初診から4日後、細胞診検査。

私は痛みにとても弱く、生理痛で倒れて救急車に乗り、親知らずを抜く時も彼氏(今の旦那)についてきてもらい、出産も迷わず無痛分娩を選んできた。

検査の痛みは怖かったけど、それより私の首の中にある何かにもっと怯えていた。

私の前に2人患者がいたようで、検査を終えて順番に検査室から出てくる。
2人とも看護師から検査後の注意事項を落ち着いて聞いていたように見えた。

私の名前が呼ばれる。
看護師に仰向けに寝るように促され、目力先生が準備をする。
「痛いですか?」痛いとは言わないだろうなと思いながら聞くと、
「悶絶する程は痛くないです。」
それってかなり痛いレベルでしょと心の中でつっこむ。

「しゃべったり唾飲み込まないでね。」と言われ、感情を無にしようと目をつぶる。

ぶすーーーーーーっ!
無!無!無!無!無!と心の中で唱えたけど、必殺仕事人に串刺しにされている光景が頭に浮かぶ。
「はい、終わりました。」

あれ?思ったより痛くなかった。
私の無の呪文が効いたのか、目力先生の腕が良いのか、インフルエンザ予防接種と同じくらいの痛みだった。

検査結果は12/24。クリスマスイブなんて皮肉だな。

診察室を出てベンチで看護師に「痛くないですか?」と優しく声をかけられ、張り詰めていた糸がぷつんと切れて号泣してしまう。
「大丈夫ですよ、まだ悪いものと決まったわけじゃないですよ。」
優しくなぐさめてくれたけど。

初診から今日までの間、取り憑かれたようにスマホで甲状腺癌について検索していた。
乳頭がん、画像、で出てきたものの中に私の梅干しみたいな腫瘍とそっくりな画像があった。
石灰化してたら80%悪性だって。
専門医なら超音波や触診でだいたい悪性か分かるって。
それに人間ドックの先生、目力先生は残念そうな顔してた。

「子供がいて、、、まだ下の子は幼稚園で、、、心配で、、、」
泣き止まなきゃと思えば思うほど、嗚咽が止まらなくなってしまった。
大丈夫、大丈夫って何度も慰めてくれたけど、もう望みはわずかだと分かってた。
でも看護師さんの優しさがありがたかった。

会計から何度も名前を呼ばれたけどすぐには行けず、そのうち呼ばれなくなった。
気持ちを落ち着かせてからマスクをして会計し、逃げるように病院から出た。

地下鉄に乗る気になれずにチラホラと雪が降る中、子供が待つ幼稚園に歩いて向かう。

Amazonミュージックで途中まで聞いていたブルーノマーズを消して、普段は聞かないスピッツを選ぶ。
歌詞が全然頭に入らなかったけど、柔らかい歌声が寒い体によくしみた。
「神様は乗り越えられる試練しか与えない。」
あなた神様なの?
私は乗り越えられないよ。乗り越えられないから早く試練をなくしてよ。自分の大切な家族が寂しがって泣くことになったらどんだけ辛いか想像もしたくない。
例えば、全く同じ立場で苦しんでる人同士が励まし合うなら分かる。奮い立たせるために家族間や自分自身に言うなら分かる。

でも、そうじゃなかったら
「今私、良い事言った。」っ自己満でしかないよ。


「子供は親を選んで生まれてくる。」
そんなわけないじゃん!
毎日親に殴られて泣いても許してくれなくて、ボロボロになって絶望の中で亡くなった子も自分で選んだって言えるの?
空の上で、誰もそこに行かないから、その子が僕が行くよってそうゆう人生を選んだんだって。

そんな事本気で話す人怖い。