I’m ready to go anywhere, I’m ready for to fade.
Into my own parade, cast your dancin’ spell my way.
I promise to go under it.

 ボブ・ディラン 
 「ミスタータンブリンマン」より


 「それで、受験結果はどうだったんですか?」

 その話をする前に、受験直前期にわしを襲った謎の鬱状態の話をせんといかんわな。

 「鬱状態?一体どうしたんですか?」

 それがな、謎としか言いようが無いんやが、受験直前の年明けから急に勉強が出来なくなったんや。なぜかはわからんのやけど、長い時間机に向かえなくなっての。集中力っちゅうか根気っちゅうか、そういうんがすっかり無くなってしまったような状態になってしまったんや。

 その頃、勉強した内容をノートを付けておっての。

 例えば

 英文法  2.0
 日本史  1.5
 英語長文 1.5
 現代文  0.5

 合計   5.5

 みたいな感じに、日々、勉強の記録を付けていたんやな。それで毎月の勉強時間を記録しとったんやが、通常は1ヶ月間でならすと150時間位はやっとったと思うんやけど、年明けの1月が90時間位、2月は受験の始まる半ばまでで30時間位しか出来てなかったように記憶しとるわ。直前期なんで、やらねばやらねばと気持ちは焦るんやが、身体が言う事聞かんかったんや。

 その謎の鬱状態の原因は、今思うとガス欠やったのかもしれんのう。なにしろ、高校入学直後から無茶な勉強しとったからなあ。ペース配分間違えて一番大切な直前期に潰れてしまったん違うかな。マラソンでバテバテになった時に、後ろから来た奴らにどんどん抜かされよっても抵抗できへんやろ?まさにそんな感じやったのかもなあ。

 なので直前期は集中力が続かなかったもんで、今までに何度もやった問題集や参考書をパラパラっと眺める程度の勉強しか出来へんかったわ。新しい過去問とかはとてもじゃないけど無理やったな。
 
 それと、ガス欠プラス、自分の生き方に疑問も感じておったのかもしれん。この受験勉強に意味あるんか?わしは大きな間違いをしてるんじゃないか?みたいな。

 その頃、姉の煙草を隠れて吸ったり、ゲーセンで時間潰したり、父親の焼酎を盗み飲みしたりもしてたな。それであるエピソードを思い出したわ。

 ある時、父親の一升瓶の焼酎、中途半端に残っとったの全部飲んで酔っ払って寝てた事があったんや。そいで、しばらくして父親が仕事から帰宅しての、わしは怒鳴り声で目が覚めたんや。何やら父親がキレとるのはすぐに分かっての。てっきり、わしが受験生で未成年なのに酒を飲んだ事を怒られとる、心配されとる思ったんやが、単に自分の晩酌分が無くなった事に対してキレとるんやな。
 「今日の分はあると思ったのに全部飲みやがって!金やるからすぐに買って来いよ!」とな。
 わしは酔っ払って気が大きくなってるもんやから「行くわけねーだろ、ばーか!」とか言う訳やな(笑)その時はお袋がすぐ酒屋に走っとった。
 
 まぁ、今振り返ると直前期になって、精神的に不安定になってたんやろな。田舎の非進学校の生徒にとって早慶っちゅうのはとてつもなく分厚くて高い壁や。それを滑り止め無しで受ける訳やからストレスちゅうか恐怖やな、そういった気持ち半端無かった思うで。高校でも完全に浮いとったしの、みんなにはガリ勉野郎と思われてた違うか。わしも周囲を見下しとったから自業自得かもしれんが、信頼出来る仲間は1人もおらんかった。なんで、もし受験で全滅でもしようもんなら周りは笑うやろな、とか思ったりしたわ。滑り止めでMARCHでも受かればある程度カッコは付くんやろうが、そもそも受けてないから早慶落ちたら何も残らんしの。その頃の事はあんまり覚えてないんやけど、なんか、消えたい、ここから離れたいちゅう気持ちあった思うわ。

 まぁ、そんな感じで貴重な直前期を過ごし、本番に突入した訳や。

 うろ覚えなんやが、

 2月15日 慶応 文
 2月17日 慶応 商
 2月19日 早稲田 政経
 2月21日 早稲田 商
 2月25日 埼玉大学 経済

 こんな日程やったと思う。

 「それで結果はどうだったんですか?」

 結果か?結果は【この後すぐ】やな。CMの後や(笑)