つぶれゆくレコ屋たち
サーストンムーアとかダン・リルカとか、海外でも有名なコレクター達からはしょっちゅう日本の 中古盤屋事情についての賞賛の声が出るが、これはもう、どのジャンルのミュージシャンが来日する 時においても共通の声に違いない。ジャザノヴァのアレックスとかライナートゥルビーが和物のジャズ を来日するたびに全国で漁ってるって話は有名すぎるし、例えばギャングスターのプレミアとかスピナ が渋谷界隈で海外じゃ入手困難なプロモ盤を束で買っていくこともかなり知られた話だ。
確かに日本のレコ馬鹿が買い出し旅行にロスやニューヨークに行ってあまりのレコ屋の少なさとモノの 少なさ、プライシーな価格に愕然とするのも、都内のレコ屋を見てきた感覚で行くからなんだろう。今となっちゃ向こうに行って買うより、向こうからこっちに買いにくる人の方が絶対楽しいと思う。あ、これもあんの?えー、この値段でこれがー??とか。
みんな知ってる事ですが、どのジャンルのレア盤もほぼ日本国内に集中しているという。で、果たしてそんなにみんな買うのか? 例えばニューヨークとかのアメリカの大都市のレコ屋と日本国内のそれと比較するときに決定的に違うのは、向こうでは値段が高騰しはじめると殆どのケースでそのまま値段が落ちる事がないんだけど、日本、特に都内だとモノが豊富な分、価格の乱高価がかなり激しい最近のライブドア株みたいな感じですよね。5年くらい前のレアパンクの7インチとか、2、3年前のブラジル音楽のアナログとか、はたまた8年くらい前のフリーソウルものの価格とかね。バブルがはじけてみんな適正価格に落ち着いたってことだろうけど、店にとっちゃ死活問題だろう。高いままじゃもう前程動かないし、かといってユニオンみたいな中古チェーンの投げ売りにもかなわないし。あきらかに供給過多。前にも書いたが需要はそこまで多くないだろう。 そういう事情もあってかここんとこ淘汰されるレコ屋が目立ってきた気がする。
ちょうど僕なんかがリアルタイムで新譜のパンクものを買い漁っていた時にうろうろしてたのは西新宿界隈だったんだけど、だいたいのルートが「ラフトレードで新譜チェック→ビニール1号、2号店ハシゴで新譜チェックと中古の高さにおもらし→バーンホームズでロッキンもの掘り→ナット→余裕あればエジソン→ラフトレード戻って友達いれば談笑→反対口出てユニオン」てな流れだった。残念ながらラフトレはその後しばらくして閉店、同じ頃プライベートの事情もあって西新宿に行かなくなってかれこれ数年。この前所用の帰りに高田馬場から小滝橋通りを辿って新宿まで歩いてみた。
変わってないようで変わってたやっぱり。上に挙げたレコ屋はだいたい残ってたけど、何だか寂しい。道でレコ袋持ってる人間と殆どすれ違わなかったもんなあ。店はあっても売り上げはどうなんだろう。LOFTももう同じ場所にはないし。その周りにやたらあったあんまし縁のないレコ屋もかなり無くなっていた。
今でも西新宿はレコ屋の聖地と呼ばれているんだろうか。