「桜 百音さん」平泉の喉から発せられた乾いた振動が、太陽の鼓膜を震わせる。
「なんてハードルの高いフルネームなんだ………実際走ったらハードル全部倒してゴールだな………」
「はーーーい」と可愛らしい声を出して、トコトコ歩いて、教卓に登る時は軽くジャンプして両足で着地した。
太陽は一瞬で見抜いた。
「こいつ、とんでもない、ぶりっ子………」と。
「はじめまして!💕あたしの名前はーさくらももねって言います!💕さくらは花の桜でー、ももねは数字の百に音って書きまーす!💕」
なんだ、この💕は………ただ俺は聞いているだけなのに脳内に💕が飛び込んでくるぞ……こいつプロのぶりっ子だ…
「好きな俳優はー高橋一生さん💕それと佐藤二朗も好き!💕」
なぜ後者は呼び捨てなのか…
「みーんなと仲良くなりたいです💕よろしくお願いしまーす💕」
自己紹介が終わった百音がお辞儀をすると、男子たちが少し騒ついた。無理もない。百音はブラウスの下に着ているシャツを第2ボタンまで開けているのだ。谷間までとはいかないが、胸か否かのグレーゾーンが丸見えなのだ。男子高校生はこれだけで興奮するのだから、怖い獣だ。
そして百音が教卓から降りようとする時、登る時と同様に両足でジャンプした。
予想通り短いスカートが一瞬フワッと舞い上がり、綺麗なももの上半身が顔を出した。ももなのか上半身なのか顔なのか分からないが、とにかく男子全員、今立ち上がることは不可能、あるいは少し背中を丸めてポジションを修正するものもいるだろう。
その時太陽は席に向かって歩く百音の顔を凝視していた。他の男子たちは百音の身体を見続けているが、太陽は「今クラスの男全員に身体を見られているのをわかっているお前はどんな表情をしているんだ(´・ω・`)」と持ち前の変態性を発揮していた。
そこで太陽はあることに気づく。百音はチラチラと何かを見ていたのだ。百音の目線の先には………龍二!
「あの入学式のイケメンを見てやがる!今の自己紹介とラッキースケベは全てはそいつへのアピールだったのか!」
なぜか勝手に敗北感を味わう太陽であった。