大学病院からの依頼

 

69歳の男性の方

抗がん剤の副作用になんとか耐え

最終クールまでやり遂げた

 

しかし、腫瘍は、

抗がん剤を受ける前より

大きくなっていた

 

連携ナースより

「かなり落ち込まれています

まだ、他の抗がん剤治療も

お勧めしたのですが

 

受診予定日に、

いらっしゃいませんでした

 

心配していたところ

奥様だけが、来院されて

 

『抗がん剤の副作用で

食欲が戻らず、

体調が気になる』と

 

それで訪問診療と訪問看護を

紹介したところ

ぜひお願いしたいとのことでした」

 

との依頼内容

 

そして、初回訪問の日

 

ドキドキしながら

お家を訪ねる

初回訪問は、緊張する

 

奥様が、30分も前から玄関前で

待っていてくれた

 

靴を脱ごうとして、見えたのは

たくさんの水槽を優雅に泳ぐ魚たち

 

熱帯魚が趣味なのかな?

 

「主人が、今まで世話していたんだけれど

今は、私がやっているんです」(妻)

 

廊下を進んで行く

模型飛行機が、あっち、こっちと

ぶら下がっていた

 

この飛行機は、飛ぶのかな?

 

いよいよ、ご本人と対面

「初めまして、担当の看護師の畦元です」

 

「こちらこそ」

と笑顔で迎えてくれた

 

あ〜よかった、笑っている

 

「もう治療は、やめます

良くなるかわからないものへの挑戦は、ここまで」

 

迷いは、なさそう

すっきりした顔をされていた

 

「もう少し食べられるようになったら、

やりたいことをやりたい」

 

もう、目標も決めているようだ

 

「あの飛行機は、飛ぶんですか?」

 

「飛びますよ〜滞空時間1時間以上のもあるんですよ」

 

模型飛行機の話を始めたら、目がキラキラし始めた

 

「模型飛行機も滑走して飛びたつんですか?」

 

「そうですよ、本当の飛行機と同じです

滑走しながら、ゆっくり飛び立つんですよ」

 

飛行機の話が止まらない

 

目標は、

『体力をつけ、飛行機を飛ばしに行く』で決まり

 

「食事が入らないのがね〜」

 

大学病院の先生が、

ポートを作って、

中心静脈栄養法もできます

と言っていた情報も伝える

 

「いや〜そこまでは、したくないです」

と即答

 

水分は、

1,000cc以上は、飲めている

 

ジンジャエールがお気に入り

炭酸が入った飲み物は、

げっぷが気持ちがいいらしい

 

炭酸水が好きという患者さんは、

結構多い

 

息子さんが、父の日に

お酒が好きだったお父さんにと

ジンジャエールみたいな、

スパークリングワインを

プレゼントしてくれたそうだ

 

食事は、かなり好みが変わり、

奥さんを悩ませている

 

抗がん剤の副作用で食の好みが

変わってしまう方が多い

 

「今まで食べたこともない

ハンバーガーが食べられたんだよ」

と言う患者さんもいた

 

意外にも、

あっさりした味より

照り焼きみたいな味の濃いものが

食べられたり、

 

自分の味覚を信じないで

家族が食べているものを

ちょこっと、つまみ食いしてみると

意外な発見があるかもしれない

 

なんて話もしてみました

 

しばらくは、

医療的な処置は、なさそうです

 

ただただ、趣味のお話を聞きに

1週間に1度伺うことにしました

 

来週は、熱帯魚のこと聞いてみようかな?

 

今日のお弁当