私は舞台の上にいる。照明が眩しい。大好きなクラシックバレエを踊っている。このままいつまでも踊っていられたらいいのに…。
私は今40歳。16歳の息子がいるシングルマザーだ。
クラシックバレエは4歳から始めた。30数年前はバレエ教室が少なく、電車とバスを乗り継いで毎週土日に通っていた。ただただ踊りたかった。先生は厳しかったけどレッスンが楽しくて仕方なかった。
私の家は父母弟と私の4人家族で、両親は共働きだった。両親の勤めていた会社は、どちらの会社も知らない人がいないくらいの大企業だった。普段は父の給料で生活をして、母の給料はほぼ全額貯金をしていたと大人になって知った。そのお金でバレエを習っていた。父は1〜2年毎に車を変え、弟はスイミングと絵画教室、母は友達と海外旅行に行ったりと、なかなか裕福な暮らしだった。でも父はDVだった。母と喧嘩をすると給料を入れない、鍵を閉めて家に入れない、殴る蹴る、暴言を吐く…。日常茶飯事だった。母を玄関でボコボコにしたときもあった。助けに入ろうとすると、母が「あんた達は来ちゃだめ!」と叫び、私と弟は怖くて2人で震えているしかなかった。昔はDVなんて言葉が無く(知らなかっただけかもしれないが)、どの家もこんな感じなんだろうと思っていた。しかし、そんな父から逃げたいという思いからか、私は週末のバレエのレッスンにどんどんのめり込んでいった。