翌日。予定通り待ち合わせ場所で待つ。先方の都合で予定が1時間遅くなったが、大した問題ではない。
待ちながら相手のプロフを確認する。
年齢は20代前半、身長は170近くでスラッとしており、色白で、長い黒髪。イメージ的には綺麗なお姉さんだ。女子アナとかにいそうなタイプ。
婚活でいろいろあったけど、こんなお姉さんに癒して貰えるなら、悪くないかな、なんて鼻の下を伸ばしていた。
そこに、「◯◯さんですか?」と女性から声を掛けられた。やり取りの中で、名前と当日の服装を伝えていたのだ。
声を掛けて来た女性を見て、私は呆気にとられた。プロフと似ても似つかぬ女性がそこにいたからだ。
スラッとした綺麗系のお姉さんが来るはずが、チビデブのおばさんみたいな人がそこに立っていたのだ。
私は困惑しつつも、「やり取りしてた人とちょっと違うと思うんですけど?」と彼女に伝えた。黙ってたらマズい事になりそうだと思ったのだ。
彼女「え?私ですよ」
私 「いや、でもプロフの写真とイメージが違うんですけど?」
彼女「その写真、今ありますか?」
私 「ここにあります」
私は彼女に、綺麗系お姉さんのプロフ写真をスマホで示した。彼女はその写真を見て一瞬沈黙した後、驚くべき事を語りだしたのだ。
彼女「私たちは業者なんです」
話によると、彼女たちは業者がアポを取った客に派遣されているのだという。
業者は出会い系サイトで女性の振りをして、男性に条件を提示する。条件を飲む男性が現れると、業者に所属している女性に連絡が入り、客のもとに派遣される仕組みになっているという。
業者は男性がやっているそうで、私は男とメッセージのやり取りをしていたわけだ。
そういえば今日の待ち合わせだって、美容院が混んでて1時間遅れますとか連絡が来たけど、単にシフトの関係だったのだろう。
遅れる理由が美容院とか、男が考えたのだとすればキモ過ぎる。写真が違ってたのは、男性スタッフのミスらしかった。
彼女も嘘をついている罪悪感からか、話す必要の無いことまで話してくれた。もしかしたら私が怖い顔になっていて、怒られるとでも思ったのかもしれない。
私は、彼女の手短な説明で事情を飲み込んだ。ただ、もう遊ぶのは無理なので
「そういう事なら、せっかく来てもらって申し訳ないけど、今回の話は無かったって事で良いですか?」と言ったら、彼女も分かってくれた。
そのまま別れて駅に向かって歩き出したけど、少し怖くなった。相手は裏稼業のお姉さんだ。場合によっては彼女の通報で、怖いお兄さん達が追いかけてくるかもしれないと思ったのだ。キャンセル料払え!とか言って。
幸い何事もなく駅に着いたけど、乗った電車が動き出すまではちょっと怖かったのを覚えている。
電車ではカップルが楽しそうにしていて、住む世界が違うと痛感し、苦笑いを抑えるのに苦労した。