秋の納車から、峠を走り回る日々を過ごし、秋田のバイク乗りには耐え難い冬が来た。
バイク屋に教えられた通りに、バッテリーのマイナス端子を外して、キャブからガソリンを抜き
SRXは冬眠に入った。
長い冬の間も、乗りたい気持ちがウズウズしていた。
【教訓1:春先のコーナー】
そんな長い冬も終わりを見せ始め、日中の気温も上がり始めた頃。
国道のような大きな道路は乾き、残る雪も、道脇の一部となった頃。
3月下旬のことだったと思う。
当時、よく練習に使っていた、短い峠がある。
そんなにキツいコーナーもなく、初心者の練習にはもってこいの峠だった。
その日も、お決まりのコースで、日本海の見渡せる国道側から、その峠への道に入る。
路面もほとんどが乾いていて、ところによっては、雪解けの水が流れているところもあったが
気持ち良いペースで走ることが出来た。
なんちゃってハングオフスタイルで、登りのプチワインディングを駆け上がる。
出口でスロットルを大きめに開けながら、トルクでの立ち上がり加速を堪能する。
一冬を挟んでも、身体に染み付いている癖というか、操作的な部分はすぐに出来た。
とても気持ちがいい。
少しずつ感覚を取り戻すのと同時に上がるペース。
頭は完全に春。
峠を登り切ったところに、ちょうど早い時間帯は日陰になる右コーナーが有る。
コーナーの入り口を、離れたところから観察するとウェットであることがわかった。
ここまででペースアップしてきた速度では、何となく不安だなと
ブレーキングを始めて、速度を落とす。
50km/h位だったろうか?
ついに遠目でウェットだったコーナーへ差し掛かる。
フロントがウェットな路面へ乗り上げた瞬間
今まで味わったことのない感触に襲われる。
日陰のコーナーは凍結していた。
慌てて右足が出る。
RED WINGのクレープソールが路面に触れるが、その足さえも滑ってしまう。
あとは為す術がなかった。
フロントがアウト側へ逃げ始めると、車体は一気に倒れた。
おれはいつの間にか背中で路面を滑っていた。
自分のバイクが凍った路面を滑りながら道路脇へ進んでいくのを見ながら。
ほんの2,3秒の事なのに、物凄く長い時間滑ったように
スローモーションで時間は流れる。
久々に転倒した。
ライダーに戻ってからは初めての転倒だった。
バイクを起こして、ちょっと広くなった道の脇まで移動する。
どこどこがイカれているか確認する。
ハンドルが妙な角度になり。
ステップも曲がっていて、ウィンカーは片側が点かなかった。
そんなダメージを受けたバイクを見て
突然笑い出してしまった。
凍った路面での転倒を共有した事で、なんかこう、運命を共にした仲間意識?
のようなものがおれの中に芽生えるのを感じた。
親父と小さい頃に、TYで崖を登ろうとしてまくれてしまって
二人で笑いあった、あの感覚に近いものを感じた。
そっからは、とりあえずエンジンがかかったから、右折をしないように(ウィンカー点灯しないから)
ゆっくり帰った。
教訓として、春先の日陰のコーナーは凍結している事がある!
転んで覚えてたのはそれだけ。
でも運命を共有した事で、相棒がより愛おしくなったのは、ちょっとした収穫か。