1990年という、バブル末期の時代を舞台に、ある中学校で起こった一つの転落死をめぐるドラマを描く『ソロモンの偽証 前篇・事件』。

いかにも“宮部みゆき原作の映画”、という雰囲気で、決して派手派手しくなることなく、どこにでもいそうな庶民の生活の中で起こった事件を地に着いた演出で描いています。

パーソナルコンピューターもそれほど普及しておらず、手紙などをワープロで書き、「まんが日本昔ばなし」が放送されていたあの時代。
携帯電話なんかもなかったし、ニュースと言えばテレビか新聞で知るものだったあの時代。

劇中の生徒たちと同世代の私としては、彼らの家の中の雰囲気や時代の空気がとても懐かしいものに感じてしまいました。
特に永作博美演じる母親のソバージュと前髪。なつかしすぎる。。。

生徒たちの演技や成島出監督の演出ももちろん素晴らしく、物語に引き込まれたのですが、物語の大筋に関係のない枝葉の部分でも、思わず感動してしまったのでした。


<STORY>
1990年、バブル景気も終りに近付いていた頃。中学二年生の藤野涼子は、クリスマスの朝に級友の柏木卓也の死体を発見する。柏木の死は自殺とされていたが、涼子と校長のもとに「柏木は自殺ではなく、大出俊次という生徒に殺された」という匿名の告発状が届いた。学校と警察は告発状の件を伏せていたが、マスコミに漏れてしまう。やがてその告発状を書いたと疑われた生徒の一人が事故死する。涼子は事件の真相を暴くため、学校内で裁判を開くことを決意する。


<解説>
宮部みゆきが構想15年、連載9年という時間をかけて執筆し、彼女の最高傑作とも言われる原作小説を、『八日目の蝉』の成島出監督が映画化した本作。

“学校内裁判”がモチーフとなるこの作品ですが、この作品では“前篇・事件”という副題そのままに、事件の模様のみ、“学校内裁判”が始まるまでを描いています。
起承転結で言うと、“起承”の部分しかないわけですが、121分間まったく飽きさせないのは、成島出監督の演出と編集、そして中学生たちの真摯な演技ゆえでしょう。


この作品に出演する生徒たち、応募者総数一万人という一般公募を含むオーディションで選ばれたメンバーだそう。
オーディションでは約2ヶ月にわたってワークショップが行われ、春休みを利用しての集中トレーニングまであったそうで、その合宿を通して本当のクラスのようにメンバーたちがまとまったそう。
そのおかげか、いかにも“子役”という感じの子や、いかにも“アイドル”という子がおらず(E-girlsの子もいますが、いい意味でアイドル感皆無です)、普通の中学校にいる普通の中学生、という雰囲気の子ばかり。
そのあたりが、物語の信憑性を強くしているというか、作り物感を弱めています。

そんな生徒たちの中心人物で主人公を演じるのは、藤野涼子。
彼女はこの作品がデビュー作で、さらに役名をそのまま芸名として活動していくそう。

この彼女、美少女ではあるのですが、地味な感じで“まだ磨かれていない原石”な感じ。
しかも、デビュー作にも関わらず、ドスの利いた声で、大人の俳優たちを相手に、迫力たっぷりの演技を見せています。
特に、安藤玉恵との対決シーンはお見事です。
彼女はかなりの大物女優になりそう。。。

他にも、板垣瑞生くんの美少年っぷりや清水尋也くんのあの時代のヤンキーファッション、前田航基くんのイケてないけどいい人キャラ、富田望生ちゃんの切ないおデブキャラ、西村成忠くんの秀才メガネキャラなど、みんないい演技を見せています。
演技経験の少ない若手ですが、自分だけが目立とうというのではなく、作品の一部として役になりきっている姿は素晴らしいと思います。


前篇だけでは何も謎が解明されないので、物語としては中途半端で終わってしまう“前篇・事件”ですが、彼らの見事な演技と冴え渡った雰囲気の演出で充分楽しめる映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』。
この作品を観たら“後篇・裁判”が待ち遠しくてたまらなくなるはずです。


『ソロモンの偽証 前篇・事件』(121分/日本/2015年)
公開:2015年3月7日
配給:松竹
劇場:全国にて
原作:宮部みゆき
監督:成島出
脚本:真辺克彦
音楽:安川午朗
出演:藤野涼子/板垣瑞生/清水尋也/富田望生/石井杏奈/前田航基/望月歩/西畑澪花/若林時英/西村成忠/加藤幹夫/石川新太/佐々木蔵之介/夏川結衣/永作博美/黒木華/松重豊/大河内浩/小日向文世/尾野真千子/田畑智子/安藤玉恵/木下ほうか
Official Website:http://solomon-movie.jp/


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ストロボ・エッジ 映画ノベライズ みらい文庫版 (集英社みらい文庫)
『さよなら歌舞伎町』、『娚(おとこ)の一生』と、公開が続く廣木隆一監督の監督作。
この廣木監督の作品が、またもう一作公開されます。
それがこの映画、『ストロボ・エッジ』。

『娚(おとこ)の一生』がアラサー、アラフォー女性のファンタジーだとすれば、この『ストロボ・エッジ』は女子高生のファンタジー。

「こんな恋がしたい」
「こんな制服デートがしたい」
「こんな風に好きな人と電車に並んで座って、彼の肩で眠っちゃったりしたい」

などという女子高生が望む恋愛模様を、キラキラと再現してくれています。



<STORY>
同級生の一ノ瀬蓮を好きな木下仁菜子は、学校帰りに駅で蓮に告白する。「彼女がいるから」とフラれてしまうが、友だちとして付き合って欲しいと言うのだった。やがて新学期、高校2年生になった二人は同じクラスになる。その頃、蓮の年上の恋人・麻由香は、父親の再婚に悩んでいた。蓮はそんな麻由香を支えるため、麻由香に会いに行っていたのだが、疲れから倒れてしまう。そんな蓮を偶然通りかかった仁菜子が看病し、二人の距離は近付いていく。


<解説>
この『ストロボ・エッジ』、原作は咲坂伊緒の同名人気コミックです。
咲坂伊緒と言えば、つい最近三木孝浩監督の手で『アオハライド』も映画化されましたね。

この『ストロボ・エッジ』と>『アオハライド』、物語の構成はよく似ています。
この二つの物語、どちらも主人公の女の子には好きな同級生の男の子がいます。
でも、その彼には他に大事な女の子がいて、傷ついているその彼女をほっておくわけにいかず、主人公の女の子と付き合うまでに逡巡がある…、というパターン。

でも、『アオハライド』に比べると、この『ストロボ・エッジ』で主人公に与えられる試練はずいぶんマイルドです。
なんと言っても、『アオハライド』のライバルは超強力で、なおかつ「親を亡くす」というとてもつらい経験をした少女。
傷つき度合いも強いし、そりゃあ男の子も簡単にほっぽり出すわけにいきません。

それに比べて、この『ストロボ・エッジ』のライバルである麻由香は、「両親が離婚し、父親が他の女性と再婚することで悩んでいる」というだけですからね。。。
もちろんそれだって辛いのでしょうが、親を亡くす体験に比べたら、やはり弱過ぎます。


というわけで、この『ストロボ・エッジ』は『アオハライド』に比べて、随分主人公に与えられた試練が軽くなっていると言えるでしょう。
それで、映画の中で何が描かれているかというと…、主人公二人の気持ちが近付いていく“過程”です。

好きな人と一緒に行く買い出し。
好きな人と一緒の電車で帰る放課後。
好きな人と一緒に行く鎌倉遠足。
好きな人と一緒に準備する学園祭。

いやもう、楽し過ぎるでしょ!
二人で笑い合ったり、ひとつのイヤホンを分け合って同じ曲を聞いたり、彼のパーカーを借りて着たり、そんな日常のひとつひとつが、二人の距離を縮めていくのです。
いやもう、まぶしい。まぶしくてみれへんわ!
私も高校生に戻って、こんな恋がしたい! 制服デートしたい!

福士蒼汰と有村架純という今を時めく二人が、高校生のピュアな恋をみずみずしく描いた本作、アラフォーの私が観ると、思わず取り乱してしまうほど、キラキラしたラブストーリーでした。

廣木隆一監督、こんなに連続して女性が夢見る恋愛ファンタジー作品を監督し、しかもまったく違うテイストを味わわせてくれるとは…。
今後、ファンタジスタと呼ばせてください。


『ストロボ・エッジ』(116分/日本/2015年)
公開:2015年3月14日
配給:東宝
劇場:全国にて
原作:咲坂伊緒
監督:廣木隆一
出演:福士蒼汰/有村架純/山田裕貴/佐藤ありさ/入江甚儀/黒島結菜/小篠恵奈/松尾薫
Official Website:http://www.strobe-movie.com/


『ストロボ・エッジ』オリジナル・サウンドトラック
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ストロボ・エッジ 映画ノベライズ みらい文庫版 (集英社みらい文庫)
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娚の一生 (小学館文庫)
“娚”。
この漢字、音読みで「ネン」「ダン」「ナン」、訓読みで「のう」「めおと」と読むそうです。

なぜこの映画『娚(おとこ)の一生』はこの漢字を使っているのか、なぜこのタイトルなのか…。
原作も読んだんですが、特に説明がありませんでした。

うーん、男のような女の一生、ということ?
男と女の一生、ということ?
女と男が出会って、それからの一生、ということ?
多分、そのどれでもあるような気がしますね。。。



<STORY>
東京での暮らしに疲れ、田舎の祖母の家で暮らし始めた堂薗つぐみ。入院していた祖母が亡くなりひとりぼっちになったある日、祖母の家の離れから彼はかつての祖母の教え子だったという50代の男、海江田醇が現れる。いつでも好きに使っていいと離れの鍵を預かっていたという。強引に離れで暮らし始めた海江田は、やがてつぐみと母屋で一緒に食事をするように。海江田に自分を大切にしていないと叱られたつぐみは、彼を男として意識し始め…。


<解説>
【チラシ付映画パンフレット】 『娚(おとこ)の一生』 出演:榮倉奈々.豊川悦司.向井理
都会で男以上にバリバリ働いていたキャリアウーマンが、不倫や仕事につかれ、田舎に帰る。
そこで、“そのままの自分”を愛してくれる人に言いよられ、やがて結婚する…。

そんな“よくある話”を描いた西炯子の同名コミックスを『余命1ヶ月の花嫁』の廣木隆一監督が映画化した本作。

プロット自体はよくある話ではありますが、ディテールはかなり凝っています。

本作の主人公・つぐみが出会うのは、かつてつぐみの祖母に恋をしていたという、50代の大学教授。
そんな地位も名誉もある男性が、年甲斐もなく「恋をしてしまった」と自分に迫ってくるのです。
失うものも何もなく勢いだけで突っ走る若い男ではなく、充分に理性と知性を持っているそんな年上男性が、そんな理性を忘れて自分に迫ってくるなんて…、ある意味、妙齢の女性にとっては年下男性にモテることより、うれしいことかもしれません。

しかも、豊川悦司演じるこの大学教授、ずうずうしく押しが強く、さらに京都弁。
つかみどころもなく、反論を柳のように受け流し、するりと女性の懐に入ってきます。
こういう“知性があって一枚上手な年上男性”が自分だけに子どもっぽく甘えてみせたりするなんて、妙齢女性としては落ちないわけがないじゃないですか。。。

主人公のつぐみを演じているのは1988年生まれで27歳の榮倉奈々なので、妙齢というには多少早いのですが、この作品『娚(おとこ)の一生』は、まさにアラサー、アラフォーの妙齢女性のファンタジーをそのまま映画化した物語と言えるでしょう。

それにしても、トヨエツのロマンスグレーと京都弁、なんとも素敵過ぎます。
彼と比べたら、つぐみの不倫相手役の向井理も、小僧にしか見えません。
あんな大学教授、どこかに落ちてないかしら。。。



『娚(おとこ)の一生』(118分/日本/2015年)
公開:2015年2月14日
配給:ショウゲート
劇場:全国にて
原作:西炯子
監督:廣木隆一
脚本:斉藤ひろし
音楽:遠藤浩二
出演:榮倉奈々/豊川悦司/安藤サクラ/前野朋哉/落合モトキ/根岸季衣/濱田マリ/徳井優/木野花/向井理/坂口健太郎/美波/岩佐真悠子/紺野千春/朝倉えりか/若林瑠海
Official Website:http://otokonoissyou-movie.jp/


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