昔、コミックスで読んでいた人気漫画「寄生獣」が、『永遠の0』、『STAND BY ME ドラえもん』の山崎貴監督の手で映画化されました。

本作『寄生獣』の主人公は、右手に寄生生物がとりついた少年・泉新一。
染谷将太が見事な演技力で演じています。

一度はハリウッドに映画化権が渡ったこの作品ですが、やはり日本で映画化されたのは正解。
日本の現状や日本の抱える問題をそのままに描き出しているこの物語、日本で映画化された方が、そのテーマをきちんと表現できるというもの。
日本で作られた本作、SFXもアクションも見事な出来だと思います。


<STORY>
高校生の泉新一がウトウトしていた時、半透明の不思議な生物が身体の中に入ろうとしてきた。右腕から入り脳まで行こうとするのをなんとか食い止めたものの、その生物は新一の右手に寄生し、ミギーと名乗るようになる。実は多数の人間がミギーと同種の寄生生物に脳を乗っ取られ、人間を捕食するパラサイトとなっていた。新一の高校にやって来た田宮良子という教師もパラサイトだったが、彼女の仲間のパラサイトに新一の母親が身体を乗っ取られてしまう…。


<Cheeseの解説>
岩明均の人気漫画「寄生獣」が二部作として映画化されました。
本作『寄生獣』は、その前編に当たります。

本作で描かれているのは、新一少年の右手にミギーが寄生し、彼がミギーを受入れ、変化していくところまで。
新一はミギーと一心同体になったことによって、肉体的に、そして精神的にも変化していきます。

彼は、「どこからかやって来た不思議な寄生生物が人間に寄生し、人類を捕食しながら生きている」という事実を身を以て知る、唯一の人間。
人類、そして寄生生物、どちらの立場でもあり、どちらの立場でもない。
そんな唯一の存在として、寄生生物と戦う運命を得る…。

普通の少年が右手にスーパーパワーを得て、たった一人で“自分と同種でもある”強大な敵と立ち向かう…。
そう言った意味では、新一はピーター・パーカーでもあり、カル・エルでもあると言えるでしょう。

『寄生獣』前半の本作は、泉新一が戦う自覚を持ち、その能力を開花させるまでの物語。
ダークヒーローとなった彼が、組織的にネットワークを広げた寄生生物たちと戦いを繰り広げる完結編、今から楽しみでたまりません。


『寄生獣』(109分/日本/2014年)
公開:2014年11月29日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:岩明均
製作:市川南/中山良夫
監督・VFX:山崎貴
脚本:古沢良太
出演:染谷将太/深津絵里/橋本愛/東出昌大/岩井秀人/山中崇/オクイシュージ/池内万作/豊原功補/大森南朋/北村一輝/余貴美子/國村隼/浅野忠信/螢雪次朗
声の出演:阿部サダヲ
公式HP:http://kiseiju.com/



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紙の月 オリジナル・サウンドトラック
以前、原田知世主演でドラマ化もされた角田光代の小説「紙の月」。

この物語が吉田大八監督の手によって宮沢りえ主演で映画化されたのが、本作『紙の月』です。

1997年のバブル崩壊直後、お金を扱う銀行で、多額のお金と接するうちに、タガが外れてしまった女性を宮沢りえが涼しげに演じています。
満ち足りているような、どこか欠落しているような、欠落感すら欠落しているような。
すべてを持っているような、何も持っていないような…。
業が深い女性を演じさせると、彼女は本当に光りますね。


<STORY>
1997年、わかば銀行の契約社員として渉外係を務める主婦の梅澤梨花は、優しいが鈍感な夫に物足りなさを感じていた。梨花は、優良客である独居老人の平林の家を訪ねた時、大学生の孫の平林光太と出会い、彼と付き合い始めるのだった。ある日、梨花は光太が学費のために借金していることを知る。顧客の金に手をつけた梨花は、彼に200万円を渡すのだった。信用を利用し横領を重ねた梨花は、光太と高級ホテルやマンションで豪遊を続け…。


<Cheeseの解説>
宮沢りえ演じる、何不自由ない生活を送っているはずの女性・梨花が、池松壮亮演じる大学生・光太との出会いをきっかけに、転落、疾走していく様を描いた本作。

時は1997年、バブル崩壊直後。
なんだかんだ言っても“お金”がまだ世間に多く流通し、“お金がある”人や“贅沢な暮らし”がまだ身近にあった時代。

そんな時代の中で「あ、私もガマンなんてしなくていいんだ」「やりたいことをやるのは、悪いことじゃないんだ」と気付いたしまった梨花は、ガマンせずに勤務先の銀行のお金を横領し、若いツバメの光太に貢ぎ、贅沢な暮らしを始めます。
高級ホテルの豪華なスイートルームで週末を過ごし、高級ブランドで山ほどの買い物をし、贅沢なマンションで光太を養い…。


直接に彼女の欲望を呼び覚ましたのは、池松壮亮演じる年下の恋人・光太です。
彼の借金をなくしてあげたい、彼に楽しい思いをさせてあげたい、贅沢な生活をして彼を喜ばせたい…、そんな想いが彼女を横領に走らせたのです。

でも、彼女に横領の道を選ばせたのは、光太だけではありません。

田辺誠一演じる夫の正文は、梨花の仕事など腰掛けにすぎないと無意識のうちに見下し、彼女が感じている自己承認感を優しい言葉で全否定します。

大島優子演じる、若手女性銀行員・相川恵子は「ちょっとした操作は誰でもやっている」と、横領が可能なこと、それほど大それたことではないことを彼女に示唆します。

そして小林聡美演じるベテラン女性銀行員・隅より子は、「様々な楽しみをガマンして真面目に働くことで何が得られるのか」という問いを、無意識のうちに梨花に植え付けるのです。

夫の正文、相川恵子、隅より子によって蒔かれた種は、梨花の中で時を重ね、光太との出会いによって発芽し、大きく成長していくのでした。。。


バブルに受かれ、お金に躍らされた人が多く存在した1990年代末期。
環境や金銭的に恵まれている人が多かったからこそ、自分の中の“空虚さ”に気付く人も多かったのかもしれません。
バブルが崩壊し、景気が低迷する現代では、彼女のようにまっすぐに欲望に向かって疾走できる女性は少ないのかもしれません。


『紙の月』(126分/日本/2014年)
公開:2014年11月15日
配給:松竹
劇場:全国にて
原作:角田光代
監督:吉田大八
出演:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/近藤芳正/石橋蓮司/小林聡美/伊勢志摩/佐々木勝彦/天光眞弓/中原ひとみ/平祐奈
公式HP:http://www.kaminotsuki.jp/


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マダム・マロリーと魔法のスパイス (集英社文庫)
スティーヴン・ナイトが脚本を担当し、ラッセ・ハルストレムが監督、さらにはA・R・ラフマーンの音楽が物語を盛り上げる映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』。
しかも主演がヘレン・ミレンと来たら、この座組で面白くないわけがない…。

『マダム・マロリーと魔法のスパイス』、まさに想像どおりに面白く、優雅な中にもスパイシーでパンチの効いた素晴らしい味わいの映画でございました。
フランス料理とインド料理、フランス美女とインドイケメン、素敵なマリアージュを堪能できる一作です。


<STORY>
インドから移住してきたカダム一家は、南フランスの山間の街でインド料理店“メゾン・ムンバイ”を開店。しかし、店の向かいには、マダム・マロリーの経営するミシュラン一つ星のフランス料理店“ル・ソール・プリョルール”があった。パパとマダムはお互いに敵意を燃やすが、カダム家の次男・ハッサンはフランス料理を教えてくれた女性スーシェフ・マルグリットに惹かれていく。やがてハッサンはマダムの店で働き始め、料理人としての才能を目覚めさせていく…。


<Cheeseの解説>
南フランスの山間部で、20年間の歴史を誇るミシュラン一つ星のフランス料理店“ル・ソール・プリョルール”。
経営するのは、ミシュランの星数を増やすことに執念を燃やす孤高のマダム。
優雅なクラシック音楽とともに、シェフの一皿をゆっくりと味わうことができます。

その向かいにあるのは、インドはムンバイから移住してきたインド人一家が経営するインド料理店“メゾン・ムンバイ”。
自分のポリシーは曲げないけれど、話のわかる大らかなパパが陽気に迎えてくれる家族経営のお店です。
大音量で流れるボリウッド音楽と人びとの喧噪、インドのお城を思わせるパネルとカラフルな電飾が、まるでムンバイの街角にいるような気分にさせてくれるお店です。

こんな正反対の二つのお店の間で巻き起こる、仁義なき戦い、そして愛を描いたのが、この映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』。

自らの築き上げたお店に絶対的なプライドを持つ二人の店主はいがみあっているけれど、その二人の下では若い二人のシェフが愛を築いていき、それらをきっかけに二つのお店の関係性は変わっていきます。
やがて、二つの店はそれぞれの歴史や個性を認め、尊重しあえるようになるのです。

この映画を観ていて印象的なのは、インド料理の若きシェフ・ハッサンに象徴される「イノベーション」という言葉。
絶対的な味覚と、長い歴史を持つ様々なスパイスにを知る彼は、深い“味の記憶”を持っています。
そんな彼が、インド料理だけに飽き足らず、フランス料理を志し、さらにはそこをも越え、エル・ブリのような分子料理などに挑戦し、新たなる味を追求していくのです。
そんなイノベーションの象徴のような存在のハッサンが一番最後に何を選ぶのか…、それは監督のラッセ・ハルストレムが選んだ答えなのかもしれません。

リスボンに生まれ、スイスで育ったアメリカ人の作家リチャード・C.モライスが著した原作小説を、イギリス出身のスティーヴン・ナイトが脚本化し、スウェーデンの生まれのラッセ・ハルストレムが監督を手がけ、インド出身のA・R・ラフマーンが音楽を担当した本作。
ロシアの血をひくイギリス人女優ヘレン・ミレンやインド人俳優オム・プリに、アメリカ出身のマニッシュ・ダヤル、フランス女優のシャルロット・ルボンが見事にその世界を体現し、お互いの個性をスパイシーに主張しながらも、見事な調和を見せてくれています。

様々な出自を持つ人びとが、一丸となってひとつの作品を作り上げていく、現代の映画界を象徴するような素敵な一作でした。


『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(122分/アメリカ/2014年)
原題:The Hundred-Foot Journey
公開:2014年11月1日
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
劇場:全国にて
原作:リチャード・C.モライス
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:スティーヴン・ナイト
音楽:A・R・ラフマーン
出演:ヘレン・ミレン/オム・プリ/マニッシュ・ダヤル/シャルロット・ルボン/ミシェル・ブラン/アミット・シャー/クレマン・シボニー/ヴァンサン・エルバズ/アントワン・ブランクエフォート
公式HP:http://www.disney.co.jp/movie/spice.html


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