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ミュージックレビューサイト (日本) の
「Mikiki」 が
Jun. K のインタビューをあげてくれています!!
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= INTERVIEW =
僕が生きていく道は音楽しかない~2PMのJun. K、作り手として理想の姿を映したメロウな新ミニ作『NO SHADOW』を語る
インタヴュー・文/猪又 孝 , コラム/出嶌孝次
bounce 2017 January-February 2017.01.17
自分に正直に、もっと自由な表現を――シンガー・ソングライターとしての姿を露に、メロウな世界へ踏み出した新たな一歩。その過程で発見した、己の進むべき道とは?
新しいフォームにしたかった
今年1月、6人揃っての日本における活動を年内いっぱいで休止すると発表した2PM。そのリード・ヴォーカルを務めるJun. Kの3枚目となるミニ・アルバム『NO SHADOW』は、過去最高にコクと深みのあるR&B作品に仕上がった。冒頭の活動休止に関して彼は、「今回のアルバム作りにまったく影響ない」と断言。むしろ今後を見据えて、自身の音楽性を深く追求することに主眼を置いていたという。
「今回のアルバムは、自分に正直に、自由に表現していきたいと思ったんです。例えば〈ここは歌? ラップ?〉と思わせるようなパートもありますし、ジャンル的にも自分のやりたい音楽を思った通りに作っていきたかった。そうすることで進みたい道をはっきりさせていきたかったんです」。
グループの華やかなイメージとは対照的に、大多数を占めるのは落ち着いたミッド~スロウの楽曲。トラックは最近のオルタナティヴR&Bのようなダークで神秘的なムードを漂わせ、歌唱面では最近のラップのトレンドである三連符の符割も導入。さらにクラシカルなソウルの風合いも織り交ぜるなど、新旧R&Bのエッセンスを絶妙に配合したナンバーが並ぶ。近頃、好んで聴いていたアーティストを訊いたところ「アンダーソン・パークとチャイルディッシュ・ガンビーノとガラント。あと、昔のアーティストだとジル・スコットの1~2作目をよく聴いていました」との返答が。直接彼らのサウンドから影響されたわけではないと語るが、匂いは共通するものがある。
「最近は、かつて自分がよく聴いていたひと昔前のR&Bを聴き直してるんですが、最近流行ってる音楽と比べると、そういうR&Bのほうがシンプルなのにいろんな要素がぎっしり詰まってる。それもあって今回は、楽器などはできるだけ最小限にして作ってみようと思ったんです」。
そんな音作りのスタンスがもっとも反映されているのがタイトル曲の“NO SHADOW”。この曲では、「自身のサウンドを新しいフォームにしたかった」と語る。
「この曲ではなるべく楽器を少なくして、その合間に生まれるグルーヴを大事にしました。それは後々バンド・アレンジで演奏するときのことを考えたんです。あと歌唱面では、最近のドレイクとかもそうですけど、ラップなんだけど歌のように表現する歌い方を採り入れてみました。今はラップと歌にキッチリした境界線はないと思うし、僕も自由にやってみたくて挑戦したんです」。
そうした唱法により感情の起伏がよりダイナミックになり、切なさと激しさが増長。そんな声で恋人に対する断ちきれない思いが表現されている。
「影は光があれば自分の側に必ず存在するものなのに、突然なくなってしまった。その〈なくなってしまった影〉を愛する女性に例えたんです。当然そこにあるはずだと思っていたものが突然なくなることで、いかにそれが自分にとって大切なものだったか初めて気付かされるし、影がないということは光もなくなったということなので、それは〈光のように大切なもの〉を失ったということにも掛けているんです」。
自分が進むべき道
4種の形態で登場した今作だが、どの形態にも共通する5曲はすべてラヴソング。どの曲にも「実際に僕が感じたことが描かれてる」と語る。とろけるように甘やかなネオ・ソウル調の“MARY POPPINS”は、「子供の頃に読んだ話をもとにして、童心に返って当時の気持ちを表現した」というもの。「まだまだ自分が大人になりきれてない話(笑)」と照れ笑いする“PHONE CALL”は、自分でコントロールができないほど相手を求める気持ちと、それで相手を傷つけてしまう自責の念に駆られる男を描いた曲だ。
「“PHONE CALL”は自己中心的な悪い男をイメージして作ったんです。別れた女性を忘れられなくて、会いたいとからと電話をかけてしまう。それで会ったとしても結局はまた別れることになってしまう。でも、ブリッジでは〈自分の電話をもう取らなくていいよ〉と歌ってるんです。また悪いことをしちゃうかもしれないし、それによって君を傷つけてしまうからって。でも、それはとても身勝手な男ですよね」。
一方、“Mr. NO♡ -Japanese ver.-”は自己紹介ソング。〈NO♡〉は〈NO LOVE〉と読むが、これは2PMの2014年作『GENESIS OF 2PM』に収められたソロ曲の題名で、のちに自身の代名詞となった言葉だ。“Mr. NO♡”は甘美な声で囁く誘惑ソングのようにも聴こえるため、〈NO LOVE=愛がない〉ということで軽薄な男を意味しているのかと思いきや、そうではないらしい。
「〈NO LOVE〉は、もともと愛されなくて傷ついたっていう意味で思いついた言葉なんです。〈愛がなくても生きていけるさ〉って思った時期があって、それを表現しようと思って考えたんです」。
さまざまな声色や唱法が味わえる本作だが、もっともソウルフルなヴォーカルを聴かせるのが“THINK ABOUT YOU -Japanese ver.-”。特にブリッジ部分のパワフルな歌声は彼の真骨頂でもある。
「僕の好きなアーティストにR・ケリーがいるんですけど、この曲は作っているときからR・ケリー的な感性が自分のなかにあったらしく……ブリッジにいくにつれて表現がそっち寄りになっていきました」。
とにかくどの曲もクォリティーが高く、まだ20代ながら円熟味すら感じさせるメロウなR&B楽曲が並んだ『NO SHADOW』。今回はパフォーマー・Jun. Kというより、シンガー・ソングライター・Jun. Kとしての要素がこれまででもっとも濃厚に反映されたアルバムなのではないか。
「自分でもそう思います。今まではステージでパフォーマンスすることを考えながら作っていた部分もあったと思うんです。そのために曲に何かを加えたりすると本来自分が作ろうと思っていたグルーヴが損なわれることもあって、前作以降〈これは自分が求めてたものだったかな?〉と考えるようになったんです」。
そんな経験を経て本作を作ったことで、今後の音楽性が見えてきたとも言う。
「今後はネオ・ソウル的なサウンドに進むんじゃないかと思ってます。それが僕の理想とする姿に近いんじゃないかなって。今までは〈曲を聴いてくれる人がどう受け取るだろう?〉って、大衆性もずっと気にしていたと思うんです。だけど、僕が生きていく道は音楽しかないし、だからこそ自分の本当にやりたいものをやっていきたい。それでこそ後悔なく音楽をやっていけると思うんです。自分らしい音楽を生み出すのは毎回大変なことだけど、まだまだやりたいことはあるし、自分が進むべき道をちゃんと自分で見い出して、それを磨き続け、最後までやり遂げたいなと思っています」。
『NO SHADOW』の影から見え隠れする、Jun. Kの創造性を育んだ豊潤なバックグラウンド
88年生まれで、20歳の時に2PMでデビューしたJun. K。韓国におけるUSアーバン音楽との距離の近さを前提として、彼の世代的なところも踏まえて安直にイメージするならば、少年時代からの彼がコマーシャルな黄金期を迎えていた90年代~2000年代初頭のR&B/ヒップホップの滋養を自然に吸収して育ってきたことは想像に難くない。そのうえでリアルタイムのシーンを睨みながら自身の音楽性を磨き続けているわけだから、本文で当人が挙げてきた名前も頷けるものだ。
彼のヴォーカル表現の軸となるのは、新作中だと“NO SHADOW”や“PHONE CALL”に顕著な、もう歌とラップの区分も野暮なクリス・ブラウンやオーガスト・アルシナ以降のスタンダードな唱法。裏返せばドレイクやタイ・ダラー・サインとの同時代性を帯びたもので、アンダーソン・パーク、チャイルディッシュ・ガンビーノのアプローチとも自然に重なってくる。そんなシンギン・ラップの(R&B方面の)元祖といえばR・ケリーだが、“THINK ABOUT YOU -Japanese ver.-”に表れたその影響はストロングでオーセンティックなR&B歌唱の部分。当然ガイなどの流れも連想できるわけで、そこにもJun. Kの時代を跨いだバランス感覚を窺い知ることができるだろう。ネオ・ソウル作法の“MARY POPPINS”でも、根幹にあるのはジル・スコットやミュージック系統の親しみやすい歌心だ。ゆえに、そうした伝統性とモダンな機能美を兼ね備えたガラントの名が挙がってくるのも納得がいくのではないだろうか。
チャイルディッシュ・ガンビーノの2016年作『Awaken, My Love!』収録曲“ Stand Tall”
ガラントの2016年作『Ology』収録曲“Weight In Gold”
最近はSIMONに客演するなど意欲的な動きを見せていた彼。インタヴューでも宣言されている本人の明確なヴィジョンが今後も具現化されていくことを楽しみに待ちたい。
http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/13063