セッション
第87回アカデミー賞で助演男優賞(J・K・シモンズ)、編集賞、録音賞の3部門を受賞した映画『セッション』。
いやまさに、助演男優賞、編集賞、録音賞、このどれをとってもアカデミー賞にふさわしい、圧巻の一作でした。

この映画、一言で言えば、至高のジャズを目指す音楽教師と、彼に指導を受けるジャズドラマーの真剣勝負の物語。
優れた芸術と言うものは、常人とはかけ離れた人たちだからこそ作り出せるものであるわけで…。
まさに常軌を逸した指導ぶりを見せる狂気の音楽教師、そして彼が作り上げたジャズドラマーが到達する高みを、恐ろしく張りつめた映像と、素晴らしい音響で描いています。

いやー、デイミアン・チャゼル監督には、中途半端な芸術家には決して言ってはいけない、芸術家を堕落させるあの二文字の言葉を贈りたいです。
いやー、素晴らしかった!



<STORY>
ニーマンは全米屈指の名門音楽学校シェイファー音楽院に入学し、ドラムを学んでいた。ある日、ニーマンはフレッチャー教授に目を留められ、彼の指揮する“スタジオ・バンド”に招かれる。しかし、フレッチャーは少しのテンポの違いを責め、ニーマンに何時間も同じ演奏を続けさせた。3人のドラマーの中で主奏者になるため、ニーマンはまさしく血のにじむような努力を続ける。ある日、ニーマンは主奏者としてあるコンテストに出るはずが、交通事故に遭ってしまう…。


<解説>
ジャズドラマーと音楽教師の真剣勝負を描くこの映画、実はデイミアン・チャゼル監督の自伝的な物語なのだとか。
ニュージャージー州のプリンストン高校でジャズドラマーとして活躍していた彼は、地元の英雄である音楽教師に厳しい指導を受け、その経験がトラウマのように記憶に残っているそうです。
(彼が音楽の道をあきらめたわけですが、その後あのハーバード大学に入学しているわけで、どちらにしろ、とても才能あふれる人ですね。。。すごい。)

その監督の若き日のような主人公・ニーマンを演じるのはマイルズ・テラー。
ちょっとボーッとした感じの、頼りなさそうな男の子です。
そして、そのニーマンを鍛える鬼教師を演じるのは、J・K・シモンズ。
恐怖で生徒たちを支配し、芸術のためなら人権無視、コンプライアンス無視、至高の音楽のためなら才能のない者は潰れてもかまわないという芸術至上主義のフレッチャー教授を鬼のような迫力で演じています。
あのスキンヘッドの頭と逞しい二の腕という異形と紙一重の外見を持つ人に、あのギョロっとした目玉で睨まれ、畳み掛けるように大声で恫喝されたら、これは確かにトラウマにならずにはいられません。


威圧感たっぷりのフレッチャー教授は、恐怖でバンドを支配し、生徒たちを屈服させます。
そして、そのターゲットとなったニーマンは、そのフレッチャーの指導を得て、まさに寝食を忘れるほど音楽に打ち込み、憑かれたかのようにその才能を開かせていきます。

しかし、それ故にフレッチャーとニーマンの真剣勝負は、抜き差しならないものになっていきました。
ドラムに憑かれたニーマンは、精神的に壊れてしまいます。
そして、その結果、フレッチャーも自らの拠り所を失ってしまうことになるのです。


そんな“音楽に憑かれ、音楽にすべてを賭けた”二人が再び出会った時、どんな化学反応が起こるか…。
この映画の結末は、まさに“化学反応”です。

それは、音楽に命を懸けた者同士だからこそ到達できた、高みと言えるでしょう。
どんなにお互いを否定し、傷付け合い、人格を否定していたとしても、音楽だけは否定できない。
至高の音楽が、すべてを肯定していく…。

そんな化学反応の瞬間は、一般人にはなかなか立ち会えるものではありません。
『セッション』は、そんな一般人にもその至高の瞬間を体験させてくれる、素晴らしい映画でした。


『セッション』(107分/アメリカ/2014年)
原題:Whiplash
公開:2015年4月17日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ新宿ほか全国にて順次公開
製作総指揮:ジェイソン・ライトマン
製作:ジェイソン・ブラム/ヘレン・エスタブルック/ミシェル・リトバク/デビッド・ランカスター
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー/J・K・シモンズ/ポール・ライザー/メリッサ・ブノワ/オースティン・ストウェル/ジェイソン・ブレア/カヴィタ・パティル/コフィ・シリボー/スアンネ・スポーク/エイプリル・グレイス
Official Website:http://session.gaga.ne.jp/


セッション
セッション
posted with amazlet at 15.02.26
V.A
Rambling RECORDS (2015-03-04)
売り上げランキング: 26,343

Whiplash (From
Whiplash (From "Whiplash")
posted with amazlet at 15.02.26
Chapel Music (2014-05-20)



(C) 2013 WHIPLASH, LLC All Rights Reserved
ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 パターンB カフェ・ド・フロール 光沢プリント
マシュー・マコノヒーとジャレッド・レトにオスカー像をもたらした映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』。
この作品の監督ジャン=マルク・ヴァレが2011年に監督した映画が、本作『カフェ・ド・フロール』です。

いやー、度肝を抜かれました。
思わず笑っちゃうような唐突なラストシーンに素晴らしい余韻を残す、ジャン=マルク・ヴァレ監督の才能を実感させられる一作でした。



<STORY>
ポスター A4 パターンC カフェ・ド・フロール 光沢プリント
2011年、モントリオール。人気DJのアントワーヌは、二人の娘、そして恋人のローズと幸せに暮らしていた。彼には妻がいたのだが、ローズと熱烈な恋に落ちて2年前に離婚したのだ。アントワーヌは「カフェ・ド・フロール」という曲を毎日のように聞いていた。1969年、パリ。美容師のジャクリーヌはダウン症の息子・ローランを一人で育てている。愛するローランを少しでも長生きさせようと彼女は様々な努力を重ね、普通学校に通わせていた。



<解説>
ポスター A4 パターンA カフェ・ド・フロール 光沢プリント
この映画『カフェ・ド・フロール』では、2011年のモントリオールと、1969年のパリ、ふたつの時代が交互に描かれます。

2011年のモントリオールの物語の中心となるのは、世界を股にかける人気DJのアントワーヌ。
彼は妻がありながら、「カフェ・ド・フロール」という曲の流れるクラブでローズという若い女性と出会い、一目で恋に落ちます。
そして、幼い頃からずっと一緒にいた妻・キャロルと離婚し、娘二人をひきとって、ローズと4人で暮らし始めます。

1969年のパリの物語の中心となるのは、シングルマザーのジャクリーヌ。
彼はダウン症の息子、ローランを心の底から愛し、彼を必死に育てています。
ローランのお気に入りは、レコードプレイヤーから流れる曲。
「カフェして」とジャクリーヌに頼んでは、曲を楽しんでいます。


この二つの世界、いったいどういう風にリンクするのか、途中までまったく明かされません。
しかし、物語が進むにつれて、彼らの驚くべき繋がりが明かされるのです。

彼らは、誰を愛しているのか? 彼らは何を愛しているのか?
ひとつの曲、そして複雑に絡まった愛が、彼らの人生のドラマを彩っていきます。

そして、あの最後…。
あっけにとられ、しばらくこの映画のことが頭から離れませんでした。
もちろん、この映画を彩るマシュー・ハーバートの名曲「Café de Flore」も即座にダウンロードし、ヘビーローテーションしてました。

2011年に製作されたこの作品、かなり時間はかかりましたが、日本で公開されるようになったのは素晴らしいことだと思います。



『カフェ・ド・フロール』(120分/カナダ=フランス/2011年)
原題:Café de Flore
公開:2015年3月28日
配給:ファインフィルムズ
劇場:恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて
監督・脚本:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ヴァネッサ・パラディ/ケヴィン・パラン/エレーヌ・フローラン/エヴリーヌ・ブロシュ/マラン・ゲリエ/アリス・デュボワ/エブリン・ドゥ・ラ・シェネリエール/ミシェル・デュモン/リンダ・スミス/ロザリー・フォーティエ
Official Website:http://www.finefilms.co.jp/cafe/





Cafe De Flore (Bof Le Defi)
Cafe De Flore (Bof Le Defi)
posted with amazlet at 15.02.22
Universal Music LLC (2002-05-17)
売り上げランキング: 44,063
イントゥ・ザ・ウッズ [Blu-ray]
「魔法なんて役にたちません。つかむしろ有害! あんなものに頼っちゃダメ!」
「自分でやったことには結果がついてくるんだから、ちゃんと選んでちゃんと対処しなさい。自分で行動しなきゃなんにも解決しないよ!」
「プリンス・チャーミング? ああ、アイツらいいのは顔と家柄だけだから。色恋にうつつを抜かしてるだけで、非常時にはなーんの役にもたちゃしない。あんなバカ王子、むしろジャマだわ」

なーんていう、リアリティたっぷりの現代的教訓がつまった因果応報ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』。

シンデレラは優柔不断だし、赤ずきんはクソ生意気だし、ジャックは素直過ぎてちょっとおバカだし、ラプンツェルは色ボケ。
そんなキャラクターたちが森の中で新たな教訓を得ていく、盛りだくさんの物語です。



<STORY>
Into the Woods
昔々、子どものいないパン屋夫妻の家に、魔女がやって来た。「お前に子どもができないのは、呪いのせいだよ。呪いを解くには三夜の間に“白い牝牛”、“赤いずきん”、“黄色い髪”、“金の靴”を揃えな」。子どもを望むパン屋の夫婦は、そのアイテムをを揃えるために森の中に入る。夫婦はジャック少年から牝牛を買い、赤ずきんちゃんからずきんをもらい、ラプンツェルの髪を切り、シンデレラと靴を交換し、4つのアイテムを集めた。そして呪いは解けた、はずだったのだが…。



<解説>
ポスター A4 パターンA イントゥ・ザ・ウッズ 光沢プリント
1987年にブロードウェイで初演されたミュージカル「イントゥ・ザ・ウッズ」。
作詞・作曲スティーヴン・ソンドハイム、台本ジェイムズ・ラパインの手によるこのミュージカルが、『シカゴ』のロブ・マーシャル監督の手で映画化されました。

ジェームズ・コーデンとエミリー・ブラントの演じるパン屋の夫婦とメリル・ストリープ演じる魔女を中心に、シンデレラ、赤ずきん、ジャックと豆の木、ラプンツェルなどのおとぎ話の主人公たちが登場するこの作品。

登場人物たちは皆、おとぎ話のようないい子だったりするわけではなく、現代的なキャラクターに変わっている子もいます。
そんな登場人物たちが入れ替わり登場する序盤は、どうもゴチャゴチャしている感が否めない。。。
けれど、序盤を過ぎ、彼らが物語の舞台である森の中に入っていくと、ぐんと面白くなってきます。

彼らは森の中で様々な苦難に直面しますが、登場人物たちはそれを“”魔法”ではなく、“選択”と“行動”によって乗り越えていきます。
不運にも苦難を乗り越えられないキャラクターも出てきますが、それは自らの行動の結果だったりもするわけで、まさにそれは“因果応報”。
自らの行動には結果が伴う、という真理を描いているのです。


個人的に面白かったのは、クリス・パインとビリー・マグヌッセン演じる二人の王子が、自らの恋心を競って歌い上げる「Agony」のシーン。
将来的に王国を治めることとなる二人ながら、庶民の心など知ろうともせず、色恋と自らを魅力的に見せることだけにうつつを抜かす二人のプリンス・チャーミング。
彼らには他に苦労がなんにもなく、唯一の苦悩は好きな女性に会えないというだけのことなんですね。
そんな2バカ王子の様子を、あくまでもカッコ良く演じ、それゆえにアホっぽく感じさせる二人のイケメン俳優、最高でした。

それにしても、これまで「魔法で変身し、王子様と結婚していつまでも幸せに暮らす」ようなプリンセスの物語を作って来たディズニーが、こんな物語を作るだなんて、時代は変わったものです。
でも、生き馬の目を抜くような現代をサバイバルするには、変わり身の早さも必要で、時代の流れを読んでの朝令暮改も正しいことなのかもしれません。

まあね、この現代に、あんなアホ王子をボーッと待ってたって、幸せなんてやって来るわけないですもんね。
ちゃーんと策略を立てて、狩りに出ないと!



『イントゥ・ザ・ウッズ』(125分/アメリカ/2014年)
原題:Into the Woods
公開:2015年3月14日
配給:ディズニー
劇場:全国にて
原作ミュージカル:スティーヴン・ソンドハイム
原作ミュージカル・脚本:ジェームズ・ラパイン
監督:ロブ・マーシャル
出演:メリル・ストリープ/エミリー・ブラント/ジェームズ・コーデン/アナ・ケンドリック/クリス・パイン/トレイシー・ウルマン/クリスティーン・バランスキー/ジョニー・デップ/ダニエル・ハットルストーン/リラ・クロフォード/マッケンジー・マウジー/ビリー・マグヌッセン
Official Website:http://www.disney.co.jp/movie/woods.html



Into the Woods
Into the Woods
posted with amazlet at 15.02.21
Various Artists
Walt Disney Records (2014-12-19)
売り上げランキング: 7,044


シカゴ [Blu-ray]
シカゴ [Blu-ray]
posted with amazlet at 15.02.21
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2015-03-04)
売り上げランキング: 9,315

NINE [Blu-ray]
NINE [Blu-ray]
posted with amazlet at 15.02.21
角川書店 (2011-06-24)
売り上げランキング: 50,318