cheeseです💕

 

 

 

今回ご紹介するのは

こちらの一冊📘

 

(山根道公『遠藤周作と井上洋治』日本キリスト教団出版局、2019年)

 

1950年6月4日。

横浜港から客船マルセイエーズ号が

フランスに向けて出航した。

 

四等船室には、ふたりの青年が乗っている。

遠藤周作と井上洋治である。

遠藤はカトリック文学を

井上は神学を学ぶための留学だ。

 

一ヶ月あまりをともにすごした二人は

紆余曲折を経て真の友情を育むにいたる。

 

ふたりには

「西洋キリスト教というダブダブの洋服を

日本人である自分の身体に合わせる」

という共通の問題意識があり

それぞれの立場で

「日本人にとってのキリスト教」を模索していく。

 

本書は、著作や仕事、交流関係などをもとに

遠藤と井上が互いに学び合い、助け合った軌跡をおったもの。

 

井上の存在が

遠藤作品にも

大きな影響をもたらしたことが伝わり

読みがいのある一冊だった。

 

興味深かったのは

『白い人』『黄色い人』という遠藤作品が

1955年の発表当時、

日本のカトリック界で非難されたという記述(p.100)。

 

『白い人』『黄色い人』は

キリスト教の教えと日本的汎神論的感覚をみつめた内容であり

いまでは普通にうけいれられる感覚であるが

当時はまだうけいれられる素地がなかったのであろう。

 

1966年に発表された『沈黙』は

一般読者にうけいれられベストセラーとなったものの

「棄教」を取り扱ったことから

教会内では大きな反発がおこり

一部の教会では「禁書」扱いされた(pp.132-133)。

 

内容は違えど

井上も遠藤と同じような立場におかれた時期があり

ふたりの苦悩がうかびあがる。

それでも自らの信ずる道にむかっていく彼ら。

 

教会内のことはわからないが

すくなくとも一般読者にとっては

遠藤や井上の説くキリスト教のほうがうけいれやすかったように思う。

遠藤作品、あるいは井上神父の祈りの言葉によって

すくわれた日本人は多いのではないか。

 

ふと手にした本であったが

読み応えのある内容だった。

 

勉強になりました。

ありがとうございました🌹

(『沈黙』執筆の際、島原半島におとずれた遠藤(左)と同行した井上(右)。

私のルーツである南島原にも足を運んでくださったことが記されており

ちょっぴりうれしくなったのでした☺️)

 

お読みくださってありがとう。

九州からたくさんの愛と感謝をおくります💕

 

                 cheese