実はみーちゃんは年末に、スイミングスクールの前で40センチ位の生垣の段差から落ちて剥離骨折をして、3週間程ギブスをしていた。
今日はギブスが外れてから初めてのスイミングに、張り切って着替えてから出かけた。
外はみぞれ混じりの雨中、自転車を漕ぐママの顔に痛い雨が当たる。後ろに付けた雨よけのカバーの中で歌うみーちゃん。徐々に歌声がしなくなり、スタートに30%あった電動自転車の電池は、なぜかぐんぐん減って15%…この時点で嫌な予感がしていた。
「着いたよ、降りよう」と声をかけると、みーちゃんはメソメソ泣いて「おネムなのに、なんで起こすのぉ」と涙をこぼした。
ひとまず見学席で水着になり、ダウンコートを敷布団に横になるみーちゃん。「今日は見学する、ここで」と言っていたけど、だんだん子ども達がプールサイドに集まると、焦る気持ちがあるのか「どうしよう」「やっぱり行こうかな…」「ここまで来たのに帰るのはだめかな…」と言い始める。
どちらでもいいよ、行くなら下まで送ってあげるよと言うと、ぎりぎりになってメソメソ顔で「いく」と言った。
だけどいざ向かうとなると、3週間ぶりのスイミングに、プールサイドへ降りる足が止まってしまう。「もし下手になっていたら…どうしよう」「足が痛かったらどうしよう…」そう言って泣いていたら、コーチが顔を出し、みーちゃんを誘ってくれた。
みーちゃん「今日は見学がしたい、座ってるだけがいい」
コーチ「わかったよ。じゃぁ座って見てよう。やりたくなったらやればいいよ」
そう言って、泣きながらプールサイドへ。
上から見ていると、みんながどんどん泳ぐ中みーちゃんは本当にプールサイドにひとり座っている。みんなは、みーちゃんを怪訝な顔で追い越して飛び込む。
コーチが来て何か言って、みーちゃんは1回だけバタ足で泳いだ。
その後だった。
みーちゃんが何か大きな声で叫んで泣いている。
皆がびっくりして、動きが止まった。お母さん達も乗り出して覗いている。コーチが来て話して、みーちゃんは怒った顔でまた叫んでいる。叫んで叫んで泣いている。
あー、しまった間違えた!と思った。
みーちゃんがこうなってしまった時は、基本的に止められないのだ。眠気と空腹と、怒りと悲しみでパニックになってる。赤ちゃんの頃から年に数回あるやつだ。見抜けなかった、おとなしく見学席にいさせてあげたらよかった…。
慌ててプールサイドに迎えに行き、みーちゃんは肩を震わせながら戻ってきた。
「コーチが…ぅう…くぅ…コーチが、嘘ついた。みーちゃん、みーちゃんは座っていていいって、言ったのに!泳がないって言ったら、コーチが、約束したのにダメって。怒った!ママと約束したのに泳がないのはダメって!ママは、そんな事言ってない!!うわぁーーーん!コーチが、座ってていいって、言ったのに!泳がない、みーちゃんはコーチと約束してない、う、ぅう裏切り者ーーーー!!!!!足が痛いから、バタ足は痛いからって、言ったら!気のせいって!!うわーーーーん、みーちゃん嘘つきじゃない、嘘つきはコーチだ!!!あーんあーん。みーちゃんが泣いてたから、皆が冷たい目で見てたよー皆に迷惑かけちゃったのかもしれない、くぅーうわぁーん。ママごめんねーみーちゃん泳ぎたかったのに、泳げなかったよぉごめんねー。あんな段差に登らなきゃ良かった!みーちゃん泳ぎたいのにぃなんで怪我したんだーーーうわぁーん」
みーちゃんは色んな事に後悔してわんわん泣いた。
コーチはみーちゃんに意地悪しようとしたわけじゃないし、みーちゃんを嫌いになってもいない。皆もどんどん泳がなきゃいけないからみーちゃんに声かけられなかっただけだよ、大丈夫、今日の事は忘れちゃうよ。
ママはみーちゃんが楽しく泳ぐところが見たいだけだから、また楽しい気持ちの時に頑張ろう。と抱っこして励まして、帰宅する事にした。
みーちゃんは自転車に乗ってからもずっとメソメソしていて「皆がみーちゃんを見てるなって思ったけど、涙が止まらなかったの。なんで、どうして!て思ってたらボロボロ出ちゃったの」と言う。「それは、悔しかったんだよ。怪我してしまった事、初めてこんなにプールをお休みしたこと、みーちゃんが見学したいって気持ちを受け入れてもらえなかったことが、悔しかったんだと思うよ。ママも無理させて悪かったなと思ってる、ごめんね。」
「あとはまぁ…お腹がペコペコだったのかもね。」と慰めると、自転車の電池が切れた。みーちゃんが「うん…ペコペコだよ…」と眺める目の前には蕎麦屋が。
二人でうどん屋に入ってお腹いっぱいにして、手を繋いで歩いて帰った。
