“ラスト”を観客に抵抗無く受け入れさせるために、時間と登場人物が複雑に交錯する事で醸し出される不可思議な雰囲気が必要だったとさえ思われました。
 メロディーの「正体」を知ったときに連想したのが、映画『エンゼル・ハート』でロバート・デ・ニーロ演じる「ルイス・サイファー」でした(正邪は逆ですが(笑))。古い映画ですが、個人的に好きな映画なので興味がある方は見てみて下さい。


【不満】
 大満足な本映画なのですが、残念(というより許せない)シーンが一つだけありました。それは“ガ○入れ”のエピソードをコミカルに描いたシーンです。
 (自分は伝聞でしか知りませんが)“ガ○”で捕まるのは店側だけでなく踊り子さんもです。それが(直接・間接の)理由でステージを去った踊り子さんもいます。また、“ガ○”による営業停止によって経営状態が悪化して閉館した劇場もあります。そのことを考えると、“シャレや冗談”では描いて欲しくはなかったです。